6
部屋で朝飯を食べ、午前6時にログインした。
ゲーム内は午前9時だ。
俺は昨日ナツカに教えてもらった所に来た。
「すいませーん、ナツカから聞いて来ましたー!」
「ちょっと待ってろ! 今手が離せねぇ!」
そう言われては待つしかないので待つことにする。
……待つこと10分。
「ナツカからの紹介か、なら名前は知ってるな。グランだ、それで、何の用で来た? あぁ、武器なら造らねぇぞ。気に入った奴なら別だがな」
「いや、造って貰いたいんじゃなくて造り方を教えて貰いたいんです! 自分で使う武器は自分で造りたいですから」
「ほう、おもしれぇ……てめぇ、武器は何を使うんだ? それによって教える奴がちげぇからな」
「おれは十文字槍を使う!」
そういって吏岳さんに餞別で貰った十文字槍を見せる。
「これはダスクの奴が作った槍じゃねぇか……ならダスクを紹介するしかねぇな!」
ガハハッ!とグランは豪快に笑ったあとダスク! こいつに鍛治を教えてやれ! お前の作った槍を持ってやがる!
どうやらこの槍を作った人を紹介してくれるらしい……
やってやるぜ……何日掛かるか分からねぇが最高の武器を造るためだ……!
ダスクと呼ばれる男が出てきた。
筋肉は相当ありいかつい顔で周りに常に威圧感を放っている。
と思っていたらいきなり表情が崩れる。
「俺がダスクってもんだ! お前俺が作った槍使ってくれてんのか!? 十文字槍なんだろ? って言うことはお前御影流槍術修得してんだなっ!? しっかり俺の技術叩き込んでやる!しっかり盗め!!」
まさかのマシンガントークに思わず動揺し後ずさる……
「あ、あぁそうだ。よろしくたのむ……」
挨拶をすると早速教えると言うことで作業場に連れていかれる……
今からか!気合い入れて盗むとするか!
そして早速工房の炉に連れていかれ、やり方を説明される。
「まずこの炉に火を起こす。燃料は木炭だ、木炭を使うと鉄が粘り強くなるからな。槍の穂先は粘りが強くないと直ぐに折れちまうから芯を粘り強く柔らかく、外を固く強靭な鉄を使う。ただミスリルやオリハルコンとかは木炭じゃなく精霊炭、これは精霊が魔力のみで作った燃料だ。実際は炭じゃねえ、燃えるなにかだ。まぁ、今は使わねぇがな、鍛治スキルが進化したら教えてやる。
そんで火の付け方だがここからもう鍛治は始まってんだ!
火の温度が高過ぎず低過ぎないちょうどいい温度にしろ、スキルがあれば勘がある程度教えてくれるがこれは体で覚えなきゃならねぇ。
まぁ、今回はその次も教えるから俺がつけるぞ」
ダスクが炉の近くにおいてある火打ち石を取り出し、火をつける……
近寄ると肌がじりじりと焼かれ、鼻の奥を刺激する臭いが漂い始める……
そして、直視すると大変なくらいの火力が上がり、火の燃え上がる音で他の音が聞こえなくなり、鼻の奥の刺激する臭いは炭のいい臭いに変わった。
この感じか……
火の変化に見とれているとダスクが突然こちらを向きゴーグルを渡してくる。
ん? 防護ゴーグル? あぁ、鍛治するときはこの火を直視しないといけないからか……
しかし防護ゴーグルをつけてもまだ眩しい……火を直視できるようになったのはいいが長時間眺めるのはちょっと、いやだ大分辛そうだ……
ダスクが叫ぶように声をだす。
「いいか!? この感じ覚えとけよ!
それと今から俺が使うのがたたら鍛治だ、教わるんじゃなく見て盗め!」
「わかった!」
全部盗んでやるよ!と気合いを入れて食い入るようにダスクの手元を凝視する。
まずは素材の鉄鉱石を炉に入れ、それを溶ける寸前まで暖めたら炉から取り出し、冷ます。
これで酸素と一酸化炭素が結合して鉄鉱石に含まれる酸素が還元される、らしい。
そうしたら鎚を持ち、金床の上に持っていき鉄鉱石を叩いて2つに折り合わせ、精鍛錬していく。
ダスクから教わる鍛治は鍛練と精錬を同時にやる。
だからこの作業は精鍛練と言われる。
そして、また炉に入れて取り出して叩くき、2つに折り合わせ、また炉に入れるという作業を3、4回繰り返すとダスクが満足したように息を吐き、水に突っ込むと大量の水蒸気が発生し、視界を包む……
そして鉄は板のような形になり、長さ60㎝、幅4~5、厚さ1㎝ほどの大きさになっていた。
これが全ての武器の大本になるインゴットらしい。
「十文字槍はこれを長さ30㎝と10㎝2本にの3つに分け、30㎝のものを穂に使い、10㎝もものを横やりに三日月のような形にしてつける。
そして、本来なら内側にのみ刃を付ける片刃なんだが御影流槍術で使う十文字槍は両刃にする。槍を横に一閃したときに敵を切り裂けるようにな」
なるほど、確かに御影流槍術の閃は切り裂くための技だな。
感心していると鎚を渡され、ダスクは「んじゃ明日までに俺が認めるランクのインゴットを作ってみろ! 明日の12時にまた来るからな!」といって去っていった。
マジで!? いきなり初心者を放置!?
おもしれえっやってやるよ!
さっきの光景は全部目に焼き付いてるぜ……!
と意気込んでいたが俺は鍛治を甘く見ていた……徹夜で作業すること半日、まず火の温度がダスクがやっていたような火にならない。
高過ぎて鉄鉱石が溶けて駄目になり、低すぎて全く溶けていなくて鎚で叩いたら手が痺れ……
漸くダスクの出していたような火になった……
この火はダスクが認めるインゴットが出来るまで消しちゃダメだ。
半日しかないがやっと、やっとスタートだ……
鉄鉱石を炉の中に突っ込み、溶ける寸前で金床に持っていき鎚で叩く。
まだ鎚を振り下ろすのに慣れていないから斜めに当たって変な音が出たり、手が痺れる事柄よくある。
苦労して叩いた鉄鉱石を折り合わせ炉の中に入れる。
一回のことなのに炉の熱と振り下ろしの繰り返しで体力が著しく奪われる……
その後2回それを繰り返し、3回目で段々板の形に近づいていた鉄をしっかりとした長方体に整形していく……息も絶え絶えになりながら水が入った桶に一気に突っ込む!
ダスクがやっていた時と同じような水蒸気が周りに広がる。
そして、1つ目の鉄のインゴットができた……
鉄のインゴット(低品質)
★☆☆☆☆☆☆☆☆☆
初心者が打った鉄のインゴット。
ここからさらに精錬して漸く使えるようになる。
……まぁ、初めてだからな!
後半日でせめて普通のインゴットを作りたい。
たぶん叩く場所は間違ってない、鍛治スキルで何となくわかるからな……いけないのは叩き方だろう。
打ち損じがよくあったからな……
さぁ、次に取りかかるか!
低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、普通………………………………………普通ッ!?
いよっしゃぁ!!
遂に、遂に普通の品質だ作れたッ!
あれから20個目にして漸くだ……!
普通の品質ができたがまだ完全じゃないし、ダスクが来る12時までまだ後四時間ある……まだまだ練習できるな。
低品質、低品質、低品質、低品質、低品質、普通、低品質、普通、低品質、低品質、低品質、普通。
段々どうすれば品質の良いインゴットが作れるか分かってきた。
1つは鎚の芯で鉄をとらえること。
これがまず大前提になる。
もう1つはリズムだ、リズムよく叩き続けると普通が良く出る気がする。
最後にこれは勘だが火から出すタイミング、そして、水につけるタイミングだ。
次からはこれを意識してまず芯で叩くことからやってみる。
鉄が温められ赤みを帯びていく……そして、赤から橙色に代わり、白っぽい色が混じり始めたところで火から取り出す。
まずは深呼吸をする。
ここからだ……慎重に腕を振り上げぶれないように力を適度に込めて、振り下ろす!
カンッ!
という澄んだ音が工房に響き渡る。
リズムも意識して勘を頼りに鉄鉱石を叩いていく……
カンッカンッカンッ!
カンッカンッカンッ!
聞き心地の良いリズムで打たれる鉄の音が建物中に響き渡る……
そして、2つに折り合わせ、再び叩いていく。
音を聞いて集まってきた職人がシーカーの作業部屋を覗いており、ダスクも目を瞑り出来上がりを待っているがシーカーは集中していて全く気づいていない……
カンッカンッカンッカンッ!
打っては炉に入れを繰り返していく打ちに鉄は段々板の形に変わっていく……
そして、4回目の精鍛練が終わり炉に入れる。
そして、充分に熱くなった鉄を取り出して少し待つ……
……白く輝いていた鉄がゆっくり少しずつ空中で冷めて、橙色になったところで一気に水に沈める!
水蒸気が消えるとそれは鈍い光沢と威圧感と微少に放つ鉄のインゴットがあった……
「どれ、見せてみろ」
「うおっ!?」
ダスクに話しかけられて初めて作業部屋の周りにたくさんの人がいることに気づく。
まだ鍛治の興奮が治まらないがダスクに鉄のインゴットを渡す、と共に俺もインゴットのできを確認する。
鉄のインゴット(超高品質)
★★★★★☆☆☆☆☆
とても品質が高い鉄のインゴット。
これで作った武器はボーナス補正または一緒に使う素材により追加効果が発生する。
うおお! すげえのが出来た!
高品質くらいが出来たとは思ってたが超がついてるじゃん!
相当な出来にダスクも唸ってるぜ。
「カカッ! このレベルのインゴットが作れるようになったなら次の作業に行けるな!」
それから2日……俺は灰になっていた……
まずやることすべて見せられ、そのあと自分で作ったインゴットを使って穂先の形にしてみろと言われた。
なんて放置教育……
穂先と柄の接合方法は挿し込み式で、強度があるが作るのが難しいらしい。
まずやれと言われたのはインゴットから十文字槍の穂先への整形、焼き入れだ。
穂先への整形は比較的簡単に出来た……
鍛治スキルの勘でどこを打ってそして横槍をどうつければいいのかは案外すぐ出来た。
だが問題は焼き入れだ。
焼き入れのタイミングを間違えると穂の形が歪み、ランクが最低になる……
それに苦戦してうまくできるようになるのに低品質のインゴットをすべて使ってしまった。
まぁ、次からは失敗することはないだろう。
ダスクにも誉められた。
ここまで速い奴は珍しいらしい。
そして次に教えるのは素材を自分でとってきてからだといわれた。
その素材は西の森のボスモンスターの素材かアインの森のボスモンスターの素材のどちらかだ。
まぁ、俺は西の森に行こうと思ってるが……
まずは鍛治スキルがどれだけ上がったか確認するか!
「……なんだっと!?」
そしてステータスを確認して俺は驚く……
Name シーカー
年齢 20
種族 ヒューマン Lv31
職業(種族Lvが30Lvで解放)未選択
HP 132/132
MP 132/132
Str 44
Vit 44
Int 44
Agi 44
Dex 44
BP80
固有スキル
状態異常耐性(微)
スキル
unique:御影流槍術Lv4 ↑up
rare:健眼Lv7 new!↑up
鍛治Lv14↑up 生産者の心得Lv12↑up 土魔法Lv5 気配察知Lv6 気功法Lv3 空き4
アーツ
壱之型:柊 無駄の無い突き クリティカルでダメージ2倍
弐之型:閃 横への一閃 敵に裂傷を付与(微)
参之型:霞 防御貫通攻撃 同時に他のアーツを発動可能
肆之型:桜 気と槍の無数の突き 敵に麻痺を付与(微)
伍之型:砕 石突きでの打撃 敵に骨折、気絶を付与(微)
終槍:赤椿 柊と桜の複合技 敵に出血を付与(微) クリティカルでダメージを1.8倍
健眼:rareスキル。Lvが上がれば上がるほど目に対する刺激に強くなる。
遠くでも暗くても明るくても周りが良く見える。
なんだこれ!
知らない内にレベル上がって職業欄が増えてるわ、スキル増えてるわ、そのスキルがレアスキルだわ、スキルレベルの上がりかたがおかしいやら……
いかん、落ち着こう……!
まず種族レベルこれはたぶん鍛冶をしてたから上がったんだろう……
そして職業、これもレベルにともなって出てきたみたいだ。
職業を決めるとその職業によって違うがステータスが上昇するらしい。
さらに健眼、これは目の強化に関するスキルの上位版に近い。鷹の目と暗視とあと光量調節が混ざった感じのスキルだ。
鍛治やってないと上がらなさそうだし、長い間刺激受け続けないといけないみたいでとれる人は限られそうだな……
そしてスキルレベル!
種族レベルはまぁ多少上がり易くなってるらしいからいいとして、スキルレベルがおかしいだろ!
どれだけ酷使したんだよ俺は……!
はぁ、もういいや、気にしたら敗けだな!
ステ振りしよう……
Name シーカー
年齢 20
種族 ヒューマン Lv31
職業(種族Lvが30Lvで解放) 鍛冶師
()内は職業補正値、HP、MPには反映されない
HP 180/180
MP 180/180
Str 60 (+10)
Vit 60
Int 60
Agi 60
Dex 60 (+10)
BP0
固有スキル
状態異常耐性(微)
スキル
unique:御影流槍術Lv4 ↑up
rare:健眼Lv7 new!↑up
鍛治Lv14↑up 生産者の心得Lv12↑up 土魔法Lv5 気配察知Lv6 気功法Lv3 空き4
アーツ
壱之型:柊 無駄の無い突き クリティカルでダメージ2倍
弐之型:閃 横への一閃 敵に裂傷を付与(微)
参之型:霞 防御貫通攻撃 同時に他のアーツを発動可能
肆之型:桜 気と槍の無数の突き 敵に麻痺を付与(微)
伍之型:砕 石突きでの打撃 敵に骨折、気絶を付与(微)
終槍:赤椿 柊と桜の複合技 敵に出血を付与(微) クリティカルでダメージを1.8倍
となった。