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仮面α  作者: 霧咲 ユウ
11/22

廃墟。

□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


…その夜…


私は眠れなかった。








…奏太の言葉を思い出していた。








「…涛生に確かめておきたい事があるんだけどさ…。」


「…?」


「…その足の怪我…。」


「あぁ、これは昨日自転車で転んだんだよ。」


「……本当か?」


「本当だよ。」




…奏太の奴…たまに真面目な顔すると、ちょっと恐いんだよな。




「…ちょっとドジっちゃってさ。」


「…ドジならいいけどさ…何かヤバイ事に関わったりしてねぇよな?」


「してないよ。」


…即答した。




「そうか…。じゃあこれは誰かのイタズラなのか…。」


奏太はケータイを私に見せた。


「何…これ……?」


「バイト終わってケータイ見たら、それが届いてた。」




…謎のアドレスから届いたメール。


メールを開くと画像が添付されていた。


ぐったりした私を抱きかかえる仮面の男…。




奏太はすぐに私に電話したんだけど、留守電に繋がってしまったんだって。


それで私の家に向かった。


て、転んだ私と会ったのだと。




「私がピンピンしてる時点で、そのメールはイタズラだね。」


「…そうみたいだな。まっ…せいぜい気を付けたまえ(笑)」


「はははっ!美人しか狙われないから大丈夫だ♪」


「……あ、家この辺だっけ?」


「うん、すぐそこ。わざわざありがとね。」


「ほんじゃっ!」








…奏太に届いた画像…


昨日、車に跳ねられた時の物だった。








…誰が撮ったの?








…何が目的?








…狂也は私を助けてくれただけなのに…








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


…深夜…


私は家を抜け出した。




寝付けなくて色々考えていたら、思い出したんだ。




…子供の時に突然見えた廃墟の家。
















…小さい時…小学生位だったかな?




夏休みで、近所のプールに行こうとしてたんだ。




その通り道…


私より少し大きな男の子達がたくさんいて、何かやってた。




気になって近寄ろうとしていたら、私の後ろからお巡りさんが来て…


大声で怒鳴ると、男の子達は散り散りに逃げて行った。




お巡りさんは彼らを追いかけて消えた。




彼らがさっき集まってた場所に行ってみると、そこに男の子が1人…


…うずくまって、ぐったりしていた。




さっきの子達に酷い目に合わされたのだろうか…


服はボロボロ…身体は傷だらけ…。




私は彼に、大丈夫?って声をかけた。




彼は、小さく頷いて、あの廃墟の家に入って行った。




私は後を追った。








軋む床…


ボロボロの柱…








彼はボロボロの服を脱いで、それを水で濡らしていた。


そして身体を拭っていた。


私はカバンからタオルを出して、それで彼の身体に当てた。




…彼の顔は、仮面を付けていた…。


身体の傷とは別に、胸にハート型の痣があった。
















あの廃墟の家は、その後見えなくなった。


けど、昨日…あった気がする。


あの男の子はもしかすると…








□■□■□■□■□□■□■□■□■□□■□■□■□■□


…昨日、私が車に跳ねられた場所…。




いつも空き地だったスペースにあった。




…あの家が…。








…鍵はかかっていない。




私は入った。








足を踏み込む度に軋む床…。


ボロボロで腐った柱…。








…あの時のまま…


いや、あの時以上に劣化した家。








奥の部屋に着いた時、彼はいた。


金槌を振り上げて…


「やめてっ‼‼‼‼」


私は叫んだ。


彼の手は止まった。


「…そんな事しないで…。」


私はゆっくり近付いた。








…床に散乱した壊れた金槌やボロボロの刃物…。


傷一つない仮面…。








彼は仮面を壊せずにいた。








「…そんな危ない事しないで…。」


私は彼の手から凶器を抜き取った。








仮に仮面がそれで壊せたとしても、酷い怪我をするかもしれない。


最悪、死ぬかもしれない。


…私はその方が辛い。








…残酷な事を言ったのかもしれない。








それでも私は…








貴方に生きてて欲しい。








私は手を伸ばした。


彼の肩に触れた。


…抱きしめた。








彼は目を閉じた。


仮面の目から涙が落ちた。








…ずっと孤独だったんだろう。








…彼は声を殺して泣いていた。
















…私は彼が落ち着くまで傍にいた。
















「…ねぇ狂也……確かめたい事があるんだ。」








…彼は黙って頷いた。








…私は彼の服のボタンを外した。








「あった…」








同じ場所にあの痣が…。








「やっぱり、あの時の男の子なんだね…。」








…嬉しかった。








「…涛生…………ありがとう…………。」








彼の手がゆっくり上がった。








…私の肩に触れた。








そしてゆっくり抱き寄せた。








…彼の鼓動が聞こえた。
















…優しい声…








…大きな手…








…あったかい身体…








…この人は…


人を殺したりしないよ。








…車に跳ねられそうになった私を助けてくれた。








…………?
















…そうだ。








…思い出した。








…あの時…








「…腕…見せて。」


私は彼の袖を捲った。








…思った通り。








彼の腕や肘に新しい擦り傷があった。








「…私を助けてくれたんだね。」








…彼は私を抱えて地面に倒れた。








…私を庇って怪我をした。








「ありがとう……狂也。」








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