雨。
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「…最近物騒だよなぁ。」
ため息混じりに私は呟いた。
今、私はインターネットカフェにいる。
学校帰りに、此処に立ち寄る事が多い。
大好きな作家の小説を読む為だ。
それに話し相手もいる事だし…。
「これで3人目だっけ?」
私の背後で返答した店員は、【浦星 孝明さん】。
気さくに話せる兄貴的存在で、良き友人でもある。
孝明さんが言った【3人目】とは、今騒ぎになっている連続殺人事件の被害者の人数。
これがまた奇妙な事件なんだけど…。
「あ〜恐い恐い。」
「こんな所でサボってていいんですか?」
話し出したら止まらない。
孝明さんの悪い癖だ。
「やべっ店長だ。まぁ、お前は大丈夫だと思うけど、気ぃ付けろや。」
トレーを持って立ち上がった。
「何が?」
「涛生は可愛いから!」
私の頭をクシャッと掴んで、孝明さんは持ち場に戻った。
「……可愛い?…何処が。」
ハネた髪を直しながら、私は少し不機嫌になった。
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…まずは、この事件の説明をしなきゃいけない。
それは一ヶ月程前に遡る。
ある路上で、美しく装飾された死体が見つかった。
被害者の顔には黒い仮面。
そんな事件が今回で3件。
警察は連続殺人事件として捜査。
必死の捜査にも関わらず、犯人の情報は未だ不明。
被害者が仮面を付けられて発見されている事から、マスコミは犯人を【ペルソナ】と呼んでいる。
3人の被害者は、いずれも有名なお嬢様学校に通う綺麗な子ばかりで、おちこぼれ高校に通う馬鹿な私とは訳が違う。
髪も短く、男みたいな気性…私のような奴が狙われるとは到底思えないのだ。
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「…雨。」
……最悪。
店を出ると土砂降りだった。
…もっと早く帰るべきだった。
が、後悔先に立たず。
今夜は止みそうに無い……そんな声を聞いた。
…待つだけ無駄だ。
傘を持っていなかった私は、諦めて自転車に乗った。
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「…あぁ……疲れた…」
何とか家に辿り着いた。
…もうびしょ濡れ。
一緒に住んでいる母は、夜から仕事の為、家に居ない。
ベランダの洗濯物は…手遅れだった。
「…あ〜あ。」
仕方が無いので、ソレを再び洗濯機に入れる。
その時……!!!!
大雨に紛れて別の音が聞こえた。
…何だろう?
妙な胸騒ぎがした私は、表に出てみた。
近所の犬が吠えていた。
「ポチ…どうした?」
傘を差して、犬の所まで行ってみる。
「…なっ……?!!!」
誰か倒れていた。
「だっ…大丈夫ですか?!」
冷たかった…。
死んでるかも…。
警察を呼ぼうか…。
そう思った時、倒れていた人が私の手を握った。
「ひゃっ!!!!」
…生きていた。
私は、どうしたらいいか解らなかった。
…無我夢中で。
気が付くと…その人を家まで運んでいた。
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