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第三話 女帝 神凪琴音

2009年4月6日 場所 夕凪学園 8:00


 グラウンドに円形の人だかりが出来ていた。

およそ200人はいるだろうか。異様なまでの殺気をだしながら円形の中心に立っている一人の美女を見つめていた。

 美女の名前は神凪かんなぎ 琴音ことね。一番の特徴は187cmという女性にしては身長が高いと言うところと身長に比例した豊満な胸(一部の人間はこれが目的であつまってたり)

と神凪家に伝わる真紅の長剣…緋歐ひおうだ。

この緋歐は琴音とほぼ同等の長さであり、学園内で現存する剣の中では最長である。


「神凪〜〜くたばれぇやぁ〜。」

緊迫した空気が張り詰める中、一人の男が動き出した。それに便乗するように200人の男が神凪に向かっている。


神凪はこの状況でも焦りの一つもない。なぜならコレは日常茶飯事に起きる出来事であり、神凪はいつも一撃でこの状況を打破している。



 そう…つまりコレはお決まりの死亡フラグなのだ。


毎日繰り返されるこの作業。もちろん琴音も好きでこんな状況を作っているわけではない。そもそもの発端の原因はこの学園の会長にある。


ある日、会長が校内放送をつかい宣言した。


「午前8時に2年の神凪を倒したものには嫁にしてヨシ。」


…などと言う意味不明な宣言をされた時、私は偶然お茶を飲んでいたのだが、そのお茶も漫画の世界みたいに盛大に吹いてしまった。

今はまだ良くなったほうだ。宣言の次の日の8時は学園の男子ほぼ全員が集まってかかって来たのだ。あれは身の毛もよだつ体験だった…なんていうことは無くその時も一瞬で勝負は着いていた。そして、今日も。


「緋歐…1のグラビテーション

神凪の詠唱と謳歌の一振りで半径数10mの地面が神凪の周りだけを除いてどす黒く変色し、その刹那、世界が反転したかのような凄まじい衝撃音が遅れて学園中に響いた。そして辺り一面に群がる死体…ではなく、加減していたので全員気絶しただけだった。


「いや〜毎度の事ながらお見事。」

「…会長ですか。」

 後ろで手を叩きながら琴音に近づいてきた。何時ものとこだからか琴音はそのやり取りにウンザリした様に話しかけた。

「そろそろこんな事止めにしませんか?無意味ですし。」

「そうかい?この光景は見てても飽きないよ。」

 琴音は後ろを見ると先程倒した男子生徒たちの屍(死んでない)がどんどん片付けられていく。学園の掃除屋とも言われている《スカイキーパー》の連中だ。

 彼等の特徴はきわめてシンプルに尽きる。


全身黒で覆われていて額にSKの文字。

これだけだった。だが逆を言えば…


そ れ だ け し か わ か ら な い 。

 

何しろ彼等の出現は最近は神凪が男子生徒達を倒す際に倒れておる学生を介抱する為毎日のように見るが、彼等の目的や人数、隠れ場所等一切が分かっていない。この学園の七不思議の一つに上がっている程だ。もっとも会長と何か繋がりがあるのは見え見えなのだが。


「これ以上は無意味でしょう?今日で終わりにさせてください。」

「そうだねぇ…今日で丁度10日だっけ。」

勿体つけるように会長は考えている。いや、これは…


考えている振りをしているだけ。それは露骨で誰にでも分かるような仕草だった。


「じゃあ、明日で最後にしよう。」

ほら来た。どうせ悪巧みを考えてるんだろう。神凪は冷静に対処する。

「明日も今日みたいな事を?結果は変わらないと思いますが?」

そう。この10日間そうだった。如何に大人数でかかって来ようとも神凪の剣技で全てねじ伏せていた。学園で彼女に敵う物は居ず、何時しか<女帝>の称号を持つまでになった。

会長もそんな事は百も承知で言っている筈。一体何をしようというのか。

「そうだねぇ。でも明日はどうかな?」

「…何が言いたいのですか?」

会長の言いたい事が全く理解できない。まさか…

「会長が相手になるとでも?」

「僕が??まさか〜。だって」

如何にも会長は心外だと言わんばかりに言い放つ。


君 と じ ゃ あ 相 手 に も な ら な い よ ?


凄まじい殺気に神凪は恐怖した。彼女が女帝なら会長は<皇帝>と言える。この学園では最も強いものが会長の座を手に入れることが出来る。

会長になると2つの特権が与えられるらしい。

一つは絶対宣言。これは校内放送で使用が出来るのだが会長自身がある宣言をし、条件が満たされれば必ず実行される絶対特権。(噂ではこれに逆らうとスカイキーパーの登場とか…)

もう一つは不明。これは会長自身にしか知らされていない特権らしい。

そんな会長だからか、殺気一つだけで相手を殺せるのではないかと神凪は思う。もっとも表面上だけは冷静さを保とうと努力していた。


「…では誰が?」

辛うじて短く言うと会長は殺気を消した。

「明日は僕が連れてくる。一人。」

「一人?誰ですか?」

神凪の言葉を聞いて会長は薄ら笑いを浮かべながら答えた。

「今年入学した1年生の伊吹って奴だよ。彼とは既に話をつけてあるから。」

そう答えると会長はじゃあまたねと去っていった。

「伊吹…?」

聞いたこともない名前だった。しかし相手が誰であれ負けるわけにはいかない。

「明日で終わる…終わらせる。」

神凪は拳を握り締め、堅く決意したかのように空を見上げた。


そう。明日の朝8時で最後の戦いになるのだから。一人でも容赦はしない。


何故ならそれは会長の使者だからだ。


時間は8時10分を指す手前だった。


















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