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自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
怪獣グラビトンとのバトルに向けた準備パートです。
今月中に一章は完結する予定です。・・・あくまで予定。
零時抜刀隊の二人に断りを入れ、サルベージ組合のテント上空で《マジックロープ》を斧で切断する。大助の乗った大型二輪車は着地を果たした。
テントからは悠一の父親――サルベージ組合の今回の件の責任者だ――が飛び出してくる。
「保志さん! 大丈夫ですか⁉」
ヘルメットをゆっくりと脱いで悠一の父親の方を向く。
「心配しなくても平気だから……この件から降りるなんて言わないよ」
「そういうことではなくてですね――」
大助も悠一の父親が利己的な人間ではないとわかってはいた。
(感じ悪いですよ、大助)
(いいんだ。悠一パパはそうじゃなくても、その周りの人間がオレたちを便利に使ってやろうとするかもしれない)
(何だかんだ言ってもやっぱり機械人間ですよ、あなたは)
(知っている)
意識会話の中でジュニに怒られる。
「怪獣と交戦になった。傷は負わせたが、もう治っているかもしれない」
「……どういうことですか?」
悠一の父親が手に持っていたハンカチで額の汗を拭いた。
「あれは守るべき海の生き物ではなく、元未確認生物の類だ」
元未確認生物とは世界規模の災害が起こった後、異能力者と共に確認された生き物のことだ。ハイファンタジー小説やSF映画に登場するような、災害前の常識では考えられない生物の総称である。
「やはりそうでしたか……。こちらからもあの怪獣が海中から飛び上がる姿を確認できました。写真からもしやと考えていたのですが……」
「まずは一度整理をしません?」
ヘリコプターを邪魔にならない場所に降ろした香菜がやってきて言った。
彼女は対オカルト用の政府組織零時抜刀隊から今回の件で派遣された職員の一人だ。
「その後作戦を立てて、保志さんたちの装備を整えてからまた挑みましょう」
「せっかくの大物なのにまたヘリで待機かよー」
不満を口に出したのは同じく零時抜刀隊のアポロニア、愛称アポロである。
彼女は香菜の先輩にあたり、普段はアタッカーとして仕事をしているしい。
「海の中じゃ役立たずでしょう」
「もー! どうして海中戦ばかりなのよー!」
「まぁまぁお二人とも。ひとまずテントにご案内しますのでそこで休んでください。保志さんもどうぞ」
一行はテントの中で悠一の父親に怪獣との接触した時について話す。
「そんなに強い海獣があの海にいるんですか……。こんなことを聞かれると気分を害するかもしれませんが……、勝てる策なんてあるんですか?」
「大丈夫よー、こっちも大助が軽装備だったんでしょう? それに怪獣と戦うには昔からある程度セオリーが決まっているのよ」
「……先輩、それ映画の話ですよね」
「他に参考にできそうな作戦ってある?」
『こちらは構いませんよ。そのための機械人間ですから』
「ああ」
アポロの言葉にジュニと大助が同意する。
『それでどの作品を参考にするんですか?』
「ここはやっぱり王道でしょう」
アポロが不敵な笑みを浮かべた。
それぞれ準備のために一時解散となった。
大助は大型二輪車の整備と武装の追加、海水でべとべとになった身体を洗うため粗大ごみの島にあるガレージに戻っていた。
『先ほどはああ言いましたけど、大助は今度の作戦にどう思ってますか?』
ジュニがシャワーを浴びる大助のカーテン越しに問いかける。
「海中じゃ勝手が違う……丘なら絶対兵器をぶっ放せば終わりだけど、今回はそうはいかないからなあ。海中での戦闘も本格的なのは今回が初めてだし。正直、やってみないとわからない」
『私たちの基本業務は雑用でしたものねぇ』
実践の経験も多少はある大助たちだったが、本社がまだ健在だったころはバイク便の代行や家庭の軒先に出た元未確認生物の駆除が主な任務だった。
『悠一パパの依頼についてはどうしますか?』
「その場になってみないとわからないよ」
作戦の打ち合わせが終わると悠一の父親が言い難そうに口を開いた。
「それでこちらの勝手な申し出なのですが……できればあまり傷を付けないで怪獣を駆除して欲しいのです」
「は、はぁ⁉ 何を言っているのかわかってますか⁉ ただでさえこちらは不利な環境で戦わなければいけないんですよ⁉」
勇む香菜をアポロが肩に手を置いて押しとどめる。
「まぁまぁ。まずは相手の話を最後まで聞くことが大切だよ」
「でも先輩……」
香菜が大助たちを振り返る。
「まあ、聞くだけなら」
『何やら事情もあるようですし』
悠一の父親が頭を下げる。
「ありがとうございます」
悠一の父親の話はこうだった。
過去、島は蜜柑やうどんで観光客に名を馳せていたらしいが、沈んでしまった今はかつてあった街並みの廃墟しか見世物がない。
海に沈んだ島の調査依頼や海底廃墟の物珍しさも薄くなり、漁業はともかく観光業の需要が年々低下している。そこに現れたのが今回の大型元未確認生物――つまり怪獣だ。
いつの時代も恐竜は男心をくすぐる浪漫の塊、それが怪獣となればなおさらだ。
サルベージ組合は怪獣の骨格標本を街の名物にして観光客を呼び込もうと計画している……らしい。
『その様子だと“できれば”ではなく、“絶対に”と言われてきたんじゃないですか?』
悠一の父親は力なく笑った。
「お恥ずかしい限りです。私も海面から飛び出す怪獣を見るまではそう思っていました。でもあれを見せられたらとても皆様に強要はできません。そもそも今の若い子は怪獣になんて興味も示さないでしょう。土台、無理な話だったんです。それに……」
「それに?」
アポロが続きを促す。
「それにあの時、思ってしまったんです。生きる姿は美しい、と。年々この街も人が離れていきます。でもあの怪獣を見世物にするのは忍びないのです……」
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。