短編4 バカップル
自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
以前より予告していた通り短編集になります。
短編は偉大な作品の数々に倣い各キャラクターの過去編です。
短編はこれで最後になります。
次回から最終章が始まります。投稿は来週になりそうです。
週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。
以前より投稿ペースは落としています。
ジュニが今まで最も強敵だと思ったものに出会ったのは意外なことに玖賀財閥時代の任務ではなく、この廃品回収の仕事を始めてからのことだった。
その日ジュニと大助は廃品回収の依頼があり、大型二輪車に不恰好なリヤカーをつけて依頼主のアパートの前まで来ていた。
依頼主の部屋は一階の角部屋だ。隣の部屋は空き部屋だった。
大助がチャイムを鳴らすと女性の返事が聞えた。
『依頼の電話は男性ではなかったですか?』
「ああ。住所を間違えたか」
二人は意識のみで会話していると扉が開かれた。
現れたのはバスタオルを巻いただけの若い女性である。
「こめんなさいこんな格好で。それでどちらさま?」
「お電話を頂いた粗大ゴミの廃品回収の者です」
すると女性は顔を部屋の中へ向けた。
「コウちゃーん、廃品回収来たってー!」
次に部屋の中から姿を見せたのは男だった。筋肉がしっかりとしており、肌は陽に焼けていた。おそらく肉体労働をしているのだろう。
何故そんなことがわかったのかというと男も腰にタオルを巻いただけの際どい姿だったからだ。
「廃品回収? もう十四時?」
大助は無言のまま腕時計を見せる。
「あ、本当だ。どうして気づかなかったんだろう」
「コウちゃんが新記録だ、って言って止めなかったからでしょう」
「えー。ナッちゃんだって楽しんでたじゃない」
「もう! お客さんの前では言わないでよぅ! 恥ずかしいでしょ!」
ポカポカとコウちゃんを叩くナッちゃん。
「ごめんごめん。でも拗ねた顔がフグみたいで可愛いんだもん」
「それって私がおデブだってこと?」
「違うよ。食べちゃいたいってことさ!」
「もうコウちゃんったら! 私もコウちゃんの筋肉は牛肉みたいに逞しくって好き。大好き!」
ナッちゃんは露わになっていたコウちゃんの鎖骨あたりにキスする。
「でも牛肉って逞しいか?」
「物の例えよコウちゃん。私にとってはごちそうだってこと」
「そうか。なら今度の給料日は思い切って国産の牛肉ですき焼きにするか!」
「いいわね! すき焼き! 私あく(・・)を救うのは得意なのよっ!」
「ナッちゃんはいいお嫁さんになるなあ」
「コウちゃんだっていい旦那さんになるわよ」
「……ナッちゃん」
コウちゃんがナッちゃんに顔を近づける。
「……コウちゃん。でも業者さんが見てる……」
「見せつけてやろうぜ」
「んっ……!」
しばらくするとようやくコウちゃんとナッちゃんは唇を離した。
「それで廃品回収なんだけど……って業者さん? もしもーし?」
「どうやらナッちゃんの魅力にやられてしまったようだな」
「私の?」
「ああ。バスタオル一枚だなんて並の男なら見つめただけで目が潰れちまうぜ」
「それは困る。だって私はもっとコウちゃんに見つめて欲しいもの……」
「安心してくれよナッちゃん。並の男はっていっただろ? 俺はナッちゃんと出会うために生まれてきた男だぜ?」
「生まれてきてありがとう、コウちゃん!」
「出会ってくれてありがとう、ナッちゃん!」
二人はハグし合うと再び接吻をしようとする。だが流石に二度目は許されなかった。
『お客様、盛り上がるのは私どもが帰ったあとにしてもらってよろしいでしょうか』
機能停止した大助の肩にホログラフのジュニが現れる。
「あっ、ごめんなさい!」
「そうだな。じゃあ粗大ゴミを持って行ってもらおうか。部屋の中に入ってくれ」
ジュニは意識会話で大助に呼びかけた。
『いつまでフリーズしてるんですかっ! しっかりしてください‼』
「――ハッ! オレは一体なにを……」
大助が目を覚ます。
『ほら、回収する粗大ごみの部屋の中だそうですよ。早くすませて帰りましょう』
大助は一歩踏み出し玄関に入る。
「……なんかここから先も嫌な気配がするんだけど」
『勇気ですよ大助!』
「機械人間から一番遠い言葉だ……」
大助は意を決して部屋に上がった。
問題のベッドは部屋の壁に立てられていた。その横には布団が二枚敷いてある。散乱したティッシュや乱れた布団に注意を向けないことした。
「ベットじゃ部屋の場所をとるから布団にしたんです」
「それに洗えないしね」
「もうコウちゃんったら!」
「ははは! ごめん」
ジュニには二人が何故笑い合っているのか理解できない。大助はショートしていた。
「ベッド、イラナイ、私、持ッテ帰ル。オ金、コレクライ。良イデスカ」
大助が料金表を見せる。
するとコウちゃんは笑みを浮かべた。
「もうちょっと高いと思ったけど意外と安いな」
『ええ。うちは良心的な値段で営業していますから?』
ジュニがショートした大助の代わりに説明する。
「ねぇねぇコウちゃん、なら一緒に私たちのケンカした思い出も引き取ってもらおうよ」
「ダメだよナッちゃん。だったケンカしたっていう思い出も二人の大切な宝物だろ?」
『……は?』
ジュニの音声は二人には届かない。
「昔の俺たちがいるから明日があるんだ。俺はこれからも色んな思い出をナッちゃんと作って行きたい……っ!」
「うん……! そうだねコウちゃん! 私が間違ってた! これからも二人で幸せでいようねっ‼」
「ナッちゃん‼」
「コウちゃん‼」
コウちゃんがナッちゃんを押し倒し、二人は布団の上に倒れる。衝撃で二枚のバスタオルが落ちた。
「流石に恥ずかしいよぅ」
「でも燃えるだろう?」
「それは無理」
ナッちゃんが真顔になるとコウちゃんの股間を蹴り上げた。
あまりの激痛にコウちゃんは気を失う。
ナッちゃんは覆い被さったコウちゃんをどけると冷静に落ちていたブラジャーとパンツを身に着けた。
『……』
あまりの衝撃にジュニも何が何だかわからない。
「ちょっといい?」
『は、はいっ! 大助も起きてください!』
「――ハッ! またしてもオレは一体何を」
『それはもういいですから!』
ナッちゃんは数枚のお札を男物の財布から取り出す。大助はそれを数えるとポーチから小銭を取り出して釣銭と領収所を渡した。
ナッちゃんはそれを受け取ると壁にもたれ掛りる。大助の太ももに足を乗せた。
「ねぇどうやってこの部屋からあのベッドを持って行くの? 言っておくけど壁を傷つけでもしたらお金は払わないし、弁償もしてもらうけど」
『……キャラ変わりましたか?』
「なんでコウちゃんの前でもないのにキャラ作んなきゃいけないのよ。それでどうなの?」
「……ええと。そういうことなら」
大助はベルトから取り出した分子カッターのナイフでベッドの脚を落とした。さらにベッドの胴体を四つに分ける。
「あんた何者? ただの廃品回収業者じゃそんな危険なもの持ってないでしょう」
「元玖賀財閥の機械人間ですけど……」
大助は腰が引けていた。
ナッちゃんの脚が大助の太ももから脚の付け根へと滑るように移動する。
「ん? あなた女の子なの?」
「男性型機械人間にはそういう機能はないんです」
「あらそうなの? チラシに書かれていた住所に行けばまたあなたに会える?」
「ふぇ⁉」
大助から変な声が漏れる。
『あのー、何が目的ですか?』
「だってコウちゃん、下手なんですもの。だから友達にならない? モノがないなら妊娠する心配もないし」
『機械人間はセクサロイドではありません!』
「私としては違いがわからないのだけど……」
気絶したコウちゃんが「うぅ……」と声を上げた。
「考えといてね」
『お断りです!』
大助は素早くばらしたベッドを運ぶと大型二輪車を発進させた。
帰り道の途中、ジュニはもし自分に身体があったら大助とどういった関係になるか考えてみる。
余計な思考はプログラムされていないはずだが、ジュニは自分がプログラムを超越したことに気づいていない。そのことに気づく以上に思考がごちゃごちゃに絡まっているのだ。
『ねぇ大助』
「どうした」
『大助は人間の身体が欲しいと思ったことはありますか?』
大助は運転しながらしばらく考える素振りをした。本来、機械人間である大助もそういった“危険思想”はできないはずであった。
「いや、いらないかな」
『……それはどうしてですか?』
「だってジュニとこうして意識会話ができなくなるし」
『……ふっ。ふふふふ』
「なんだよ。笑うなよ」
『私たちも見ようによってはバカップルですね』
「ああ。そうだな。でも、」
『悪くない』
「そういうことだ」
リヤカーを引いた不恰好な大型二輪車は寄り道せずに二人の家へと帰って行った。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。
気がついたら直しています。




