罠。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
「……狂也?」
…少し、ウトウトしていた。
…それで気がつくと、狂也はいなくなっていた。
…あの怪我で一体何処に…?
「…これは?」
玄関に落ちている封筒。
それを拾った。
中を開けると…。
「……そんなっ…………」
…狂也…
…封筒の中に写真が入っていた。
…その写真には狂也が写っていて…
…首を吊っていた。
…死んでいた。
…写真の裏に何か書いてある。
『天袮 梨子、
結城 美波、
花村 さくら、
白石 舞、
朝比奈 希を殺害し、
久木田 渚を拉致・暴行したのは自分です。
死んで償います。
ペルソナ。』
…何だよ…これ…
…こんなの…おかしいよ…
…狂也は前みたいに自ら出て行ったのか…
…もしくは、何らかの方法で犯人に呼び出されたのか…
…それで、全ての罪を被せられた。
…この写真を撮って持って来た奴がいる限り、狂也の自殺は否定される。
…この写真…
…警察に電話しようか。
…警察に話したら…
…狂也が殺人犯になっちゃうかな?
…そんな事を考えていたら、ケータイが鳴った。
「…奏太?」
…どうしよう…
…私は電話に出るのを躊躇った。
…20秒くらい鳴って、電話は止まった。
…すぐにインターホンが鳴った。
…こんな時間に誰だろう…
…何度もドアをノックする音。
「夜分遅くにすみませーん。お留守でしょうか?」
…その声に聞き覚えは無かった。
「…どちら様ですか?」
外にギリギリ聞こえる声で返した。
「警察の者です。少しお話よろしいでしょうか?」
…誰かに通報された?
…でも狂也はいない。
…ずっと誰かに見られてる…
…裏付ける写真…
…色々考えて…
…警察に相談しようと思った。
「…今開けます…………あっっ……⁈」
…ドアを開けた瞬間、視界が白く光って、身体に激痛が走った…………。
…次に大きな音が鳴り、私の呻き声が大きく遅れた。
…身体が動かない…………
…男物の靴…………
…薄れゆく意識の中…
…確信した。
…標的は私だ。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
「……ぅ……っっ……」
……此処は…何処だ……?
…身体が動かない…
…意識を取り戻した時、私は手足の自由を奪われていた。
…捕まったんだ。
…私は辺りを見回した。
…狭い部屋。
…服が沢山…
…これは…
…羽根?
…足元に、見覚えのある白い羽根があった。
…梨子さんが見つかった場所にあった羽根…
…そうか…
…此処は殺人現場…
…犯人のアジト。
…次は私が殺される…‼︎
…今は無人の様だ。
…早く逃げなきゃ…
…私は縄を解こうと、手首を動かした。
…その時、ズボンのポケットに入ってたケータイに気付いた。
「……くっ…………」
…手首を捻ってケータイを出した。
…奏太からの不在着信。
…3件って事は…
あれから2回かけている。
…私が電話に出ないから着信…
…メッセージも来てる。
『もう寝た?』
…これって…
私を襲ったのは奏太じゃないって事だよね…。
…疑ってごめん‼︎
…時間も結構経ってた。
…午前8時。
…あ、竜也から着信。
…私は電話に出た。
「もしも〜し、涛生?」
…いつも通りの竜也。
「…竜也…私が喋らなくても電話切らないでね。」
小声で言った。
「…何かあったのか…?」
…私は…
夜中に犯人に捕まった事を話した。
「でも、此処が何処だかわからない。」
「わかった、すぐに警察に……」
竜也の声が途切れた。
「あれ?竜也、何してんの?」
電話越しに奏太の声が聞こえた。
「ちょうどいい、電話貸せ!」
「え、何で?」
「…涛生、奏太に代わるぞ。」
…竜也はそう言って、自分のケータイを奏太に渡した。
「もしもし?」
「…奏太?」
…私は竜也に電話を貸すようにと、奏太に頼んだ。
…彼は竜也にケータイを渡した。
その後、今の自分の状況を話した。
「……そんな…………オレのせいだ…………」
…奏太が言葉を詰まらせた。
「…奏太…………」
「オレが昨日犯人を見失ったから…………」
「…奏太のせいじゃない!」
…お願いだ…
…自分を責めないで…
…謝りたいのは私の方なのに…
「奏太、代われ……涛生、警察に連絡した。すぐに見つけてやるからな。」
「うん……あ、誰か来た……。」
壁の向こうで部屋のドアを開ける音…。
…私はケータイを身体の下に隠した。
…そしてまだ気絶しているフリをした。
…その誰かはこの部屋のドアを少し開け、私が倒れているのを確認すると、またドアを閉めて、何処かに行った。
…幾つか疑問があった。
…その中で、最も気になったのは…
…何故すぐに殺さないのか…?
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□
…足音が完全に遠のいたので、私は竜也達に話しかけた。
「もしもし……」
「大丈夫なのか?」
「うん……。」
…私は今起こった事と、疑問に思ってる事を話した。
…近くに誰もいない事を確信して…
…私はゆっくりドアを開けた。
「やっぱり…。」
…机とベッドがある誰かの部屋だ。
…私が監禁されたのは、この部屋と繋がっていた衣装部屋。
…部屋の外に繋がるドアは1つ。
…こっちは鍵がかかっていた。
…次に窓を見た。
…カーテンを開けて外を見る。
…高い。
…此処からは出られない。
…でも…
…この景色…知ってる…。
「…竜也…此処が何処だかわかった。」
…私は竜也に現在地を話した。
「…わかった……今、奏太が警察に連絡してる。……俺達もすぐ向かう。」
「うん…。それと、あの人が犯人だとしたら…今、外出中だと思う。あと30分くらいで戻って来るかも。」
…犯人が標的の人物を捕まえても、すぐに殺さない理由…
…アリバイ作り。
…この部屋に標的を監禁したとしても、日常でこの部屋に頻繁に出入りするのが不自然…とか。
…もっと詰めて言うと、犯人以外の人間は、この部屋が衣装部屋になってる事すら知らない…。
…つまり、普段は使われていない部屋。
□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□