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第12話【私と運と】

大分時間あいてしまってすみませんでした。



朝陽と広都は、それは第三者の陽菜から見てもはっきりとわかるように、…それはそれは、とても気まずそうに御対面しているのであった。




…うわあ…なんだかお見合いみたい…。っじゃなくて!朝陽ちゃん−−っ!!本当にごめんーっ!!


…もっと西野君引き止めておけばよかったぁ!!




今頃何を思っていても、後悔先に立たず。陽菜が今フォローできることは何もないのだ。今更仲立ちに入っても、『第三者』であるはずの陽菜に、一体何ができようか?例え、フォローをしたとしても、嘘のつけない陽菜は、下手をしたら先程のぞき見していたことがばれるかもしれない。


陽菜が今、フォロー以外でできることといえば、空気のように存在を消すか、もしくはこの場から去るか、ということだけだった。




−−フォローはできないし、存在なんて消せるわけもないし…。とりあえず!今は、この場からいなくなればいいかっ!




陽菜は後ろ向きになりながら、慎重に少しずつ後退していった。

広都に見つからないように−…、朝陽に見つからないように−…。

陽菜は恐る恐る二人から少しずつ遠ざかっていく。幸い二人ともこちらを見ていなかったら、陽菜はそのまま二人に気付かれることなく、足を進めることができた。廊下の最果てまで足を進めることができ、そして陽菜は突然、あることをひらめいた。



―――っ!そうだ!このまま職員室に行っちゃおう!



陽菜はすぐ近くにある階段を見つけると、文字通り、階段を二段飛ばしで駆け上がっていく。誰にも会うことなく、ぶつかることなく、陽菜は脱兎のごとく駆け上がっていく。



−−急げっ!!急げっ!!…、この場からいなくなるんだ、私!!



階段を全速力で駆け上がり、ようやくたどり着いた先は、先程まであんなに行くことをためらっていた職員室。人間、やればできるんだ、と陽菜は不思議なことに、感動したのであった。胸に熱いものがこみあがってくるのを押さえつつ、職員室のドアを軽くノックする。すぐに

「はい」と返事がしたため、ガラガラとドアと開けた。職員室の中にいるうちの一人の、ドアの手前の方に座っている先生に失礼します、と声をかけるも、テスト期間のために入室禁止になっていたことを思い出す。





−−そういえば、今日から部活休みだったな…。

忘れてた…。




記憶力がそうよくない陽菜は、テストの存在を今この瞬間に思い出していた。




あー由美が勉強のことなんか言ってた気がする…。



受験生であるはずの陽菜であるが、そういった類のことには全く無頓着であり、面談の度に叱られているのである。

進路がわからずに、幾度となく悩み、あーでもない、こーでもない、と今現在も自分自身に葛藤しているのであった。

心理学−医学−教育学−工学−文学

探せばいくらでもあるものだ。陽菜には『未来』の自分がどうしても想像できなかった。



私は未来にいるのだろうか?


生きているのだろうか?


何をしているのだろうか?


そして−−−−







隣には誰がいるのだろうか?







陽菜は座っている先生に鍵を取ってもらうと、すぐさま職員室から去って行った。













あ!



一階まで降りきった陽菜は、そこで改めて先程の出来事を思い出す。



西野君と−−朝陽ちゃん…。



ここで、もし、いわゆるヒロインの子がいたならば−−、胸がちくっとするとか、何も考えたくないわ!とか言って逃げ出したりするんだろうね。



甘いな。




私は何とも思わず、ドキドキもせず、…とりあえず早く終わってほしいとしか思わない。




つーか終わっていてくれ。




陽菜は鍵をぎゅっと握りしめると、壁に隠れて、ゆっくりとそこを覗き込んだ−−−。




誰もいなかった。




なんだぁ、と嬉しさ半面、少し期待外れのようなものも感じながら、ちゃっちゃと歩き始める。

少し足早になりつつ、今が昼休みであったことを思い出していた。



私まだご飯食べてないんですけど−−!


香織に邪魔されたせいで、一口二口しか口にしていないのだ。空腹を堪えながら、急いで教材室へと向かう。




と、そこで陽菜は思わぬ人物と出会ってしまった。

教材室の前に座り込んでいる人物−−−




西野広都であった。






陽菜はその姿を見つけた瞬間、本当に石のようにその場でぴたりと固まってしまった。



−−また会っちゃった−−!!




陽菜は自分の運命を呪った。そして更に最悪なことに、広都も陽菜の存在に気がついたのであった。

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