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疑心の来客者

《居酒屋•ディオニューソス》


 人目を盗むように入ってきたのは、ナキアと、黒いフードを被りうつ向いた長髪の女神だった。


ナキアは、ひそひそと女神の耳元で何かを話しながら二階へと女神を誘導して上がって行く。


二階は、宿屋だ。


怪しげな二人の様子に、バッカスはグラスを磨いていた手を止め、眉間に皺を寄せた。


「“ねぇ、アスハ。なんだか怪しくない?”」


ダスラ、ナーサティアは声を揃えてアスハのしょうゆ顔を見た。


「......」


ただただ、あの二人の様子を怪しむアスハは言葉が出ない。


ダスラとナーサティアは、不安な顔を浮かべ、顔を見合わせた。




「私は、構わない。エンデュは、私を......忘れたの。もう、迷いはないわ」


そう言って、彼女はフードを外した。

綺麗な色白の顔が顕になる。


「っさすが、王家の娘は別格だな」


「ふっ」


彼女は、鼻で笑う。


「だが、本当にいいのか? ......あの帝国へ仕えるなら、もう、こちら側へは戻れなくなる。勿論、あの偉大なる母親とも、会えなくなる」


「そんなこと、私が気にするとでも思って?」


吐き捨てるようにそう言うと、彼女はベッドに深く座り込んだ。


「もう、エンデュのことは忘れたい。あの人......私を忘れただけではないわ。冷たくなった。

それに、ヴァイス帝国へ仕える覚悟はもう出来てるわ」


ベッドに横たわり、木製の天井を見詰めながら、彼女はそう言った。


 ナキアは、彼女から離れ背を向ける。


すると、だらしのない皺の癖が付いたジャケットの内にしまい込んでいた文庫本程のサイズのノート。彼はそれを、取り出す。


ノートに差し込んであった、細い黒のペンを利き手、左手に持つと、彼は雑に文字を書き込んだ。



《セレネ ✓》



「......翌朝、出発だ」


彼は、ノートをしまい込みながら、一言口にした。


そうして、片方の口角だけを徐ろに上げた。

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