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自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。
予定なのでたまに早かったり、遅かったりします。
(さっき活動報告に「投稿は明日」だとか書きましたが、そっちまで見てる人はいないだろうし別にいいよね)
次回の投稿でバトルまでいけるかどうか微妙なところです。
大助がテレビの電源を切りスチール机に向かってチラシを作っていると黒電話が鳴り響いた。
大助は電話の鳴る音が聞こえていないかのように作業を続ける。
『大助……』
彼にはこの世で憎むべきモノが三つあった。一つ目は突然の来客、二つ目は目覚まし時計、三つ目はこちらの都合に構うことなくかかってくる電話である。
『粗大ゴミ回収の電話かもしれないですよ!』
デジタルな機器ならば施設の電子系統を支配しているジュニが対応するのだが、黒電話ではそうもいかない。粗大ゴミ回収業の電話番号を黒電話に設定したのは玖賀財閥の所有であるこの施設の公にされていない電話番号を使うわけにはいかなかったからである。
『大助!』
ジュニが大きな声を出すと大助も渋々立ち上がって受話器をとった。
「はい、こちら粗大ゴミ回収の――」
「そういうのはいいわ」
受話器から聞こえる声は女性のものだった。正確なところはわからないが大助に設定された年齢とそう変わらないだろう。
大助はこの声に聞き覚えがあった。
「今は政府機関にいるんじゃないのか、兎槍さん」
「そうよ。久しぶりね保志。ジュニは元気?」
大助は顔を歪めた。兎槍たまきは大助が製造されてから苦手としていた人物だ。それは大助のサポートAIであるジュニも同じだった。
『どうしてこの場所が……』
「どうしてこの場所が、とか思ってる? 察しはついているだろうけど、報告書の不備に突っ込んだら香菜があっさりゲロったわ」
「あー……」
大助もそんな予感はしていたのだ。今更どうにかできる問題ではないが。
「それで何の要件だ」
「保志は空港の事件のニュースを見た?」
「ああ。テレビをつけたら生中継が丁度放送されていた」
「なら話が早いわ。ミスター・ポンドとその娘がそっちに現れるから確保して」
「……」
大助が押し黙る。
「返事は?」
「なぁ、こっちにも都合があるんだよ。ガキのお使いみたいに『はい。そうですか』って返事をするわけないだろう」
「あんた玖賀財閥の機械人間でしょ⁉ 命令には従いなさいよっ!」
「アホかっ! もう財閥は潰れただろ! それに今まで俺たちのことは探しもしなかったんだから放っておけよ!」
「下っ端のあんたが生き残ってるなんて思いもしないわよっ⁉」
「悪かったな生きてて! お前はお嬢様の秘書で忙しくて知らなかったかもしれないが、襲撃時、俺は地方に出張してたんだよ! というか渋いおじさんはアポロが捕まえたんじゃなかったのかっ⁉」
「そんなの逃げられたからに決まってるでしょ⁉」
大助から見てもテレビに映っていた抜刀隊の三人は初歩的な油断をするタイプには見えなかった。あの三人を上回るのなら大助には荷が重い任務だ。
「どうして逃げられたんだよ‼」
「カレーを買いに行ってる隙を突かれたらしいわ!」
「カレー⁉ カレーだと⁉ あのカレーか‼」
「カレーは奥が深いのよ! 和風にチキンカレー、それにドライカレーだってあるし‼」
「それがどうしたっ‼」
大助は何に対して声を荒げているのか見失いそうになっていた。
「待て、話が逸れてる。カレーの話はどうでもいい」
「それじゃあ命令、聞いてくれるのぉ……?」
受話器の向こうで鼻をすする音が聞こえる。
大助とジュニが兎槍を苦手としている理由がこれだった。
兎槍たまきは普段はクールな眼鏡美人で高圧的なお姉さんタイプなのだが、一皮剥ければ泣き虫で甘えん坊な面が表れる。しかも本人はその天然さ(あざとさとも呼べる)を自覚していない。
「……わかったよ。渋いおじさんとその娘を見かけることがあったら努力してみるよ」
だからいつも最終的にこちらが折れるのだ。これは大助だけではなく他の同僚たちも同じであった。
「ぐすっ……。ありがと。それと一度こっちに報告に来てね?」
「報告? お嬢様にか?」
「うん。生き残ったみんなで玖賀財閥の再立ち上げを計画してるんだ。ダメ?」
「……了解したよ。他の生き残りとも会いたいし。場所は?」
「零時抜刀隊の本部。首都だよぅ。住所はミスター・ポンドとその娘の顔写真と一緒にジュニに送るね?」
「……ああ。もう泣き止んだか?」
「な、泣いてないわよっ!」
電話を勢いよく切られ、反射的に大助は受話器から耳を離す。
『また兎槍さんのペースですか……』
「ああ……」
『お疲れ様です』
「本当にな」
二人は大きく息を吐いた。
意識会話で兎槍との会話内容をジュニと共有する。
『――受信しました。同窓会の連絡はプリントアウトしますね』
チラシを印刷するためのコピー機に電源が入り、紙が数枚吐き出される。大助は同窓会の日程をカレンダーにクリップ止めた。
「顔写真は?」
『現役時代と同様にヘルメットにデータを転送しましたよ……』
「……そうだよな。物に残しておいたらまずいよな」
『……腑抜けてますよ。同窓会は良いアイディアだったかもしれません』
「俺も今そう思ったから言ってくれるな」
大助は大型二輪車まで歩くと座席に置いてあったヘルメットを被る。視線パネルを操作し、ジュニを経由して転送されてた写真を見る。
『渋いおじさまのサングラスを取った写真はありませんでした。娘さんの方も数枚だけですね。この子は将来美人になりますよ』
大助は写真を確認するとスチール机に戻った。
「チラシ配りと一緒にそれらしい人物がいるか探して見るか。でもどうして兎槍はこの街に親子が来るってわかったんだ?」
『忘れたんですか? 抜刀隊には千里眼の能力者がいるそうじゃないですか』
「そんな設定もあったなぁ」
大助は写真の娘も父親と同じようになんらかの異能を持っていることは予想していた。
しかし、その娘が本当の意味で“魔法”を使える少女だとは少しも考えてはいなかった。
機械人間の青年は再び苦境に立たされることになる。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。
最近は気づいても「後でやればいいや」とか思ってしまいます。
そのうちまとめて修正するかもしれません。