事件現場。
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私は自転車に乗り、パトカーを追い掛けた。
「…なっ…」
なんて事だろう…。
新たな犠牲者がそこにいた。
死体は袋に入れられ、運ばれた。
「あれ、涛生?学校サボってどうしたの?」
人混みの中に、孝明さんが居た。
「ゴホッ…ちょっと体調悪くて…。」
…孝明さんにも嘘をついた。
「風邪か?…昨日の雨、凄かったもんなぁ。」
…丁度いい理由が出来た。
「孝明さんこそ、どうして此処に?」
逆に問い返した。
「今からバイトなんだけど……まさか通り道で起きちまうとは…。」
…結局私は、狂也を見つけられなかった。
ただ…事件現場で不審者を見たという目撃証言。
…仮面を付けた男。
狂也が家を出たのは容疑者にされているから…?
…謎は深まるばかり。
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「涛生ちゃ〜ん!」
家に入ろうとした時、後ろから声がした。
「渚!!」
【久木田 渚】。
成績優秀で優しくて、とても頼りになる友達だ。
私が2年に進級出来たのは、彼のおかげなのだ。
「急に休むから驚いたよ。大丈夫?」
渚は心配そうに言った。
「うん…少し良くなった。ちょうど今、病院に…。」
…また嘘を重ねた。
私は殺人現場にいたのだから。
「これ、今日授業でやった内容だよ。必ず目を通してね。」
「ありがと〜。」
私はノートを受け取った。
…いつも思う。
渚みたいな優等生が、何で私と同じ高校に居るのかな…って。
孝明さん…
私なんかより、渚の方が犯人に狙われそうだよ。
…男子の制服着てるけど、女の子みたいなんだもん。
「送って行こうか?」
そう思ったからつい…。
「まだ病み上がりでしょ、安静にしてなさい!」
眼鏡の奥の黒い瞳は笑顔だった。
「はーい。」
渚を見送って、家に入った。
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「…もしもし?」
…部屋に戻ったらケータイが鳴っていた。
「よぉー涛生、生きてたかー!」
「…奏太め〜!!」
電話をして来たのは、【真潮 奏太】。
これも一応友達。
「…と言うのは冗談で。今ニュースでお前ん家の近所が映ったからさ。」
…早いなぁ…もう報道されちゃうんだ。
「ホントだ…。」
…テレビを付けるとさっきいた事件現場が映っていた。
「今日学校来てねーし、ケータイかけても中々出ないから、ちょっと心配したんだぜ。」
「まさか私が死んだと思ったの?」
「世の中わかんねーからな。」
奏太は顔に合わず心配性だ。
でも…此処まで近所になってくると確かに物騒だ。
…報道陣は夜になっても帰らず、外はいつまでも騒がしかった。
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