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仮面α  作者: 霧咲 ユウ
16/22

疑心暗鬼。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


「あ、竜也…渚と話せた?」


待合室で待ってたら竜也が来た。


「ああ。」


竜也はポケットから自転車の鍵を出した。


「家まで送ってくわ。」


「うん!」








…病室に入って来た時から、何か様子がおかしいと思ってた。


その理由が判明したのは、私の家に近付いた頃。








…道中、ずっと黙ってた竜也が、自転車を止めて口を開いた。


「…なぁ涛生…。」


「…ん?」


「…お前さ…………」




…竜也が突然、私の肩を掴んだ。




「…痛い…………竜也?」




…彼は不安そうな顔で、真っ直ぐ私を見ていた。




…そして、言った。




「…お前…犯人…匿ったりしてねぇよな?」




「…えっ……⁈」




…一瞬、身体が硬直した。




「…何で…そんな事…聞くの?」




…そう尋ねた私の声は震えていた。


…狂也の事が頭を過ぎった。




「また画像メールが来た。」


竜也はそう言って、ケータイを出した。




「…これは…………」








…あの廃墟で…


狂也と一緒にいた時の…








「……涛生……俺……恐いんだよ……。」


竜也がまた、私の肩を掴んだ。








…さっきより強く…。








「……竜也……痛い…………」


「……お前が…突然…いなく…なるんじゃ…ないかっ…て…………」








…強く抱きしめる…








「……ずっと……不安…なんだよ……。」








…声が震えている。




…荒れた息。




…熱くなっていく身体。








…泣いていた。








…彼は『ずっと』って言った。


…いつからなんだろう…?


…ずっと溜まってた不安が、爆発した様。








…今までこんな彼を見た事がなかった。








「竜也…ごめんね。」


…私が言った後、彼の力が少し抜けた。


「…私は…今まで勝手な事をしてたね…。」


…顔を上げた時、竜也の顔は涙で濡れていた…。


「…俺の方こそ…急に…ごめん。」


竜也はそう言って、私から離れた。


「私は犯人を匿っていないよ。」








…これは嘘じゃない。


…狂也は犯人じゃないから。








…都合がいいかもしれないけど…。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


「送ってくれてありがと。」


私は家の前で自転車を降りた。


「さっきは悪かった……困らせて。」


私は首を降った。


「変なメールが来て、不安になったんだよね。」


渚の一件があったから、気持ちはわかる。


…私は続けた。


「心配してくれてありがとう。」


竜也の顔が赤くなった。


「渚と約束したからな。」


「約束…?」


「渚が退院するまでは…俺が涛生を…………」


「……?」


…言いかけてやめた。


「…じゃっ…じゃあな、帰るわ。」


「えっ……?」


凄い速さで走り去った。


「……何が言いたかったんだろう……?」








…これで気付かない私も相当鈍い。








「はい、そこのおバカさーん♪」


パシャ


「コラッ!勝手に撮るな‼」




…声の方を振り返ると奏太がいた。




「…つか、何でいるの?」


私はツッコミながら尋ねた。


「生存確認。」


ニヤ〜っとして言う。


「だ〜か〜ら、私が死ぬ訳ないでしょ!」


「…と言うのは冗談で。怪しい男を見かけて、追っかけて来たんだけど…この辺で見失っちまった。」


「…怪しい男?」


「ああ。暗かったからハッキリ見た訳じゃないんだけど……あの顔は仮面っぽかった。」


「…仮面⁈」


「…まだこの辺にいるかもしれない。」


奏太がケータイのライトで辺りを照らした。








…仮面の男。








…狂也なのか…








…それとも…








「とりあえず涛生は家に入ったら戸締りをしろ!」


「うん。」


「オレはもうチョット探してみる。」


奏太が自転車に乗った。


「あんまり深追いしない方が…。」


…渚の一件があったばかりだ。


「オレが女に見えるかい?」


…何だ、このドヤ顔…


「そういう問題じゃ……。」


「心配すんな♪…仮面ヤローを涛生ん家に近付けないだけだ。」


「奏太待って…………」








…行ってしまった。








…渚が襲われたのは女の子に間違えられたから…


…あの言動からして、奏太はそう思ってる。








…渚に届いたあの画像が罠だとしたら…


…私にはピンポイントで渚が狙われた様にしか思えない。








…だから竜也や奏太にだって、そういう事が起こる可能性が有り得る。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「…ん?」


家に入ろうとした時、私はそれに気付いた。


「…狂…也…?」


…奏太に見つからなかった事が奇跡だ。


…彼は物陰に隠れていた。


「……な……み…………」


…彼は私に寄りかかった。


「狂也…どうしたの⁈」


…意識がもうろうとしている様だった。








…とにかく家の中へ。








…電気を付けた時、私は言葉を失った。








「狂也…その傷…………」


服が裂け、切り傷があった。


…救急車…


咄嗟にケータイを取った。


…彼は私の手を止めた。


「でも…このままじゃ……」


彼は私の手を握ったまま、首を横に振った。








…私に出来る事といえば、傷の手当てぐらいだった。








…腕や手の平…


…胸やお腹に…








…まるで、刃物を持った誰かと争ったみたいだった。








…誰がこんな酷い事を…








「…涛生…」


彼の手が私の頬に触れた。


「…あ…。」


また…涙が……。


「…だめだよ…包帯が濡れちゃう…。」


それでも彼は私を離さなかった。








…本当は心地良かった。








…あの廃墟の時みたいに。








…あの廃墟…








…竜也に送られた画像…








「…………そうか。」


…我に返った。


「誰かに隠し撮りされたんだ。」








…奏太や渚に送られた画像もそうだとしたら…








…犯人は少なくともあの時から私や狂也を見てる事になる。








…私と狂也が会ったのは、こないだの雨の夜。




…彼は一度消え…


…私が車に跳ねられそうになったのを助けてくれた。




…その時の写真が奏太に送られた。




…その翌日の朝方、渚が襲われた。




…渚の元にも奏太と同じ画像が…




…恐らく、同じ画像が竜也にも。




…その夜には、また竜也の元に廃墟の画像が…




…竜也に家に送ってもらった後…


…奏太が現れて…


…仮面の男を探して消えた。




…彼は言ってた。


『暗かった』


…けど…


『仮面』




…ライトを持っていたのに…


…暗かった…




…奏太が去った後…


…傷だらけの狂也…








…まさか…








「…狂也…誰にやられたの?」








…自分で尋ねておいて、心臓が爆発しそうだった。








…彼は下を向いて首を横に振った。








…誰なのかわからないの?








…もし、闇に投じて狂也を襲えば…


…更に顔を隠すとかして変装していたら…








…誰かなんてわからない。








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