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自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。
予定なのでたまに早かったり、遅かったりします。
一方、魔法によって人間に変えられた大助はやっと自宅――粗大ゴミの島に戻ってきていた。
その顔は浮かない。
『これは参りましたね……』
大型二輪車の操縦は知識と身体で覚えた感覚があるので問題はないが、人間の身体では運転できるスピードに大幅に制限が掛かる。
さらに使用できる武装も限られることになる。例えば発射と同時に空間を歪ませる最大威力武装の一つ《重力圧縮砲》は人間の身体には耐えられない。
ほぼ全ての絶対兵器が封印されることになった。
「こんなことになるなんて考えてなかった……」
そして機械人間であったころには持ちえなかった感情の部分も変化していた。
平均的な感情は機械人間も持っている。が人間になったことで憎しみや正義心などが付加され戦闘による判断に遅延時間が増えた。
『それだけじゃありませんよ……』
そして人間になったからには毎日の食事が必要となってくる。今までは趣味だったが少なくとも元の身体に戻るまで作り続けなければならない。
物は試しと大助は重い足取りでミニ冷蔵庫に向かう。数週間前に作ったかぼちゃの煮っ転がしを取り出して口に入れた。
「……」
『……大助?』
大助は無言で流し台にあった三角コーナーにかぼちゃの煮っ転がしだったものを吐き出した。
「……食料品を買いに行かないとな」
『前の買い物では日用品しか買ってなかったですものねえ』
「お金残ってるかな……」
『あー。そういう問題もありましたか。 他に変わったことはありませんか?』
「性欲は……ないな。機械人間の身体がそのまま人間になったから性器もないし」
『それって身体の構造はどうなっているんですか?』
「ちょっと眼が怖いよ……」
『ご、ごめんなさい! 少し興奮してしまって! 今のところ一番の問題はやっぱり……』
「ああ。意識会話が使えなくなったのが深刻だ」
機械人間とサポートAI間で言葉を介さず一瞬で共有する意識会話は戦闘の肝とな部分だった。大助とジュニは長年の積み重ねにより、ある程度互いが求めている行動はわかるが、それも限界がある。
『やっぱり抜刀隊に連絡しましょうよ』
「それはヤダ」
『負けたからって意地を張らないで下さい……そこは人間になっても変わらないんですから』
「いや、前より少し意地っ張りになったさ」
応援の件について粗大ゴミの島に戻るまで安全運転で走行しているときにジュニとやり取りがあった。
だが抜刀隊に任せれば機械人間の身体に戻るタイミングがあるかわからなかったし、“同窓会”に実績を手土産として持って行けば再建した玖賀財閥でも下っ端の立場から脱却できるかもしれない。そんな目算があった。
『ミスター・ポンドは現れるでしょうか』
「出てきても来なくても関係ない」
『そうでしたね。だからこそのレース勝負でしたね』
大助があの魔法少女――コアを挑発してレースを持ちかけたのは理由がある。
一つ目は戦闘ではどうやってもコアには勝てないからだ。
殺すだけなら暗殺など方法によっては勝算があった。しかし、大助はコアが友人である悠一の彼女だと考えていたし、殺してしまっては人間に戻れるかどうかもわからない。それに兎槍から受けた命令は確保だった。
二つ目の理由としては戦闘で勝てなくてもレースなら勝算があったからだ。
魔法少女は箒に乗って空を飛んでいた。その時はゴーグルもしていなければ服装も普段着であった。魔法で箒を召喚できたのなら服装や装備品も一瞬で揃えられたはず。おそらく風圧を緩和するのも目を守るのも全て魔法で補っているのだろう。無意識で補助魔法を行使しているかもしれないが、そこは致命的な弱点となる……そう大助は考えていた。
さらに言えば少女を散々挑発した結果、「追って知らせる」という言葉について疑念を抱かれなかった。つまり日程もレースコースも決定権は大助にあるのだ。
後になってそのことを指摘されても「了承したじゃないか。その場で指摘しなかったお前が悪い」と言い張ればいい。少なくとも大助の自尊心はそれで満たされる。
『食料の買い物は明日にしましょうか。出かけるついでにレースコース目星をつけましょう』
「そうだな。今日は使える武装品のチェックとテレビを――」
こうして夏の夜は更けていった。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。
気づいたらちょくちょく直してます