仮面の男。
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「…う~ん…。」
私は腕を組んで悩んでいた。
運んでから悩む私も変だけど、それは明らかに不審者だった。
黒いマントに身を包んだ背の高い男。
何よりも不気味なのは、その顔に付けている仮面だった。
…まるでそれが彼の顔かと言わんばかりに、ぴったりとくっ付いて外れなかった。
私はそれが気になって、彼が意識を取り戻すまで、目が離せなかった。
…彼が眠っている間も、仮面は不気味な笑みを浮かべていた…。
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「……っ…」
しばらくして男は目を覚ました。
「…あの……」
私は躊躇いながら、彼に話し掛けた。
けど、何て言えばいいのか解らなかった。
「えっ……ちょっと!!」
彼は突然起き上がって、部屋を出た。
私は彼の後を追った。
…玄関で蹲っていた。
まだ休ませないと…。
「涛生~。」
その時、外から声がした。
…ヤバイ!
「涛生~、学校行こうぜ。」
私の名前を呼んでるコイツは【水瀬 竜也】。
一緒に通学してる友達。
「竜也…ゴメン…先行っててくれないかなぁ…。」
鍵穴から届く程度の声で言った。
…このドアは開けられない。
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「…はい…風邪気味で……ゴホッ……今日は欠席します…。」
…ズル休みした。
私は、彼を放っておけなかった。
「お腹空いたでしょ。」
私は朝食を2人分作った。
…よかった。
食べてくれた。
「そろそろ母さんが帰って来るから、部屋から出ないでね。」
カーテンを閉めてそう言ったら、彼の手が止まった。
そして俯いた。
…自分は迷惑じゃないか?
そう聞こえた。
「…違う…迷惑じゃない。此処にいて欲しいの。」
何故そう言ったのか、自分でもよく解らなかった。
「何て呼んだらいい?」
欠伸混じりに尋ねた。
「…………狂也…。」
初めて声を聞いた。
「狂也……よろしく……」
声を聞いて安心したのか、急に睡魔が…。
…この人、いい人だよ。
何を根拠にそう思ったのは解らないけど…。
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「………あっ…?!!!」
…もうお昼だった。
私はベッドに居て、布団が掛けられていた。
「…狂也?」
彼は部屋に居なかった。
出て行ってしまったのだろうか…?
私は家中探し回った。
リビングでは、化粧をしたまま母が寝ていた。
母には見つかっていないようだ。
私は玄関を出た。
家の前を数台のパトカーが通過した。
…嫌な胸騒ぎがした。
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