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自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
黄金週間前になんとか投稿。
大助がサルベージ組合の本部に着くと悠一が意識を失っていた。
『刺激が強かったみたいですね』
ジュニの音声が意識会話機能により大助の頭に響く。
「取りあえず背負って連れていくか。中にいる親父さんに引き取ってもらおう」
悠一の父親は街のサルベージ組合で働く会計士だった。
数十年前、世界中の空が橙色に染まった日、世界の歯車は外れてしまった。
ありとあらゆる災害が起こった。その影響で沿岸部の都市は海に沈み、異能力者と怪物が世界中で闊歩するようになった。
サルベージ組合はその名の通り、沈んでしまった都市から荷の引き上げ、研究者や観光客に海中遊泳を提供する、この街の業者が集まってできた組合だ。
組合の入り口から出てくる綺麗な七三分けの男は悠一の父親だ。大助は彼の姿を認めると二輪車から降り、ヘルメットを外した。
「大きな音に気づいた職員が保志さんのことを知らせてくれて。いや、本当に来てくださってありがとうございます」
「オレはただ友人の話が要領を得ないから聞きに来ただけだ」
「あの怪獣を退治して下さるのでは⁉」
玖珂財閥の機械人間である大助は一応、本社を襲撃した犯人を警戒して派手な活動は控えていた。
もし街の住民が師走事件の首謀者たちに大助のことを密告していれば彼はあの島にいられなかっただろう。
だが、街の住民も機械人間と首謀者たちがぶつかれば街にも被害が及ぶことは想像できたし、もし大助が首謀者たちに勝ってしまった場合、自分を売った街の住人に対して機械人間が何をするのか不明なのも大きかった。
師走事件では役場を焼かれただけで大した被害もなく、子供達も全員無事だったので街としてはことを荒立てたくないのだ。
大助は悠一の父親に息子を押しつけ、指を立てて言った。
「それは報酬しだいだ」
黙り込む悠一の父親。
「なにがお望みですか……?」
ジュニの声が意識内で響いた。
『大助、チャンスですよ!』
大助とジュニは音を発しない、意識会話をする。意識会話の利点はタイムラグなしで機械人間とサポートAIの意思相通をはかれるところだ。
「わかってる。問題はどこまで要求するか、だ」
『こういう場合の定石は最初に無茶な要求を突きつけることです』
「どういうことだ?」
『そうすれば本来の目的を要求した時、相手は「初めの無茶ぶりよりかマシか~。あーあ、しょうがないや」と心境が動くのです』
「ジュニもこの一年でずいぶんキャラクタが変わったね……」
『? そうでしょうか?』
二人は一秒にも満たない意識会話をやめると大助は悠一の父親に一歩迫った。
「オレの要求は――」
『ちょっと待ったっー‼』
スピーカーで拡大された音声と共に突風が吹き荒れる。悠一の父親のヅラが飛んだ。
頭上には鋼鉄の腹が迫っていた。
「なんで冷蔵庫が飛んでいるんだ⁉」
『よく見てください大助! 二つのプロペラが見えるでしょう! あれは空飛ぶエクレアです!』
ヘルこぷたーから影が一つ飛び出す。
「とぉう‼」
何者かが宙に浮いたヘリコプターから飛び降りた。衝撃を上手く分散させ着地する。
ヘリコプターから飛び降りたのは金髪のショートカットの女性だった。二十代前半に見えた。蒼い瞳が大きく、快活なイメージを受ける。
大助のような特殊スーツの上から軍のような濃い青のショートジャケットを羽織っており、腰には長身の二本の十手、安全靴を装備している。頭にはゴツゴツしたゴーグルをひっかけていた。
『せんぱーい! 危ないですよぅー』
飛行艇にはもう一人いたのかスピーカーから音声が聞えた。
「ほら、危ないからさがって、さがって」
ショートカットの女性に誘導されるまま大助たちはヘリコプターの着陸のため移動する。ヘリコプターは組合の入り口前に着陸を成功させた。
飛行艇にしては可愛らしいペイントをされたヘリコプターだった。
機体は淡いブルーとオレンジのラインで塗装され、横にはおそらくこの機体の所有組織のロゴであろうものがペイントされていた。
悠一の父親が抱えていた息子を降ろし、飛ばされたヅラを拾う。そして確かな足取りでヘリコプターから飛び降りた女性に近づいた。
「すみません。よろしいですか?」
「安心してっ! 私たち宮内庁直轄の零時抜刀隊が来たからにはもう安心よ‼」
悠一の父親はヅラを被り直すと有無を言わせない迫力で言う。
「ここに着陸されると入口を塞いで迷惑なので移動をお願いしたいのですが」
プロペラの回転が止まり、あたりには静寂が響いた。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。