プリュイ
「何だか、寒くなってきたわね」
エンデュはジュノの腕を掴み、足を止めた。すると、ジュノは振り向いた。
彼は黙ってジュノの頭を軽く撫でると再び歩き出す。
「さっきのは、何?」
「..................防具を君に装着した。プリュイは異世界の境界だ。だからあの辺りは、気の変動で雨が降る。寒さを感じたのもその影響だろう」
「あなたはいいの?」
「あぁ。..................余り多くの力は使えない」
先頭でカゲンはすいすいと進んで行く。
彼はプリュイへ着いた。そこは、雨が降っている。
「最悪だなぁ」
雨の中、歩いて行くとトンネルのような通路を見つけた。覗くと......その道は上下左右全体が真っ白なのだが、ところどころグレーの斑が入りゆっくりとそれが動く奇妙な道だった。
「うぅー......これが人間界への通路なのか?」
プリュイにひっそりと存在する奇妙なトンネルに彼は気味悪がった。
「 えぇ、そうよ 」
カゲンは振り向くとジュノとエンデュの姿があった。
ジュノだけは、この雨の中全く濡れていない事を見て取れる。
「なんで、君だけ」
「彼がそうしてくれたから」
そう言いながらエンデュの方を見た。
「......自分はいいのか?」
「別に構わない」
彼は、再びトンネルに目を戻した。しかし中々足を踏み入れる勇気が出ない。
「............怖いのか?」
「怖い? そんなわけ無いだろ」
だが、彼は中々進めなかった。
「それでも戦いの神か。............俺が先に行こう」
彼は、片足を道の入口へ踏み出した。その振動で、道の模様はノワッと揺れ動く。そのまま、エンデュは先へと進んで行った......。
エンデュの姿は見えなくなった。
それを確認すると、ジュノも足を踏み入れ進んで行く。
「ちょっと、置いて行くなよ!」
そう言ってカゲンは、ジュノの元へ走って行き、ジュノの肩をギュッと握り締めながら一緒に歩いた。
「あなた、本当に戦いの神?」
怪しむ様に言った。
「決まってるだろ」
「その手、暑苦しいわ。離してちょうだい」
しかし、今も尚ジュノの肩を握り締めな
がら歩いていた。
しばらく進むと出口と思われる日差しが見えてきた......。
「......おっ」
彼は目を見開いた。そして、ようやくジュノの肩から手を離す。
そのまま歩き続けると......別世界へ出た。