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自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
最終章になります。 今月完結予定!
今回は導入パートです。
週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。
以前より投稿ペースは落としています。
(・・・最近はこっちを完結させてから応募用に取りかかる方がいいんじゃないかと思い始めた。でも時間が)
七月も半ば、今日も溶けそうな暑さだった。廃棄処理島のガレージ内も例外ではない。
人間の身体から機械人間へと戻った保志大助は友人の小学生にガレージの掃除を手伝わせていた。
「あのさ大兄ぃ」
悠一は滝のように流れる汗を対策するため首にタオルを巻いて無音掃除機を動かしていた。
「なんだ」
「なんか引越しの準備のように見えるんだけど」
大助は膨れ上がったゴミ袋を結ぼうと悪戦苦闘している。
『まだ言ってなかったんですか?』
「……みたいだな。オレとジュニは三日後には首都……まだ暫定の政府だけど、そこに行くことになる。というか行ったら多分ここには戻らない」
「初耳だよっ⁉」
大助の友人である悠一が驚いて無音掃除機を手放した。
「どうしてもっと早く言ってくれなかったの⁉」
「それは……」
辛気臭いのが苦手だから、と続けようとして、
「まだマギカPSYでボクの勝ち分のアイスを奢って貰ってないのに!」
大助は口を閉じた。
『大助、賭けはいけませんよ……。そもそもどうやって賭けをしたんですか。できないように設定されていたはずですが』
「オレにもわからん。ジュニだって逸脱した行動ができるようになったことを上手く説明できないだろ」
『私が?』
「……こっそり一般回線に割り込んでネットを楽しんでるだろ」
『さ、さぁ? なんのことでしょうか?』
誤魔化すようにスピーカーから口笛の音が聞こえる。本来サポートAIが機械人間に対して嘘をつくことできないはずだった。
「これは二人とも戻ったら処分されるかもな」
『まぁ、しょうがないですね』
「ま、待ってよ」
悠一が言葉を挟む。
「処分って殺されることでしょ? 二人はいいの? それで」
『生き物なら抵抗しますけど私たちは工業製品ですし』
「……おかしいとは思わないの」
「だけど逆らったらどのみち処分される。そういう法律を作ったのは人間だ。どうしても嫌ならクリーミィ・フレンズに駆け込めば保護をしてくれるらしいけど」
「大兄ぃはイヤじゃないの?」
「そりゃあ嫌だけど逃げるってことは追われるということでもある。永遠に逃げ切ることなんて不可能だよ」
悠一は「試さなきゃわからないじゃないか」と反論しようとしたが所詮は素人の考えなので言葉を止めた。
「……なら掃除が終わったらちゃんとアイス奢ってよね」
「安いやつな」
「うん。そこは期待してない」
「……」
『大助、落ち込むのは後にして掃除を早く終わらせてください』
残り少ない日常は緩やかに過ぎていった。
空が橙に染まり、一番星が輝きだす。
悠一を家まで送り、身体が人間だったときに買い込んだ食品を処分する。
とはいえ捨てるのはもったいないので適当に料理する。今晩の献立はだし巻き玉子にほうれん草のおひたし、白みその味噌汁、豚のしょうが焼きと麦ご飯だ。
「順調にいけば食料もいい具合に使いきれそうだ」
『余ったら悠一くんに分けるという手もあったでしょう』
「本社組と合流すれば料理なんてする機会もなくなるから色々作ってみたかったんだ」
『そう言うわりには家庭的な料理ばかりですよね』
「凝った料理もおいしいけど、家庭料理の方が食べ飽きないし」
『そういうものですか』
「そういうものらしいよ」
大助は食事を食べ終えると紙皿と使い捨て箸をゴミ箱に放った。
「皿を閉まうの早かったかな」
『パンの懸賞で当たったお皿なんですからここに置いていったらどうです?』
「せっかく当たったのに?」
『……本社組に合流してやっていけるのか、別の意味で不安になってきました』
いつもなら呆れた音声のジュニだったが今日はどことなく楽しげな声色だった。
何だかんだ言っても大助が本社組に合流すると決めたことが嬉しいのだ。
「そういえばあれについて何か情報はあった?」
『湾岸の工場地帯のことですね。破棄は災害の前からされていたようで、現在は停止中です』
「設備と土地の持ち主も不明か」
『それは調べがつきました。やはりというか玖賀財閥です』
大助は先の一件でミスター・ポンドとその娘を報告しなかった代わりに他の手柄を持って帰る必要があった。でなければ本部組と合流しても雑用係りに戻るだけである。
そこで目を付けたのが魔法少女とのレース中に発見した工場だった。
玖賀財閥の廃棄処理島だけがこの街にあるのも不自然だったので工場もそうであると可能性の一つとしては考慮していた。
といっても大助も無人だという先入観があったので「調べて何かあれば儲けもの」くらいの気持であった。
「やっぱり直接行って確かめるしかないか」
『それはいいんですけど……完全装備はやりすぎでは』
工作台の上には二メートルほどの大型ハルバードと折り畳み式のハルバード、さらに手投げ用の斧が数個、並べられている。
昼間に悠一に掃除を手伝ってもらったのは装備品を整理するためでもあった。そのおかげもあって怪獣グラビトンとの戦いで壊れた武器の予備を発見することができた。
ただボディパーツのスペアを製造する時間はなく、身体の左側パーツを破壊されたら半月はそのままの状態でいるしかない。首都行きを控えているのでそれは避けたい事態だ。
「確かに手投げ用の斧は装備できるのが二つまでだからな。心細い」
『いえ、そういうことではんなくて。視察に行くとは言っても無人の工場でしょう。そこまでの装備が必要ですか』
チッチッチッと大助が指を振る。
「前回、前々回を思い出しても見ろ。偵察だ、様子見だと言って逃げかえるしかできなかったじゃないか」
『でも車体が重くなりますし、バランスも悪くなるんですよねぇ』
「そこはテクニックと経験で補うよ」
『戦闘中、細かい微調整はほぼ私が行っていることについてどう思ってます?』
大助は笑って誤魔化し、ジュニの本体であるプログラムボールを持ってガレージを出た。
『どこへ行くんです?』
「最後くらいはふかふかの布団で寝ようと思ってね。宿泊用のホテルがあっただろ」
『明日の洗濯物が増えますよ。まぁ、私もたまにはガレージ以外の場所でスタンバイ状態になるのは悪くないですけど』
「そうこなくっちゃ」
そして翌日の朝。
早朝と言っても少し肌寒い気温だが大助は気にはせず装備の最終確認を済ませる。
大助は特殊スーツを着用し、背中に大型ハルバード、左太もものベルトに折り畳み式、左右に手投げ用の斧を取り付けている。
大型二輪車の外付け装備は空中機雷の《ダンデライオン》と右側面に使い捨てミサイルポッド、反対に妨害電波発生装置、後方にビームシールドの三つだ。
大助はプログラムボールを大型二輪車にセットし、ヘルメットを被って発進させた。
街を囲う壁を出て海沿いの朽ちた高速道路を走ると海に突き出た工業地帯が見えてくる。
大助は高速道路を降り、工場地帯に向けてハンドルをきった。
羽虫型の偵察ロボットが狂人の王に侵入者を報せる。
パイプが入り組み、汚水が流れる深い闇の中でゼクスはスタンバイ状態から回復した。
アンドロイド(ゼクス)に心というものがあれば下水道は唯一の“安心できる場所”だった。
ゼクスはパイプベッドから降り、くるぶし程の高さのある汚水の中を進む。梯子を昇り寝床の真上に位置するガレージの前に出た。
朝日がゼクスの姿を照らす。
ゼクスはかつてのような姿ではない。
一年前に破損したパーツの変わりに新たなものを付け、機械人間の特殊スーツを着ている。
ゼクスは《刃チェーンソーの大剣》を背中に装備し、大型二輪車のエンジンをかける。ヘルメットとAIプログラムボールはない。
ゼクサは精神感応で四体の守護機械に待機命令を出すと地面を蹴った。
『反応感知! 予測はしていましたが相手は機械人間の装備を持っています! 有機物反応は微弱! 相手も人間ではありません!』
「すれ違うぞ!」
二つの大型二輪車が高速で接近した。
大助にはすれ違う瞬間、スローモーションのように相手の顔が見えた。
そして相手も――例え自分がヘルメットを被っていたとしても――同じように感じたはずだと確信がある。
***
鏡に写ったもう一人の自分が現実に表れたら、あなたならどうするだろうか?
意気投合する? 互いに無視を決め込む?
財閥の機械人間である大助にとって例え追われる身であったとしても束縛されない生き方はできない、そしてセクサロイドのゼクサには共に支えてくれるサポートAIは存在しなかった。
大助とゼクスにとって、自分に持ってないものを相手が持っており、それを少しも有り難たく思っていない――生き方を選択できない自分自身を見せつけられるようで、同族嫌悪だった。
二人が出会ったことに有益なことは無い。
ただそこには不毛な殺し合いしか生まれなかった。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。
気がついたら直しています。頑張ります。ホントですよ!




