週刊誌。
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…翌朝…
私は母の言う事を聞かず、学校に行った。
昨夜、仕事を放り出して病院に来てくれたというのに…。
親の心、子知らずって奴ですな。
「涛生…それ、どうしたんだ⁈‼」
家を出ると竜也に会った。
第一声がソレだった。
「あぁ、これ…自転車…壊れちゃって…。」
私は家の前に止めてある自転車を指差して言った。
「そっちじゃなくて……」
竜也が気になったのは、私の足に巻かれた包帯。
「ちょっと転んで捻挫しちゃった…あははっ。」
「…ちょっとじゃねぇよな。」
…いかん、何を言っても心配される。
「そだ…竜也、私ハンバーガー食べたい!」
「…え?」
竜也の反応をよそに、私はそっちの自転車の後ろに乗った。
「朝マ⚫︎ク出発〜♪」
「しゃ〜ね〜な、行くぞォ〜〜‼︎」
…竜也はそれ以上は怪我の事を聞いて来なかった。
私が話さない事に呆れた…というよりは、私が話したい時に聞いてやる…って雰囲気だったような気がする。
たまに振り返る顔はいつも通りに見えたけど、前を向いている時、彼はどんな表情だったのだろうか…。
…生暖かく、強い風が吹いた朝だった。
「あ〜食った食った〜♪」
学校に到着。
「相変わらず朝からよく食う奴だねぇ。」
…私も結構食ったけど。
「育ち盛りですから♪」
「どれどれ?…あ、Aカップ!」
「あるかァ〜っっ‼︎」
とツッコんだ竜也の後ろから奏太が沸いて出た。
「アハハハッ‼アホだな‼」
2人のコントに爆笑。
…笑い声がひとつ足りないなぁ。
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「…渚が気になるのか?」
教室に入ってしばらくしてから、竜也が尋ねた。
「うん…昨日、辛そうだったから。」
…予感はしていたけど、渚は休みだった。
…昨日の一件で、欠席した生徒は少なくなかった。
「涛生ィー!」
一旦教室を出た奏太が戻って来た。
「あったぞー♪」
奏太がニヤッとしてソレを机に置いた。
「さんきゅ〜!」
今朝の朝刊と、今日発売の週刊誌。
奏太が手を出した。
「160円ずつね。」
「はい、」
「ほいっ」
「まいど♪」
…この町で立て続けに起きた連続殺人事件。
私は興味があるフリをしながら、彼が犯人ではない証拠を見つけたかった。
「最初の被害者は…天祢 梨子。」
隣町の私立高校に通う、今年2年になったばかりの女の子。
4月上旬、始業式を迎える事無く命を落とした。
彼女は不動産会社の社長令嬢で、でも気取らず、明るく気さくで友達も多く、クラスの人気者だった。
実の母親とは10年前の離婚で疎遠だが、再婚相手の義母とも特にトラブルも無く、幸せな家庭…。
「綺麗なコだな。」
奏太が言った。
「…うん…。」
…彼女は首を締められて殺害された。
爪が割れるぐらい抵抗した痕があるのに、犯人の遺留品すら見つからず、捜査は難航…。
余程苦しかったのであろう…瞼に涙が溜まっていたんだって…。
遺体は美しく装飾されていて…。
まるで天使のようだったと言う。
2人目の被害者は…結城 美波。
地元ではかなり優秀だと言われてる某進学校の1年生。
そして、大病院の1人娘。
温厚で誰にでも優しい子だったという。
…この子も凄く美人…。
死因は…溺死。
遺体は…まるで人魚のようだったと言う。
3人目…花村 さくら。
大学2年生。
…掲載された写真は、まだ少女の面影を残した、屈託の無い笑顔…。
確か父親は、去年この町から当選した政治家。
遺体は…散ってしまった桜の木の下に装飾されていた。
死因は…撲殺。
4人目…白石 舞。
電車で数キロ行った先にあるキリスト高校に通う3年生。
私の家の近くで発見された子。
見立てはまるで…女神。
毒殺だそうだ。
そして5人目…朝日奈 希。
…この学校の生徒。
昨日、屋上から落ちて亡くなった。
見立てはきっと…太陽だろう。
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「…共通点は若い女…しかも美人ばかり…ってか?」
3人しばらく考えていたが、最初に奏太が口を開いた。
「最初はね、金持ちのお嬢様ばかり狙われてると思ったんだよね。ところが、うちの学校の子まで殺された。」
被害者が3人目だった頃の私の考えは覆されていた。
しかも4人目と5人目は、2日連続で見つかっている。
「涛生も気を付けなきゃなぁ。」
竜也が私の足をチラッと見て言った。
「私は大丈夫だよ。」
笑顔でサラッと返答。
「いや、まぁ一応…女だし…。」
ゴニョっと言った。
「美人しか狙われないから涛生は大丈夫なんじゃねーの?」
奏太がニヤニヤしながら言った。
「それも…そうだな!」
竜也も同意した。
「おいっ、何か失礼だな!」
…とか言いながら、みんな笑っていた。
「おーい3バカ、いつまで喋ってるんだぁ〜‼」
「「「あ…センセ…。」」」
3人同時に振り向いた。
…あの時、馬鹿みたいに笑っていたけど…
…誰も本気で笑ってなかったんだよね…。
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