序章 すべてはここから始まった
序章
それは過去に起こったたった一人の少年の突然の悲劇の話。
山に車で家族旅行に出かけていたとき、ついついうたた寝をしていた時だった。
ふとした瞬間。そう、まさに刹那と呼ばれる時間といえば良いだろうか。
一瞬の閃光と急激な衝突があり、気付いたときには車は大破し、少年はアスファルトに放り出されていた。
突然のことでなにが起こったのか理解できなかった。
少年は全身を激しく強打し、呆然と車や辺りを眺めていた。
家族は車の中に残されており、その車も原型を留めていなければ、人が生存できるとは思えない。
まして、辺りは火の海に包まれている。車から出る際に衝突したのが原因で、少年の意識も怪しい状況だ。
「とうさん…かあさん…あいか…ダレか…」
少年の意識が薄れてきたのか、体が心地よく眠りにつきそうになる。
「死ぬのかな…」
少年は死を覚悟した。周囲は火の海となり、逃げ道も無くなった。
何故こんな事が起きたのか少年には理解できなかった。いや、理解したくなかったのかもしれない。
なにせ目を開けたらそこは灼熱の炎につつまれ、家族もみな息絶えていたのだから。
しかし、その時奇跡が起きた。少年の耳に微かに、だけど凛とした声だったのは覚えている。
「the atmosphere …water …calm a scorching flame」
何を喋っているのかは分からなかったが、その声が発せられてたと同時に異変が起きた。空からの突然の突発的な大雨…いや、豪雨と言った方が適切かもしれない。炎に包まれた辺り一面にだけ降っている。
少年は意識を失う寸前だったが、確かにその目で見ていた。そして、辺り一面の炎は数分のうちに消えた。
そして、最後に少年の目に映ったのは長身で細身の長い蒼髪で瞳が紅い女が居た。
少年の無事を確認するとそのままスッと居なくなった。そして少年は意識を失ったとほぼ同時に救急車のサイレンが鳴り響いた。
この事件は全国の報道や記事にもなった。また、他国でも一面に大きく掲載するほどの大事件だった。当時の事件の被害状況等は以下の通りである。
死亡者約十七万人
行方不明者 約六万四千人
生存者…十二名
この生存者の内1人があの少年である。当時の少年は9歳。名は伊吹誠
この事件がきっかけで伊吹は近隣の大手大学病院に入院、精密検査を受け、回復後、警察の事情聴取を受けることになる。
そして…伊吹の人生を決定した出来事でもあった。