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仮面α  作者: 霧咲 ユウ
9/22

週刊誌。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


…翌朝…


私は母の言う事を聞かず、学校に行った。


昨夜、仕事を放り出して病院に来てくれたというのに…。


親の心、子知らずって奴ですな。








「涛生…それ、どうしたんだ⁈‼」




家を出ると竜也に会った。


第一声がソレだった。




「あぁ、これ…自転車…壊れちゃって…。」


私は家の前に止めてある自転車を指差して言った。




「そっちじゃなくて……」




竜也が気になったのは、私の足に巻かれた包帯。




「ちょっと転んで捻挫しちゃった…あははっ。」




「…ちょっとじゃねぇよな。」




…いかん、何を言っても心配される。




「そだ…竜也、私ハンバーガー食べたい!」


「…え?」


竜也の反応をよそに、私はそっちの自転車の後ろに乗った。


「朝マ⚫︎ク出発〜♪」


「しゃ〜ね〜な、行くぞォ〜〜‼︎」








…竜也はそれ以上は怪我の事を聞いて来なかった。


私が話さない事に呆れた…というよりは、私が話したい時に聞いてやる…って雰囲気だったような気がする。


たまに振り返る顔はいつも通りに見えたけど、前を向いている時、彼はどんな表情だったのだろうか…。








…生暖かく、強い風が吹いた朝だった。
















「あ〜食った食った〜♪」


学校に到着。


「相変わらず朝からよく食う奴だねぇ。」


…私も結構食ったけど。


「育ち盛りですから♪」


「どれどれ?…あ、Aカップ!」


「あるかァ〜っっ‼︎」


とツッコんだ竜也の後ろから奏太が沸いて出た。


「アハハハッ‼アホだな‼」


2人のコントに爆笑。








…笑い声がひとつ足りないなぁ。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


「…渚が気になるのか?」


教室に入ってしばらくしてから、竜也が尋ねた。


「うん…昨日、辛そうだったから。」


…予感はしていたけど、渚は休みだった。








…昨日の一件で、欠席した生徒は少なくなかった。








「涛生ィー!」


一旦教室を出た奏太が戻って来た。


「あったぞー♪」


奏太がニヤッとしてソレを机に置いた。


「さんきゅ〜!」


今朝の朝刊と、今日発売の週刊誌。


奏太が手を出した。


「160円ずつね。」


「はい、」

「ほいっ」


「まいど♪」








…この町で立て続けに起きた連続殺人事件。


私は興味があるフリをしながら、彼が犯人ではない証拠を見つけたかった。








「最初の被害者は…天祢 梨子。」




隣町の私立高校に通う、今年2年になったばかりの女の子。


4月上旬、始業式を迎える事無く命を落とした。


彼女は不動産会社の社長令嬢で、でも気取らず、明るく気さくで友達も多く、クラスの人気者だった。


実の母親とは10年前の離婚で疎遠だが、再婚相手の義母とも特にトラブルも無く、幸せな家庭…。




「綺麗なコだな。」


奏太が言った。


「…うん…。」




…彼女は首を締められて殺害された。


爪が割れるぐらい抵抗した痕があるのに、犯人の遺留品すら見つからず、捜査は難航…。


余程苦しかったのであろう…瞼に涙が溜まっていたんだって…。


遺体は美しく装飾されていて…。


まるで天使のようだったと言う。








2人目の被害者は…結城 美波。


地元ではかなり優秀だと言われてる某進学校の1年生。


そして、大病院の1人娘。


温厚で誰にでも優しい子だったという。


…この子も凄く美人…。


死因は…溺死。


遺体は…まるで人魚のようだったと言う。








3人目…花村 さくら。


大学2年生。


…掲載された写真は、まだ少女の面影を残した、屈託の無い笑顔…。


確か父親は、去年この町から当選した政治家。


遺体は…散ってしまった桜の木の下に装飾されていた。


死因は…撲殺。








4人目…白石 舞。


電車で数キロ行った先にあるキリスト高校に通う3年生。


私の家の近くで発見された子。


見立てはまるで…女神。


毒殺だそうだ。








そして5人目…朝日奈 希。


…この学校の生徒。


昨日、屋上から落ちて亡くなった。


見立てはきっと…太陽だろう。








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「…共通点は若い女…しかも美人ばかり…ってか?」


3人しばらく考えていたが、最初に奏太が口を開いた。


「最初はね、金持ちのお嬢様ばかり狙われてると思ったんだよね。ところが、うちの学校の子まで殺された。」


被害者が3人目だった頃の私の考えは覆されていた。


しかも4人目と5人目は、2日連続で見つかっている。


「涛生も気を付けなきゃなぁ。」


竜也が私の足をチラッと見て言った。


「私は大丈夫だよ。」


笑顔でサラッと返答。


「いや、まぁ一応…女だし…。」


ゴニョっと言った。


「美人しか狙われないから涛生は大丈夫なんじゃねーの?」


奏太がニヤニヤしながら言った。


「それも…そうだな!」


竜也も同意した。


「おいっ、何か失礼だな!」


…とか言いながら、みんな笑っていた。


「おーい3バカ、いつまで喋ってるんだぁ〜‼」


「「「あ…センセ…。」」」


3人同時に振り向いた。








…あの時、馬鹿みたいに笑っていたけど…


…誰も本気で笑ってなかったんだよね…。








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