答え
「そえいえば...今日はイブだったな」
俺は、1人イルミネーションが溢れた町を眺めながら、呟いた。
絵美とは先程わかれたばかりだ。
「好きだよ」
絵美のあの言葉には正直驚いた。
まさか、こんなストレートに返事が、返ってくるとは思っていなったかった。
だから俺はとっさに何もいえず、驚きの眼差しを向けた。
それから、絵美は何も語ろうとはせず
「この後用事があるから帰るね。
返事まってるからね!」
と、言って去って行った。
取り残された俺は、絵美の後ろ姿が完全に見えなくなるまでそこから動けずにいた。
家に帰ってみると、先程の絵美とのやりとりが全て夢の中の出来事の様に感じた。
だけど、メールを見れば絵美とのやりとりは確かに現実のものだとわかる。
返事の期限は後、1日・・・
実際断る理由なんてなかった。
今でも絵美の容姿はタイプだし、性格も変わって無かったら、好きな方だし。
でも・・・唯一、あの謎な頼み事だけは真意が読めず、答えを悩ます原因になっている。
どー考えても、この話はおいしすぎる・・・
俺にとってマイナスになる事が一つもないし、逆にいい事づくめといっても過言ではない。そこが、また怪しすぎる・・・
もしかして、100万円貰えるなんて大嘘だったり・・・?
新手の詐欺だったり・・・?
絵美がヤクザみたいなやつらと繋がっていて、脅されて・・・?
いや、もしかして絵美は実は重い病で後1年の命で、最後の期間をどーしても俺と過ごしたいが為に・・・?
考えれば考えるほど妄想は広がるが、ドンドンおかしな方にいってしまっているのは否めない。
もともとおかしな話なんだからしょうがないが。
「こーなったら佐野さんに相談するか」
佐野さんは、昔仕事で知り合ったちょっと変わったおじさんだ。因みに今はティッシュ配りをしている。
服と音楽の趣味が同じで仲良くなったはずだが、現在、佐野さんの趣味と俺の趣味はどれもバラバラだ。
だけど、なぜだか今も仲はよかった。
そして俺より12も年上なのに偉そうな感じも全くなく、だからといって頼りないわけでもないから、困った時の良き相談相手だ。
しかも、彼は絵美にもあったことがある。
プルルルルル〜
「あっ、佐野さん久しぶりです。ちょっと今いいですか?」
「今?大丈夫だけど、どうしたの?」
「あのですね実は・・・ 」
俺は最近絵美からメールがきたこと、それから謎の頼み事をされたことを全て話した。
「へぇ〜絵美ちゃん、そんな事いったんだ」
「そーなんですよ。ちょっと返事に悩んじゃって」
すると佐野さんは、さも当然かの様に
「えっ?何で悩むの?」
この、佐野さんの言葉に俺は驚いた。
「なんでって・・・普通悩みません?だって普通な頼み事じゃないんですよ?」
「だって、その頼み事してるのって、絵美ちゃんでしょ?だったら危ないこととかは絶対ないんじゃない?それが、違う人からの頼み事なら、話はまた別だけど」
そう言われた瞬間、なんか俺の中でストンって音がした気がした。
「俺、頼み事受ける事にします。佐野さんのおかげで、答えでました。ありがとうございます。」
「いやいや、全然いいよ。それに答えは、初めから決まってたんだろ?後押しができたみたいでよかったよ。明日クリスマスだし、これが俺からのクリスマスプレゼントだな」
佐野さんはさも、愉快といった感じで笑っている。
「ホント素敵なプレゼント貰っちゃって、ありがとうございます。」
だから俺もなんだか笑いがこみあげてきた。
不思議だが、なんだかホントにいいものが貰えた気がした。
佐野さんとの電話の後、俺は絵美にすぐ連絡しなかった。
理由はまだ25日じゃなかったから。
佐野さんのおかげで、俺も少し茶目っ気じみたことをしたくなったのかもしれない。
そして、時計の針が12をさした・・・
プルルルルル〜
「達也?どうしたの?」
「俺、受けるわ」
「え?」
「付き合うよ!って事!」
「ホントに?ホントにいいの?」
絵美は、俺からの返事に嬉しそうに問いかけてきた。
だから、俺は笑いながら言ってやった。
「うん、ホントにいいよ。俺からのクリスマスプレゼントだからな、これ」
すると絵美も笑いながら
「素敵なプレゼントありがとう」
って、言ってくれた。
こうして、俺と絵美の2度目の時間が始まった。