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仮面α  作者: 霧咲 ユウ
15/22

傷跡。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□




…警察署を出たら日没だった。








…孝明さんと電車に乗り、私は寄る所があると途中で降りた。








…病院。








…今朝、渚が搬送された病院だ。
















「渚!聞きたい事が…………⁉︎」


…勢いよく扉を開けてしまった。


「……なっ……涛生ちゃん⁉︎」


…驚いた顔の渚。


その顔は赤くなっていく…。


「ごっ…ゴメンっっ‼︎」


…着替え中だった。


「いいよ、ちょっとびっくりしたけど。」


渚は顔を赤くしながら平然を装った。


「それで…どうしたの?」








…聞きたい事があったんだけど…吹っ飛んでしまった。








…それくらいショックだったのかもしれない。







…渚の身体には事件の傷跡が生々しく残っていた。








…木に縛り付けられた時についた縄の跡…








…それが、首や身体に…








「涛生ちゃん…?」


渚が顔を覗かせた。




「……ひどいよ……こんな事……」








…むごい…。








…犯人のしている事は、えげつない。








…どんなに痛かっただろう…


…苦しかっただろう…








「…涛生ちゃん……」


渚の手が私の背中に……








…ひんやりした手…








…渚は私を抱きしめた。








「…僕はもう大丈夫だよ……だから、泣かないで……。」








…どうしようもなく…涙が止まらなかった。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□








「…少し落ち着いた…?」


「……ぅ…ん……。」




…あれから数十分…


私が落ち着くまで渚はそばにいてくれた。




「…驚かせちゃったよね……この傷跡…」


私は首を振った。


そもそも私が勝手に部屋に入ったんだ。


「……僕も自分で見て…びっくりした…。」


渚は袖をまくった。


しばらく自身の傷跡を眺めて言った。


「…襲われたのは、僕なんだね…。」








…渚はまるで、自分が襲われた事が信じられないみたいな感じだった。








…今朝の渚の言葉が頭をよぎった。








…それを思い出しながら、私は尋ねた。








「……渚は……誰が襲われたと思ったの?」








…渚はケータイを出した。


メールを開いて、画像を出した。








「昨日の夜中に…これが……。」








……やっぱり。








…予想通りだった。








…それは、奏太の所に送られたメールの画像と同じだった。








…奏太のメールは画像だけだったけど、渚が受け取ったメールには続きがあった。








…スクロールすると…








…地図が添付されていた。








…私が仮面の男に拐われたと思った渚は、私を助けようとして、地図の場所に向かった…。








「そこに行くと、誰もいなくて……。」








…その後、渚が捕まった…。








…今朝、渚が見つかった時に彼が私に言った言葉…


『涛生ちゃん…よかった…。』


途切れ途切れだけど、確かにそう言った。


あれは、私が無事だったから安心したんだね…。








…自分の事より私の事を…………








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□




「そういえば…涛生ちゃん、何か用事があって来たんだよね?」


ふと思い出したかのように渚が言った。


「そう…だったね……。」


渚に聞きたい事があった。


でも、あの身体を見て…言いにくくなった。








…渚の身体…








…犯人が捕まえた渚を着替えさせたのなら、当然女ではないと気付く筈。








…それでも犯人は、今までの被害者達のように装飾し、顔に仮面を着けた。








…違う事は、渚が男だった事と、生きていた事。








「涛生ちゃん…事件の事を聞きたいの?」


渚が察したように言った。


「……最初は……そうだった。」








…最初は犯人は誰だろうとか、事件そのものに興味があった。








…でも、渚が巻き込まれて…


…孝明さんの妹が被害者だってわかって…








…週刊誌を見て騒いでた時の自分が馬鹿みたいだった。








「今はね…チョット違う。」








…今は…


…誰も死んでほしくない。








「…私は…渚に生きててほしい。だからもう、1人で無茶はしないで……。」








……自分の事を棚に上げてるのはわかってる。


…あのメールを見た時、私も…いてもたってもいられなくなったから…。


…渚がどんな気持ちで家を飛び出したかわかるんだ。








「…うん。」








…渚は深く頷いた。








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


「…ん?」


…電話が鳴っていた。


「もしもし…。」


…電話は竜也だった。


「今、病院。…うん、渚も一緒だよ。」








…少し話して電話を切った。








「竜也も来るって。」


「そっか〜、良かった。」


内容を伝えると、渚は笑顔になった。


「……?」


渚のこの言葉の意味がわかったのは、もう少し後なんだ。








「失礼します。」


三條さんが入って来た。


「あ、こんばんは。」


「こんばんは、涛生さん。」


三條さんは荷物を置いて広げた。


そこから箱を1つ出して、渚に渡した。


「渚様、これを。」


「わぁ〜ありがとう!」


渚は箱から眼鏡を取り出した。




…襲われた時に失くなったんだね。




「よくお似合いですよ。」


「ふふっ♪」




…2人が微笑ましかった。




「そうそう…検査の結果、何処にも異常が無かったので、明日には退院していいそうです。」


「ホント?良かった〜!」


「良かったね、渚♪」


「うん!」








「こんばんは〜。」


竜也が病室に入って来た。


「お、早かったね。」


「渚に聞きたい事があって…」




…相当飛ばして来たのか、息が上がってた。




「涛生…何か飲みもん買って来てくれよ。」




…渚と2人で話したい…そう察した。




「わかった。」


「1階に売店がありましたよ。」


三條さんと部屋を出た。








…2人は何を話してたのかな?








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