悪夢。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
「……ん…………此処は……?」
……此処は何処だろう?
……何も無い場所……。
「………………」
…向こうから孝明さんが歩いて来た。
「孝明さぁ~ん!!」
…私の声は聞こえないのだろうか?
孝明さんは私に気付かず、目の前を通過した。
「……竜也!!」
「……奏太!!」
…アイツらも気付いてくれない。
……何だろう……
……凄く心細い……。
「うっ…………やめてっ…………助け…………っ…………」
…この声は…
…渚っ!!
誰かが渚の首を締めていた。
…渚を助けなきゃ!!
……でも……
……身体が思うように動かなくて……
「…………ぁ……………………」
「渚ぁっ!!」
……どんなに足掻いても……
……そこに辿り着けなくて……
……渚は力尽きた……。
……私は渚を助けられなかった。
……すぐに足音がこっちにやって来た。
……恐怖で、私は後退りした。
…が、手はすぐそこに…
…長い指の大きな手が私の顔に触れる。
…私は手を伸ばした。
…ひんやりとした硬い感触…。
…これは……………………?!!!
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
「……ぅわぁぁっ!!!!…………?」
…外は明るく、スズメの鳴き声…。
……午前6時……
……夢……だったのか……?
「あっ、もしもし…渚?」
…よかった、電話に出てくれた。
…凄く不安だったんだ。
渚の声を聞いて安心したよ。
いつも通りだったから。
「うん、ありがとう。じゃあまた学校でね!」
少し話して電話を切った。
…いつも通りの朝じゃないか。
そう自分に言い聞かせた。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
「あっ!涛生ちゃん、おはよう!」
「おはよ、渚。」
下足場で渚と会った。
元気そうだった。
…いつも通りの朝。
…たかが夢じゃないか。
…考え過ぎだ。
「こら涛生〜〜!」
「あっ…竜也…。」
同じ場所で竜也に会った。
「ひでぇなぁ〜、俺様を放って行くなんて…(泣)」
「ゴメ〜ン‼…忘れてた(笑)」
「ぬわに〜〜っ…ヒドイ…(泣)」
…私と竜也の漫才に渚はクスクス笑っていた。
「あ、今日は日直なんだ。先に行くね。」
渚は教室に向かった。
「なぁ涛生、朝飯食ったか?」
「いやぁ…実はすっかり忘れてた……(笑)」
…7時半。
時間はたっぷりある。
早起きして何やってるんだか。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
「…って、朝から重っ‼」
座ってからの遅いツッコミ。
「俺、大盛りつゆだく!」
「えっっと…じゃあ…私も。」
「ほんで、お前も食うんか〜いっ‼」
…まぁそうツッコミ返されるわなぁ(笑)
…さあて、全部食えるかな〜?
「いっただっきま〜す!」
「うん、美味い!涛生よ〜、やっぱ男は黙って牛丼だな‼」
「口閉じろっ!」
…まぁ色々とツッコミ所のある男です。
食うか喋るかどっちかにせいっ!
…とか、
黙って牛丼…とか言って黙って食ってないし…
…とか、
私、女だし…
…とか…。
「今朝はゴメンね、勝手に先に行っちゃって…。」
改めて竜也に謝った。
「いいよ〜、気にすんな♪」
竜也は笑って許してくれた。
「…何かあったのか?」
続けて竜也がそう言った。
「…実は…………」
…私は竜也に今朝の夢の内容を話した。
「確かにヤな夢だな。」
「でしょ!」
「涛生が心配する気持ちもわかる。……正夢とかになったら……恐いし……。」
竜也から笑顔が一瞬消えた。
「…………えっ⁇…………」
その一瞬に私も動揺した。
…おいっ、そこ、冗談って言えよ。
「まぁでも、渚はいつも通りだったし、ホントただの夢だったよ‼ハハハッ…。」
…何か収集がつかなくなって、半ば強引にこの話題を終わらせた。
「今日は木曜日か〜。」
竜也が言った一言で…。
「木曜日……あっ‼今日は全校集会だったよ‼」
「やべぇ、すっかり忘れてた‼」
「お前もかっ!私もだ!」
…こりゃいかん、急いで食べなきゃ‼
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□