表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平和な異世界魔物ライフ(仮称)  作者: かっしぃ
3/23

第2話. 自覚


『ビチャッ』


どこかへ落ちた。

痛みはない。


(スライムの身体って便利だな…それとも夢だからか?)


周囲を見渡す。

上と同じく体育館くらいの広場だった。

キラキラ光る岩山や、水の滴るデカい草花、泉のようなものもある。

あとチラホラと水玉のようなものもあるな。


(俺と同じように落ちたやつが何匹もいるのか)


上を見上げても先ほどの場所は見えない。

どうやらだいぶ深くまで落ちてしまったようだ。


(さてどうするべきか。てゆかこの夢覚めないのかな)


うんうんと悩んでいると1匹のスライム(?)が近づいてきて、くっついてきた。


(何だこいつ……うわ、い、痛い!?)


落下時には感じなかった痛みを感じて、焦って振りほどこうと意識する。

だが離れない。じわじわと痛みを感じる場所が増えていく。


(まさか、喰われてるのか!?くっそ…)


そして先の光景を思い出し、理解する。

あれは互いに互いを食い合って、吸収、合体していたのだと。

最後のヤツは俺を喰おうとしていたのだと。


(こんなチビ助に喰われてたまるか!)


俺は肉まんにでもかぶりつくようなイメージで自分にひっつくスライムを意識する。

すると何故かあっさりと喰いつくしてしまった。


(…俺ってそんなに腹減ってたのかな)


そこにはもう小さなスライムはいなくて、少しだけ大きくなった自分がいた。

同時に腹の底から力が湧いてくるのに気付いた。


(っていうか、これって現実なのかね。痛かったし…)


先の痛みを思い出し、これが現実なのだろうと改めて落胆する。

そして思う。


(食べて?わかったけど、俺腹減ってんだな)


晩飯もまだだったしな、と思って周りを見ると、ぷるぷる震える小さなスライムがまだチラホラといることに気づく。


(…この際だから、頂きますか)


ずりずりと移動しては喰い。移動しては喰う。

1匹目と同じように痛みが襲うこともあったが、基本すんなりと食べ終えてしまった。

周囲のスライムを食べ終えて、さっきよりも視線が高くなっていることに気づく。

デカいと思った草花は俺と同じくらいの大きさか…

デカい草に触れて、改めて意識するとじわっと溶け出してきた。


(まさかこれも喰えるのか)


自分と同じ大きさの草が、自分の中に溶け込んでいくのを感じる。


(これって俺が緑色になっていくのか…?)


緑色のエキスとなって溶けてこんでいく草に不安を覚える。

嫌だな…と思っていると腹の底の方で凝縮し、小さくなって消えたのを感じた。


(緑になって…ないよな?)


自分の身体を確かめたくとも身体は見えないし、鏡もない。


(鏡……水場があるか!)


水は姿を映してくれる。濁っていなければ。

そしてのそのそと水場があった方へ移動する。

動いてて気付いたが、意識せずに触れているものは溶け出さず、さわさわと触れる草花やゴリゴリする地面の感触があった。


(予想以上に綺麗で……深いな)


たどり着いた水場は25mプール…ほどではないが充分な広さと深さ、そして透明度があった。

浅瀬を探して水に触れる。

それはひんやりと冷たく、そして触れていて安らぎを覚える水だった。

そして覗き込み--


(あぁ、やっぱりスライムになってるわ)


自分の身体が青白い球体--スライムになっていることを視認し落胆し、そして緑色じゃないことに安堵した。


ここまできたらさすがに認めないとだよな。

これは現実で、俺はスライムで、きっとここは所謂異世界なのだろう。


俺--黒地(くろち)悠水(ゆうすい)はスライムに転生していた。



2017/03/29

追記:主人公の名前にルビを振りました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ