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49 遺跡の正体

 



「え……従兄弟の…お兄さん?」

「うん」

 ナギトはイオリが零した『従兄弟の兄ちゃんと同じくらい凄い』と言う言葉に、思わず唖然として聞き返すも、イオリは当たり前のように肯定した。

 

 イオリの従兄弟。正確にはスバルの兄であるのだが、彼は歳の離れたスバルとイオリを可愛がり、まるで近い将来災厄でもあると分かっていたかのように二人を鍛えた。

 イオリは性格的にそれほど熱心ではなかったが、スバルは性格的にも合っていたのか同じ家に住んでいることもあり、熱心に技術を吸収した。

 スバルの兄は何かの武術……もしくは何らかの戦闘技術を有しており、かなり謎な人物だった。

 

 イオリは幼い頃、スバルの家に泊まって夜中にトイレに起きた時、黒覆面姿で鉄の大剣を抱え、こっそり出掛ける彼の姿を見かけた。

『にいちゃん、どこにいくの?』

『………兄ちゃんは、正義の味方のお手伝いに行くんだよ。みんなには内緒な?』

『うん、わかったー。がんばってねー』

 もちろん転生のショックでスバル以上に家族のことをあまり覚えてないイオリなので、今でも彼の名前も思い出せないが、彼の中二病じみた台詞と大きな背中だけは良く覚えている。

 

「いや、俺だってっ」

「ん?」

「……な、何でもない」

 自分の正体をばらしそうになったナギトは、イオリの無垢な視線を向けられ、出掛けた言葉を飲み込む。

 自分が『誰』なのか言えば、素直なイオリは感心して、それだけで他の人達と同じように一定の尊敬と好意を得られるだろう。

 でもナギトはイオリに“ナギト”として好きになって欲しいと言う、へたれのくせに大それた望みを抱いていたのだ。

 元は男の子でも端から見れば、十代半ばの年頃の少年少女である。

 少し考えれば、この年代の少年が何を考えているのかイオリならば良く分かるはずなのだが、もちろん“イオリ”なので、苦悶するナギトを見つめながら愛想笑いで首を傾げる事しか出来なかった。

 外見が可愛いアホの子は本当に罪作りである。

 

「イオリさん、奥に進もうか。ゴーレムが居るって事は守っている宝があるかもよ」

「う、うん」

 やけに張り切っているナギトの勢いに、若干引きながらイオリも頷く。

 宝とかは何でも良いが、新しく出来た友人と遊べて一緒に見つけることが楽しみだなぁ……としか考えていないイオリと、そんなイオリに格好いいところを見せようと張り切るナギトとでは少し多少温度差と言うか、ベクトルが違うのは仕方ない。

 

 ナギトとイオリは遺跡の奥へ進む。

「たぁっ!」

 どうやらナギトのあの中二病っぽい技は【剣技スキル】によるものらしく、使用するにはMPを消費するようだ。

 途中からMP節約の為に通常の【片手剣スキル】のみで戦っているナギトだが、それでもロックゴーレムを倒すのに一撃から二撃になる程度で、相変わらずしょぼい弓矢しか攻撃手段のないイオリは『全自動追尾灯り持ち』しかやることがない。

 それでもイオリの特殊スキルである【物質創造スキル】による『爆弾販売機』を使えば攻撃手段もあるのだが、使おうか……と考えた瞬間に【自動記録(オートセーブ)】がガンガン発動するので自重していた。

 それでもナギトの力だけで幾つかの階層を降りて、良く分からない古い文字が書かれた石の扉を破壊しながら奥へ進むと。

 

『ブモォオオオオッ』

 ガンッガンッガンッ!

 

「な、なに?」

「何か争ってる? イオリさん下がって」

 突如聞こえてきた泣き声と堅い物がぶつかり合う音に二人は警戒する。

 ランプの蓋を閉じ、この数ヶ月で【隠密スキル】を手に入れていたイオリと、【消音】の魔術を使ったナギトがこっそり通路の影から音がしたほうを窺ってみると、そこにはロックゴーレムと戦う、二メートル近い歪な二足歩行の生物が居た。

「……外で倒した魔物だ」

「あ、骨になってた奴?」

「そう、それそれ」

 ナギトが見たこともないと言っていた魔物。

 筋骨隆々の二足歩行の魔物だったが、その頭部はそのまんま『馬』だった。

「ボクも見たことないなぁ……」

 

 もしイオリがゲームに出てくるモンスターだけでなく、幅広く知っていたなら、地球のお話に出てくる『馬頭(めず)』と言う存在を思い出しただろう。

 牛の頭を持つ『牛頭(ごず)』と対になる地獄の獄卒。

 もちろん、それは馬頭などではないが、奇しくも牛の頭を持つモンスターであるミノタウルスと同系列のモンスターであった。

 だが二人が知らない程度に、ミノタウルスほど有名なモンスターではなく、その特殊な生態から、ある“仮称”で呼ばれている。

 イオリが遺跡に入ったせいで戻れなくなったハナコが居たなら、その馬の頭を持つモンスターをこう呼んだであろう。

 ところ構わず、♀に襲いかかるモンスター『ウマナミ』であると。

 

   ***

 

「ここかい?」

「ええ」

 森の中にある遺跡の入り口で、タネの言葉に隣にいたエルマが答え、二人は同時にこめかみを押さえるように溜息を吐いた。

 

 あの馬車でイオリの短パンと御パンツ様を発見した一行は、オリア達のパーティでレンジャーとしての修行を積んだエルマを先頭に、森の中をイオリの痕跡を追って移動を始めた。

 まさか、こんな山道に近い場所に遺跡があるとは思わなかったが、そこに真新しい破壊の痕を見て、イオリがこの中にいる可能性が高いと判断する。

 それを聴いて慌てて中に入ろうとするスバルをタネが一喝し、この面子でまともな冒険者であるエルマとディートリヒが遺跡の入り口を調べた。

 遺跡を簡単に破壊するなんてとても信じられなかった。

 遺跡が文化財として貴重という意味もあるが、それ以上にこの世界のこういった隠された遺跡は、大抵の場合、何かを『封印』している場合が多いのだ。

 

 調べた結果、その遺跡は過去に発生した『ウマナミ』と言う魔物を封印した場所であった。

 その時代に突然数百体発生し、人でも家畜でも♀なら見境無しに襲いかかり、尚かつミノタウルスと同等の戦闘力を有するその魔物を、過去に幾つかの国とエルフ達やドワーフ達が協力して封じ込めたらしい。

 亀裂から小さな個体が一体程度外に出るのなら問題ないが、中にいるすべてが外に出てくると周辺国で大混乱が発生する。

 そしてウマナミは悪魔系のモンスターでもあるので、数百年程度では全滅せず、数千年以上けして封印を解くことがないように……と、破壊された『封印門』に記されていた。

 

「……あの子は、何をどうしたら、ここまで面倒を起こせるんだい?」



 

恐ろしい子…!


次回、ウマナミの恐怖。もちろんウマナミです。


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― 新着の感想 ―
黒覆面姿で鉄の大剣 > マジなのか、黒歴史になりうる心の病気なのか、判断付かないなあ………。 人でも家畜でも♀なら見境無し > 逆に男なら安心とか? あ、殴られるだけですか、はい。
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