短編3 零時抜刀隊の三人娘
自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
以前より予告していた通り短編集になります。
短編は偉大な作品の数々に倣い各キャラクターの過去編です。
週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。
以前より投稿ペースは落としています。
暫定政府宮内庁直轄組織零時抜刀隊本部の休憩室で三人の女が顔を突き合わせていた。
一人は碧眼の金髪ショートヘアのグラビアモデルのような娘、一人はノンフレームの眼鏡をかけた十代後半のふくよかガール、最後の一人は鋭い眼にスマートな眼鏡をかけた堅物女教師のような女性だ。
それぞれが強力な能力を持つ三人は同じ職場の同僚だという共通点がある。
「巫女様の託宣があったわ。あなたたち二人には瀬戸内海に行ってもらうことになるわ」
そう言うと兎槍まきは机に置かれた本部長のお土産の品である高級チョコを摘まむ。
「えー、めんどい」
悠木アポロニア、職場ではアポロと呼ばれている彼女はたまきに抗議した。
「それって他の人たちじゃだめなの?」
「スケジュールに空きがあるのはあなたたちだけなのよ」
「この前の百鬼夜行をメタメタしたときの休日出勤分、まだ残ってるからそれ使う」
「代休なんてもの建前のためにあるだけよ。実際に使おうものなら白い目で見られることになるわ」
「最近、何のために働いているか疑問に思うことがあるのよね。お金を稼ぐためっていうのも限度があるわ」
アポロはチョコを鷲掴みにすると口の中へ放り込み、牛乳で流し込んだ。
「先輩たち、そんなにチョコを食べると太りますよ」
今まで黙っていた花江香菜が注意する。彼女はここ最近体重が二キロ増えたことを気にしていた。
「私は食べても胸にいくのよね」
「そもそも機械人間なので体型は変わりませんが」
「……そうですよね。お二人とも美人さんですものね」
香菜の声は沈んでいた。
「香菜さんも肉付きが良くて男性受けはよさそうですが」
「そうよ。それにまだ十代でしょ? 若いじゃん」
「でも私、年をとっても先輩たちのように成長する自信がないんです……」
「なんでよ?」
アポロが新たに牛乳をコップに注いで訪ねる。
「たまきさんは年をとりませんし、アポロ先輩はなんていうか、もう、色々反則じゃないですか」
香菜とたまきはアポロの体つきを見る。整った顔立ち、豊満な胸、すらりと伸びた脚。さらに強力な能力を持っており、任務の達成率も高い。
「でも長くは続かないのよね。なんでだろ」
「私、先輩の家に一度お邪魔したことありますけど、生ごみは早めにゴミ出ししたほうがいいですよ」
「まずはそのガサツな性格を直すことが先決ですね……」
「だったら一生独身でいいや」
結婚といえば、とたまきが香菜の方を向く。
「一番早く結婚するのは香菜さんだと思いますよ」
「そうですか?」
「ええ。機械人間が元はベビーシッター用に開発されたという話は以前したでしょう? そのデータによって計算するとそうなりますね」
「香菜は安産型だしねぇ」
「もう!」
香菜がぷりぷりと怒る。
「そういえば前から聞こうと思ってたんですけど、機械人間の方たちは恋人を作らないんですか?」
「あ、それ気になる」
香菜の質問にアポロが乗ってきた。
「前にも言いましたが私たちには性欲やそれに準ずる感情がないんです」
「でも感情がないわけではないんでしすよね? アタックとかされなかったんですか? 気になる男性とかいなかったんですか?」
「この娘、見かけによらず怖いもの知らずだ」
なおも食いつく香菜にたまきは怯む。
アポロから見てもたまきは女性として魅力的に思える。頑固で融通の効かないところはあるが、誠実で他人を思える優しさもある。
「泣き虫なところが玉に瑕だけど」
「アポロ! 独り言を言っていないで助けてください!」
「えー? だって私も気になるし」
「そうですよね! そうですよねっ⁉」
「香菜は少し落ち着け。で、実際どうなの?」
「うぅ……。そりゃあお気に入りくらいはいましたよ……」
たまきが観念して吐き出した。
「やっぱりですか‼」
「でもお気に入りって? まさか女の子?」
「違いますっ! 玖賀財閥時代の部下だった男性型機械人間です!」
おぉ~っ、と香菜とアポロの二人は感嘆をあげる。
「上司と部下のオフィスラブですね⁉ それで相手はどんな人だったんですか?」
「どんなって……。普通の機械人間でしたよ。少し手がかかって生意気でしたが。雑用をやらせれば一級品でした」
「それでそれで?」
アポロは興奮する香菜を止めるのを諦めた。自分もこの恋愛に疎そうな上司の話は気になる。
「仕事はできないんですが、武力で解決できない依頼となると任務の成功率が高いんですよ。気になって跡をつけたら……ってなに言わせるんですかっ⁉」
たまきが我に返った。
「仕事ができないってダメじゃん」
「たまきさんはヒモとか作りそうですね……」
顔を赤くしたたまきが話を変えた。
「そういう香菜はどうなんです? 学生なら出会いも豊富でしょう」
香菜は童顔だがそれに反して出るとこは出ている。主張しないお洒落ができ、裁縫も料理も得意な今どき珍しい家庭的な女子だ。
「同い年なんてみんな子供っぽいですよ。なんか無理に格好つけてて。その点副隊長とかナイスミドルで好みですけど」
うっとりする香菜を横目にアポロとたまきは顔を合わせる。
「副隊長って七十七歳じゃなかったっけ?」
「そのはずです。しかも奥方も健在で今日も手作り弁当を召し上がっていましたよ」
二人は香菜を見つめた。
「どうしたんですか変な顔をして」
「だって孫もいるよ、副隊長」
「それがいいンじゃないですかっ! キャー、どうしよ言っちゃった‼」
「……人とはわからないものですね」
「いやこの娘が特殊なだけだから」
後輩の意外な一面に先輩二人は黙って見つめるしかなかった。
ちなみにお土産の高級チョコレートはこの日のうちに全て三人のお腹の中に納まり、他の職員はがっかりしたらしい。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。
気がついたら直しています。




