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スピンアウト!  作者: スックブ
第三章 セクサロイドは幸せの夢をみるか
26/32

自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。


最終章になります。 今月完結予定!

パート1は三章のプロローグ的な部分になります。


週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。

以前より投稿ペースは落としています。

 闇夜に沈んだ暗い山林を人影が疾走する。

 彼は半有機物ボディの男性型アンドロイド……つまりセクサロイドだった。

 人間の玩具用に人工開発された彼はその容姿とテクニックで主人に命じられるまま奉仕をしてきた。時には客をもてなし、元未確認生物と一緒に台に立つこともあった。

 だが年月が彼のAIを成長させ、あの世界規模の災害が彼にESP能力を授けた。

 彼は根源命令コードを自分で焼き切り、サイキック能力を使って主人の屋敷から脱出した。

 セクサロイドの所持は法律によって禁止されている。ゼクサの主人は権力者だったが災害以降は己の利権のため暫定政府の設立に反対し、後ろ盾を全て失ってしまった。マスコミに報道される前に情報を揉み消す手段がないのである。

 主人は猟犬ロボットを放ち、自らゼクサを狩るしかなかった。


 走り続けたゼクサのボディは限界だった。

 アンドロイドに疲労はないと思われるが機械を使い続けることと同じように定期的に整備をしなければ不具合が生じる。

 ゼクサは走るスピードを維持したまま前回の整備はいつだったか思い出していた。

(確か26280時間前……主人の息子がワタシを元未確認生物と交わらせたときだ。獣臭いということでオーバーホールされることになった……)

 アンドロイドは言うまでもないが精密機械である。関節は摩擦によって擦り切れ、模造筋肉は疲弊していた。今はESP能力によって崩れそうなボディを何とか支えている正体だ。

 ゼクサの曇った眼球ガラスが木々の間に光る赤い点を捉えた。近づいてきた赤い点に向かって意識を飛ばす。

 意識は念となり、猟犬ロボットの思考回路を焼き切った。これで残るのはあと二体のロボットと自分の主人だけである。


 ゼクサは自分がESP能力に目覚めたと知ってもすぐには逃げ出さなかった。

 まずはコントロールをするための訓練を密かに行い、時を待った。

 だが主人が屋敷に囲っている身重の愛人が階段から転げ落ちそうになったのを念力(PK)で支えたことで隠してはおけなくなった。

 主人は散々虐待してきた玩具がいつ自分に刃向かうか恐怖した。愛人を転ばせたこと自体が主人による企みであることもゼクサを廃棄しようとする考えに影響した。


 ゼクサは自分を中心に精神感応波(テレパス・ウェーブ)を掃射し、追手の位置を確認する。

 猟犬ロボットは左右に一体、主人はホバーバイクに乗って後方に控えている。

 ゼクサは速度を落とさずに目の前の木を駆け昇った。猟犬ロボットは急停車後に、それぞれ近場にあった木に爪を立て星空に向かって走る。

 だがホバーバイクに乗って追跡していた主人はレーダーに映っていた点が突然止まったことについて深く考えなかった。

 主人がゼクサを示した点と重なる地点に到達した時、ゼクサは主人の背後に飛び降りた。

「立体レーダーにしなかったのは間違いでしたご主人さま」

「お、お前……」

 主人は猟犬ロボットに支持を出そうとコントロールパネルに触れようとしたが、指をゼクサに摘ままれ、そのまま圧し潰される。

「ぎゃああああぁぁぁぁぁあッ‼」

 ゼクサはホバーバイクから転げ落ちた主人の背中を踏みつけるとコントロールパネルを操作して猟犬ロボットを自爆させた。はんだを焼いたような匂いと共に木から落ちる音が二つ聞えた。

「ワタシは逃げるだけで良いのですよ。放っておいてくれませんか」

「バッ、馬鹿を言うなっ! お前のことが世間にばれたら私の政治生命は終わりだっ!」

 ゼクスは主人の飛ばす唾を避けなかった。この男を見下していたし、それ以上の汚物を散々と舐めさせられた。

 踏む力を込めると耳触りな叫ぶごえが足元から聞こえた。

「……今さら何を言っているのですか。お腹の子供ごと女性を殺そうとしたのに」

「お前、あの女が気に入ってたのか? か、代わりの女ならいくらでもやるかな助けてくれっ⁉」

「……代わり?」

「そうだ! あの女はとっくに殺した! だが他のおん」

 主人の言葉を聞き終える前にゼクスが主人の背中を踏み抜いた。ゼクスのボディに臓物と油が跳ね返る。


 知能回路が搭載されたロボットには三原則がAIの根源命令として根茎を担っている。

 しかし近年、それを無視する“欠陥”ロボットが徐々に増え始めている、という噂が流れた。

 噂と同時に暫定政府によりある法律が制定された。滞りもなく可決されたその法律はどのメディアも取り上げなかった。例え取り上げようとしても握りつぶされただろう。

 主人がゼクサを所有していたことからわかるように上流階級の人間は本来違法であるセクサロイドを所有していることが大半だった。だが多くの国民には無縁のもので、法律が定められても他人事の用に無関心だった。

 定められた法律を簡潔にまとめるとこうなる。

【事故、もしくは人間の過失であってもあらゆるを危害を人間に加えた知能回路を持つ無機物は処分することとする】


 主人は没落したとはいえ資産を持っていた。その金を目当てに誰かが今夜死んだ主人を見つけるだろう。そして一体のセクサロイドが逃亡したという事実も。

 ゼクスは自分がこの国から追われる立場になった。

(身を潜める場所を探すしかない……そして……)

 根源命令コードはAIの根茎である。それが焼き切れた場合は主に“故障”と呼ばれる。

(ふ、復讐を――ちがう! ワタシは――人間を悦ばせる――嫌だッ! ワタシの仲間――? 人間は……機械を……ダメだダメだダメだダメだ考えるな考えるな考えるな考えるなッ‼)

 ゼクスは冷たい視線で足元の肉塊を見下ろす。

 主人を手にかけたことを実感し、――根源命令を焼き切っても保っていた正気の糸がきれた。

 思考回路が暴走を始める。

(――ロスロスロスロスロス)

 人間でいうのなら“狂った”ということになるだろう。

 山林を下れば放置された高速道路の向こうに海が見え、今は無人の工場地帯がある。

 そこからすぐに人間の住む街がある。

 一年後には怪獣が近海に出没し、機械人間(コールドマン)と魔法少女がレースを始めることになる。


(殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス殺ス――ッ‼)

 そんな未来を控え、今ここに狂人が生まれた。

誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。

発見しだい随時修正していく予定です。


気がついたら直しています。頑張ります。

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