第5話. プロローグのその後
わたしは1つの魂を観察していた。
それは今はまだ小さく儚いものだったけど、いずれわたしの後継となる存在だから。
その魂は地球と呼ばれる惑星の日本で生れ育ち、その時は道端で他の存在と戯れていた。
平穏無事に育っていると安堵して眺めていたその時に…
--見つけたぞ
突然、邪悪を感じ、声が聞こえた。
見るとトラックがあの子に迫り、男性が身を呈しているところだった。
まさかあいつが気付いてた…!?
あいつ--【邪神ハー=ゲーデ】はこの世界で闇に堕ちた神の一柱。
長年の平和の中で、僅かに勢力を増やそうとしていたのをわたしは知っていた。
だからわたしも勢力を増やそうと、この魂に手を掛けていたのに…
呆気なく、その魂をもつあの子と身を呈してくれた彼は地球での生を終えてしまった。
きっと彼は巻き添えになってしまったのだろう。
彷徨いはじめる2つの魂をこちらの世界で転生させるために引き寄せる……
--ふはは!面白い、面白いぞ!!
あいつの声がまた聞こえだと思った時、彼の魂が徐々に黒く覆われていく。
「え、何で!?待って……」
邪悪な黒の力は、待たずに彼の魂を包み込んでいく。
咄嗟に手を伸ばし、わたしはわたし自身の力を、魂のカケラを彼へと投げ込み、同化させる。
「染まらせはしない…」
彼の魂は白く輝き、黒く覆われて、この場からいなくなる。
行き先は……この世界【イデアル】へと転生したようだ。
邪神ゲーデ……どこまで干渉してくるつもりなのよ。
でもあの子が染まらなくてよかった。
そして目の前浮かぶあの子、残った1つの魂にもわたしの力--聖なる白を注ぎ込んで、そして光の中へ解き放つ。
邪神ゲーデの思惑はわからないが、彼を助けなきゃいけないよね。
わたしのカケラを入れたから、それを探し出せればいいんだけど…どこだろう。
さっきまで観察に使っていた水晶を覗き込む。
これはわたしの干渉しているものを観察するための装置のひとつだ。
彼の中にあるカケラが見えればいいんだけど……黒に覆われてるから大変そうだな。
世界中に散らばる端末--聖なる力を持つ女神像や、わたしの加護を授けた聖者の様子を探る。
いない……どこだろう。
しばらく時間かけても中々見つからない。
後に送り届けたあの子は、もう既にイデアルで新たな生を授かったというのに。
もしかしてあの黒に侵されて生を終えてしまってる…?
あの子を救おうとしてくれた恩を返すこともできないの…
諦めかけたその時、今は使われていないはずの端末からの反応があった。
見るとわたしの魂の波長があるようだ。
つまり彼に注いだわたしのカケラが。
分かった途端に、笑みがこぼれる。
「やっと、見つけた!」