第3話. もしもし。
(さて、どうしたもんかな…)
とりあえず、スライムいなくなったし、ひと段落して腰を落ち着けよう。
腰はないけど。
(って、スライム居たんだから、他の……モンスターとかいるのか?)
冷静になると周りがよく見えるようになったのか、今まで思ってもなかったことが頭に浮かぶ。
ハッとして、周囲をぐるりと見渡すも動くものは影も形も見当たらない。
そして改めて水場を見遣ると水底に光るものがあることに気付いた。
(あれは…石像?)
見ると人型をした石像があり、その中心部には白く光るものがあった。
(この身体…泳げるのかな?)
さして深くは見えないとはいえ、泳げなければ溺れて死んでしまう。
でも俺は一度興味を持ってしまうと、とことん知りたくなってしまう性分なのだ。
なんとかよく見えないかと身を乗り出して覗き込もうとし…
ちゃぷん
いい音と共に全身を水が包み込む。
瞬間焦ってもがこうとしても、泳ごうとしても、手足が無くて這って移動していた俺には何も出来ずに沈んでいく。
息苦しさは……訪れない。
どうやらこの身体は呼吸を必要としていないようだ。
水中は澄んでいて、視界も悪くはない。
水底に降り立った俺はとりあえず先に見つけた石像のもとへ移動する。
(なんだこれ……綺麗な人だな)
見上げた石像はまるで眠っているだけのように見えるほど精巧な作りをした女性の像だった。
祈りのポーズをとるその像の胸元には石像ではない、白い宝石が埋め込まれていた。
(あれが光ってたのか。何かに反射でもしてたのか?)
水底を見渡すが地上よりも薄暗く、光源となるようなものはなかった。
だからこそ淡い光を放つ宝石が地上からも見えたのだろう。
意識を石像に戻し、そして視線を下げていくと台座に文字が書いてあるのを見つけた。
しかしそれは悠水の知る日本語でも英語でもない、この世界の文字だった。
(読めない文字だな…やっぱり異世界なのだろうか)
文字に意識が向き、そして触れてみる。
--……と、み……た!
何か聞こえた。周囲を見渡すが何もない。
(でもどこかで聞いたような…)
記憶を探るがどこで聞いたのか思い出せない。
石像の顔を再び見上げ、そして台座に触れる。
--……っと、き……てる?
(なんだ…?なんて言ってるんだ…?)
不鮮明だが声がやはり聞こえてくる。
意識を声に集中する。
--…しも…し、もし…し
(しも?ん??)
だんだんとクリアになっていくが、なんと言っているのだろう
--もしもーし、聞こえてますかー?
(もしもし…?)
聞き慣れたやりとりをされた。
日本人なのだろうか。
--あー!やっと繋がった!
(これ電話…?どちら様ですか??)
--わたしはリンカ=ショーネ、この世界の女神だよー
(あ、どうも……え?)
日本人じゃなかった。そしてやはり異世界だった。
2017/03/29
追記:読みやすくするため改行を各所にしました。