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第五話 決戦前日 会長の思惑

2009年4月6日 夕凪学園 生徒会室 14:00


「これより特別緊急会議をする。」


 緊迫した声が走る。会議の参加者は5名。

会長を初め、副会長や会計、書記、生徒会担当顧問の5人だ。

「会長。今回の議題を聞いていないのですが…」

緊迫したムードの中、副会長が伺う。

「…単刀直入に言おう。例の計画に支障が出る可能性が出た。」

その言葉が出た途端、全員に緊張が走った。そんな中副会長は冷静に疑問を述べる。

「会長。神凪の件ですか?確かに彼女の実力は相当のもの。しかし、会長からみれば対した障害にもならない筈ですが。」

「…その通りだ。しかし今回は彼女の時とは次元が違う。」

「…まさか会長。見つかったとでも?」

「そう。生き残りが見つかった。」

その瞬間生徒会室の空気がより一層重くなった。普段軽々しい会長も嫌な空気を発している程だ。

「で、誰なんですか?会長。」

「伊吹誠だ。今年入学してきた奴だ。」

「伊吹…何故彼だと?」

 全員が分からないと言った感じで問う。会長は少し呆れたようなしぐさをして

「何故だと?お前たちは伊吹誠の入学時のデータを見たのか?」

ぱさ…と数枚の紙が役員の手元に来る。その紙を見ても会長の思惑が分からない。

 一見するとその紙は普通の履歴書と同等程度のデータでしかない。一体コレが何だというのだろうか。

「会長、まさか…。」

突然立ち上がり、副会長はそこまで言うと、有り得ないだろうと自問自答していた。

「…いえ、なんでもないです。」

「…?」

どうも副会長は何か心当たりがあるらしいが、何か突拍子も無いことのようで、ここは黙って引き下がった。

「で、会長。どうします?」

「…ん?どうするとは?」

 顧問の発言に会長は思わず聞き返してしまった。まさかとは思うがコイツ------

「だから」


ど う や っ て 殺 す の か と 聞 い て る ん で す 。


 やはりコイツは使えない。この顧問は思考があまりにも短絡過ぎるところが駄目なのだ。ソレが出来るのなら、とっくに殺っていると言うのに。

「まだ殺せない。しばらくは様子見だ。」

「何故ですか?あの時の生き残りでしょう?今処分しなければ大変なことに---

「勘違いするな。これは命令だ。」

一瞬で凄みを効かせて顧問を黙らせた。確かに事情を話せばいいのだが、この顧問にはそこまでの信用と実績がない。逆にコイツに話せば相手側にどう影響するかもわからない。

「…もう時間が無いから話は以上だ。今日はもう解散しろ。話はまた後日連絡する。」

 相変わらずの凄みで各役員を急いで退散させる。…副会長を除いて。

「会長。まさかとは思いますが。」

全員が帰ったのを確認し、数秒時間を置いてから話し出す。

「…副会長の思っている事で正解だ。」

全て分かっている。もう話さなくてもいいと言わんばかりに、投げやりに話を切る。

つまりはイラついているのだ。先程の顧問とのやり取りに…。

「では会長。最後に一つだけ。何か障害があるのですね?」

副会長は言葉を選んで会長に話をする。当然だ。これで何故殺さないのかと聞いては顧問の二の舞…いや、虫以下だろう。

「あぁ。一つだけ厄介な存在がな。」

会長は一瞬だけ躊躇ったが、副会長との信頼は厚いのか、話し始めた。

「伊吹誠にはな…代神カミシロが憑いてるんだ。」

「なんですって!!」

冷静沈着な副会長が、声を荒げて会長に尋ねる。無理もない。


代神とは古くから神々の使いとされ、崇められ、恐れられていた存在である。

現在では世界国際機関で認定された少数の魔法使いにしか代神は居ない。

代神はそもそも魔術師との契約で結ばれた相棒パートナーであり、魔術師の能力の強化や弱点の補助、戦闘の前衛として使役される聖霊せいれいである。

会長は以前に代神と一度だけ戦ったことがあるが、結果は惨敗だった。剣術、魔力共に桁外れだった。そんな会長だからカリンを見て(実際は霊体だが、会長の魔力で見えていた)理解したのだろうか…


あの女は以前あった代神と同じ雰囲気を纏っていた。


 伊吹誠自身に対した能力スペックが無くても彼女が前衛で来れば状況はこちら側が圧倒的に不利になってしまう。というよりも。


そもそも相手にならない一方的な戦いでしかない。


会長の恐れている最悪に事態がまさしくそれだ。迂闊に手を出せない。最悪の事態だけは避けなければいけない。だが、伊吹誠を生かしていては当面の計画に支障が出る可能性があるもの確かだ。

「俺は一度戦ったことがあるのはお前も見たな。」

「…ええ。私も正直、代神がアレほどとは思いませんでした。」

副会長の辛辣な顔が、まるで先程まで代神と戦っていたかのような思わせぶりだったが、事実間違いでもない。

会長はつい1ヶ月前まで戦っていたのだ。副会長も前衛で居たが、ものの数秒で気絶という結果。事の顛末は会長から聞いた次第だ。

お互い言わなくても分かっているだろうか。数刻後、副会長は黙って部屋を出た。


会長はこの件については様子見で保留にした。しかしその結果が伊吹誠に幸運を運んだ。


実際はカリンにそこまでの能力はない。彼女の能力は<増幅>にある。

伊吹誠が闘い、カリンが誠の能力を増幅させて戦うのだが、これには大きな弱点がある。

1対1でしかこの能力は活かされない点である。


集団で来られると完全にアウトだ。カリンが狙われると負けだし、霊体化してしまえば誠に増幅が出来なくなる弱点があるが、当然会長には知らない。

会長側からしてみればこの判断は大きな間違いだった。もし、すぐ誠と対峙していたらあっさり会長が勝っていただろう。それほど戦力差があったのだ。この時、絶対的な優位を持っていた会長側は僅かにではあるが、形勢が均衡状態になるかのように少し誠側に傾きだした。


しかし、まだ会長の勝利は堅い。如何にカリンの能力が不明でも対峙してしまえばそれまで。

おそらくその瞬間会長なら見極められる。その為の明日の神凪との試合を組んだのだ。

誠からしてみればこれはまだまだ不利な状況だ。カリンの能力が完全に把握されたとき、誠が死ぬときなのだから…。


そして、運命の朝がやってきた。







最近仕事が忙しく更新出来ていない状況です(言い訳)

長い話になると思いますのでまったり見てやってくださいませ。


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