01 とある戦闘の一コマ
※初めてのTS作品に挑戦します。
完全不定期更新になりますが、一週間は毎日更新予定です。
本作品は、私の他作品と同じ世界ですが、ほぼ関わりはありません。
※注意 本作品は真面目な話ではありません。以下の読者様は読むのを注意、もしくはお控えください。
・バカな主人公に耐性が無く苛つく方。
・軽い下ネタ等が苦手な方。
・女性向けの恋愛色の強い小説をお求めの方。
「ひゃゃぁああああああああああああああああああああああああっ!?」
さして長くもなく人生の中でも初めて上げるような、絹を引き裂くような悲鳴をあげながら、その少女はダンジョンの中で石畳を転がり回った。
あまり清潔でもない固い石畳に、背中や剥き出しの手足がひりひり痛んでゾッとするが、そんな暇はない。諦めたら人生そこで終了である。
『ブモォオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
雄叫びを上げて、巨大な影がまだ立ち上がれない少女に向かってきた。
身長三メートルもありそうなデカい図体で、良くそこまで速く動けるのか感心したくもなるが、少女からしてみれば迷惑でしかない。
ブン…ッ!
「…ひっ」
目の前に振り下ろされる棍棒を、目と鼻の先ギリギリで少女は避ける。
掠っただけで死んでしまいそうな一撃だったが、棍棒の持ち主は少女を殺そうとしている訳ではないらしく、棍棒は少女に見えるギリギリの速度で振られている。
それだけが唯一の隙にしてただ一つの希望だったが、非力な少女がナイフで斬りつけても、そのぶ厚い皮膚の表面しか傷つけられなかった。
少女の目の前にいる敵は『オーク』と呼ばれているモンスターだ。
しかも普通のオークではなく、戦士系のスキルを身に付けた『オーク戦士』とか言うふざけた存在だった。
知っている人は知っていると思うが、オークと言えばアレである。
豚のような頭に太った身体の♂だけの種族で、♀が居ないから他種族の♀を襲って、アレしちゃってアレなことしちゃう、いわゆる女騎士の永遠の敵のような、つまりはアレな存在だった。
そして少女は女騎士ではないが、身体的には間違いなく女性である。
まだ十代前半の華奢な身体つきをしていたが、オークにとっては♀か♀でないかの興味しか無く、その柔らかそうな身体は色々な意味で美味しそうな少女であった。
そんな少女が普通のオークよりも色々と大きいオーク戦士に捕まったら、想像しただけでも愉しくない現実が待っているだろう。
一部の特殊な性癖を持っている人なら喜ぶのだろうが、少女にそんな趣味はなく、そもそもそんなことを考える余裕もない。
性別も関係なく、オークとそんな関係になりたい人はまず居ない。
『ブヒヒィ』
オーク戦士が少女の全身を舐めるように上から下まで見て、顔を歪めて笑う。
「ちょ、」
あきらかに身体を狙われている視線を感じて、少女の口から焦りの声が漏れる。
こんな貧相な身体を狙うよりも、こんなダンジョンから出て、冒険者や大人の女性を狙って欲しいと思った彼女を責められるだろうか?
責めるのならお前がオークに掘られてしまえと、少女は切実に思った。
「……捕まるより、死んじゃうほうがマシな気がするなぁ」
それでも出来れば逃げたい。逃げ出したいけどそれは無理。
少女がここから逃げ出すには、オーク戦士の背後にある扉を開けなくてはいけない。
そして何より少女は何回繰り返しても、その扉まで辿り着くことさえ出来ずにいた。
でも少女は、何度も失敗するうちに一つの『策』を思い付く。
「うん、今度はいけそうな気がする」
『ブヒィッ?』
ニッコリと笑みを浮かべる少女に、オークの顔が器用に怪訝な表情を作る。
「はい、パスっ」
そう言って彼女は、オーク戦士に持っていたナイフを放り投げた。
投げつけたり投擲したのなら、仮にも戦士の名を持つオーク戦士はそれを避けるのだろうが、放物線を描いて放られたナイフを、オーク戦士は思わず受け取ろうとして宙に手を伸ばした。
(今だっ!)
その一瞬の隙を逃さず、少女は大事に一本だけ残していた矢を弓につがえ、オーク戦士の顔面に向けて撃ち放った。
…カンッ。
「へ…?」
オーク戦士は受け取ったナイフで簡単に矢を弾くと、その隙にオーク戦士の横を擦り抜けようとした少女の腕を掴んであっさりと捕まえた。
「………え、えーっと…」
「ブヒィ♪」
「いぃやぁああああああああああああああああああああああああああっ!?」
悲鳴をあげて身を捩るが、非力な少女ではオークの太い腕はびくともせず、ミカンの皮を剥くように衣服を容易く剥ぎ取られ、次の瞬間に襲ってきた引き裂かれるような痛みに、少女の命はあっさりと失われた。
ブン… 【Record reading.】
次回、物語の冒頭からスタートです。