第3話【ユキと私と】
前回出したのより少し改筆しました。
もしもあの時…
あの道を選ばなかったら…
私の運命は変わっていたのかな?
陽菜はしばらく時間が過ぎた後にあの猫を追いかけたのだが、その猫はすぐに見つけることができた。
−−あ、いた。
猫はどこかの家の前で、ひなたぼっこをしていた。
目をつむって、気持ちよさそうにごろごろとしている。
−−かわいい−…!!
陽菜は懲りないようで、また猫のもとへ、ふらふらと近寄って行った。
しかし、今度は猫は逃げようとしなかった。
目は警戒しているものの、まだ地面に横たわったままで、動く気配すらなかった。
…うわ、ふさふさ…!!
陽菜は笑顔を零しながら、思う存分猫を触りまくった。猫も嫌がるそぶりを見せず、ごろごろと喉を鳴らしてみせるほどだった。
やがて猫はすくっと立ち上がった。
陽菜が行く先を見守ると、猫は、陽菜の目の前にある古い、木造建築の家へと入って行った。
−−古い家だな…。
陽菜がその家を見た、初めての感想だった。
その家は古い木造で、壁の青いペンキの部分は剥がれかけていた。屋根である部分も、雨や何かの影響でボロボロになっていた。
それでも、その家は我が物顔でがっしりと建っている(陽菜にはそう見えた)。
新しい家家が続いているなかで、唯一この家だけが、リフォームも建築も直されていなかった。
−−家主がわざとしないのか、面倒くさいからなのか…
それは陽菜にとってはわかるはずもない。
でも、陽菜がこの家に興味を持ったのは確かである。
みんなが変わっていくなかで一人だけいつまでも変化しない。悪くいえば取り残されている。よく言えば…
「……って!!」
そんなこと考えてる場合じゃなかった!!
陽菜は慌てて、今まで来た道を戻ろうと後ろを振り返った。
その時だった。
ある曲が、陽菜の耳の中に流れ込んできたのだ。
陽菜は足を止めた。
それは多分…意識的に、ではなかった。
−−あ…ユキの歌だ
ユキとは今、巷で話題となっている女性歌手である。若者以外にも支持率が高く、男性・女性共に人気がある歌手だ。しかし、ユキはどの番組にも顔を見せたことがないため、言葉で表すと、まさに声だけで勝負をしているのだった。
今流れているのは、ユキの[恋と君へ]という曲である。この曲はつい最近売り出されたばかりで、CMにも使用されている。そのこともあり、ユキが出している曲で有名な一つでもあった。
陽菜もまた、この曲が大好きで、このCDはもちろん、今まで売っているCDを全て買っているというほどだった。
−−この家の人も、ユキが好きなのかな?
陽菜はそんなことを考えながら、その曲を聴き入った。