3
自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
黄金週間中に溜めたものを見直しつつ投稿する予定です。
悠一の父親は大助への伝令を頼んだ息子を小学校へ送り返すと大助と零時抜刀隊の二人をサルベージ組合の会議室へと案内した。
「どうして小学生がいたの?」
「保志さんと面識があったからです」
金髪の女性が聞くと悠一の父親が答えた。
悠一の父は息子が機械人間と知り合いというだけで今回の件を担当させられた、いわば貧乏くじである。
「保志さんって機械人間の人ですか?」
おっとりした口調でもう一人の零時抜刀隊の女性が尋ねる。
こちらはまだ十代に見える。その割には発育が良く、ノンフレームの眼鏡も似合っていた。
「自己紹介が互いに必要ですね……」
悠一の父親が大助を見る。大助はその視線に促されて自己紹介をした。
「オレは玖珂財閥の代行者だ。保志大助と名乗っている」
『私は彼のサポートAIのジュニです』
机に置かれたヘルメットからジュニのホログラフが映され一礼をする。
「はぇー。玖珂財閥の生き残りがここにもいたんですね」
おっとりした方が大助の自己紹介を聞いて言った。
『機械人間のどなたかとお知り合いですか?』
「ええ。師走事件の後から兎槍たまきさんが仲間になったわ」
ジュニの質問に答えたのは金髪ショートのほうだった。
(たまきか……。あいつは確か玖珂お嬢さん直属の護衛だったよな)
(そうですね。次期トップが生き残っているのに私たちに連絡がこないとなると、死亡扱いにされたのでしょうか)
(それはそれで楽でいいけど)
金髪ショートが自己紹介を始めたので二人は意識会話を打ち切った。
「私は零時抜刀隊の悠木アポロニア。こっちは同僚の花江香菜。よろしく!」
「よろしくお願いします」
零時抜刀隊は師走事件で軍が壊滅し、政府機関の生き残りが設立した暫定政府と事件の被害が少なかった警察機構が荒事専門として立ち上げた宮内庁直轄の組織だ。
「その二人がいるならオレは帰っていいのか?」
席を立つ大助を悠一の父親が引き止めた。
「待ってください。今回は正直どれくらいの戦力が必要になるかわからないんです。専門家として意見をぜひお聞ききしたく……。もちろんあなた達三人が協力するのなら三人分の報酬も出します」
「そう言われてもオレは海に怪獣が出たとしか聞いてないんだけどなあ」
「それは私たちも同じです。怪獣が出た、助けてくれとしか聞いていません」
香菜の言葉を聞いてジュニが意外そうな顔をした。
『それだけで抜刀隊は動くものなのですか?』
「流石にそれだけじゃこんな田舎まで航空機を飛ばして駆けつけないわよ。要請と同時に千里眼の巫女様のお告げが降りたの」
(宮内庁直轄だけあって異能力者も多いようですね)
(まあ今の俺たちには関係ないだろ)
悠一の父親が今回の依頼について説明を始めた。
「私たちもよくわかっていないのです。ただ僚機カメラが捉えた写真だけがありまして……、今お見せしますね」
悠一の父親が会議室の明かりを消し、準備してあったのであろうプロジェクターのスイッチを押す。写真が一枚ずつ白い壁に映し出された。
一枚目は画面全体に撮られたトカゲのような鱗の写真。
二枚目は暗くて判別できないが、おそらく尾を写したであろう写真。尾は真っ直ぐに伸びている。
三枚目は海に沈んだビル群の間を泳ぐ巨大な影。影は鯨のようにも見えるが先ほどの尾をみるかぎり哺乳類ではないだろう。
四枚目は被写体の一部としかわからない写真。この写真から大助が得られる情報はなかった。
五枚目はビルの倒壊によって土煙が舞っている写真。
写真を見せ終え、悠一の父親が会議室の明かりをつける。
「以上が現在ある全ての情報です。皆さんをお呼びしたのはこの巨大生物の対処をお願いしたいのです」
「うーん。それは難しいかもしれません」
香菜が下唇に指をあてる。
「私たちも地上でなら対処できますが、海中となると。乗ってきたヘリも海には潜れませんですし」
「となると私たちは援護班になるわね」
「先輩?」
「だってそうでしょ? 目の前に困りごとがあって私が殴りに行けないのだから」
「でも組織の体面というものが――」
悠一の父親は香菜に最後まで言わせなかった。電光石火の勢いでアポロニアの手を取る。
「いやあ! ありがとうございます! お若くてお綺麗なのにすごいですねぇ本当に感謝します!」
(悠一の父親も大変だな)
(それよりいいんですか? 話しの流れからすると私たちがアタッカーをさせられますよ)
(何だと⁉)
大助はまだ腕を振っている悠一の父親に声をかけた。
「どうかしたんですか、大助さん」
「オレはまだ引き受けるとは言ってない」
「それはダメよ!」
アポロニアが大助に詰め寄る。
(なんだ? 機械人間に道徳をとくつもりか?)
「何故ならば! あなたの仕事が私達の手柄になるんですから!」
「……」
大助とジュニは目の前の金髪が何を言っているのか少し考えた――が意図を掴めなかった。
香菜も同様らしく、この場を代表して彼女が聞くことになった。
「先輩、つまりどういうことですか?」
「香菜ちゃん、考えても見て。野良の機械人間と協力して事件を解決したとあっては抜刀隊の体面に関わるわ」
「ええ。それは私もさっき言いました」
「だけど海の中に入れるのは彼らだけよね?」
「そうですね。機械人間の大型二輪車なら戦闘行為も可能だと聞いています」
「この案件を解決すればボーナスもを出すと長官も確約してくれたわ! なら彼には手伝ってもらうけど、報告書には一切彼の存在を書き残さなければいいのよ!」
「おおっ! 流石先輩、彼氏とのデートで一円単位まで割り勘して振られたのは伊達じゃないですね!」
「褒めるな、褒めるな」
大助は笑い合う目の前の二人組を無視して悠一の父親に向き直る。
「もちろん大助さんたちにも報酬は用意していますよ。日常生活品の一か月分です」
「よし、引き受けた」
即答だった。
『大助……』
ホログラフのジュネがうなだれた。出会ったばかりの大助を知っている身となれば今の大助に肩を落とすのも無理はない。
こうして即席の怪獣討伐チームが結成されることとなった。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。