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さて、一服。  作者: ろうや
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タバコの強さ


「さて一服。」


俺がタバコをくわえ火をつけると、俺の髪をつかんでいた長身の男はその手を離していた。

 このタイミングで、タバコを吸いだすとは思いもしなかったのだろう。

 さっきまで眉がより、しわを作った顔は一瞬で間の抜けた表情になり、口を小さく開けている。



「てめえ。こんなときになにしてんだ。」


 中肉中背の黒てか短髪が俺を怒鳴り付ける。


 それに助けられ、怒りを取り戻した長髪は何やら叫んで俺の胸ぐらを掴んだ。



 次の瞬間。


ブチッ


 制服の中でシャツのボタンが飛ぶ音がした。


 おれの腕、胸、肩はみるみる太く、厚くなる。


 肩から首にかけて、プロレスラーでもなかなかないような筋肉が盛り上がってきた。


 その異変に気づいた長髪は、俺から手を離し、黒てかは一歩後ずさりした。


 さすがにこの体にはびびるか。


 長髪と黒てかからは怒気が消え、さっきまでの勢いはなく、遊びの最中に父親が大事にしている花瓶を割ってしまった子供のように固まってしまった。


 それを見て俺は一息、煙を二人に吹きかけ、


「申し訳ございません。だ、がまだ金がほしいか?それともやる?か?」


静かに尋ね、二人を鋭く睨んだ。


すると

知るかよ。だか、もういい。だかなんだか言って二人は去ってしまった。



 二人が店から出ていくのを見て、俺は安堵した。

 宮木の身体の厳つさは知ってはいたが、喧嘩なんてしたことのない小心者にとっては大博打だったのだ。


 俺は大きく息をはいた。

さっきまでの緊張や怒りが抜けていく。

 

 そして深くタバコを吸う。

 春海ちゃんがペコペコ頭を下げながら、隣のレジに向かうのが見えた。


 またひとつタバコ吸う。





 突然、人に緊張を与えるようなベルがけたたましく鳴り、シャワーのように水が降ってきた。

 「何が起こった。」

と宮木の声。


 「店内禁煙」


 その文字を目にした時には、激しい火災ベルの音とスプリンクラーの雨に俺は包まれていた。


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