表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スピンアウト!  作者: スックブ
第二章 少女アニマート(前編)
11/32

自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。


二章のプロローグ的な部分になります。


週一予定の不定期更新ですがどうぞよろしくお願いします。

 悠一は自分の平凡さを自覚していた。

 母親からも「無個性さが逆に個性よね」と言われたほどだ。

 「それと庭の草むしりもやっておいて」

 傷ついているのに仕事を言いつけられた悠一はさすがに頭に来た。愛用している自転車に乗り、自分の個性を探しに旅に出ることを決意した。


 世界規模で災害が起こり、元未確認生物が現れるようになって人間の居住空間は狭まれた。代表的な都市を壁で囲い、都市間を専用の道路で繋げた。

 結果、それ以外の場所は人間の手が入らず、自然そのまま(荒れ放題ともいう)の姿になり、元未確認生物や野生動物が野山・旧都市を闊歩するようになった。


 なので悠一はそう遠くへと行けず、自転車をキコキコ鳴らして粗大ゴミの島に向かった。粗大ゴミの島は海上にあるのだが、橋が街と直接結びつけており街の一部として扱われている。

「そりゃあボクは無個性さ。ヅラでもないし、父さんにこっそり見せてもらった写真――母さんの“輝けし時代”みたく背中に文字の入った服を着てバイクに乗ったこともない。だけどバイクに乗るには免許が必要だろう? どうすりゃいいのさ」

 悠一は独り言を言いながら粗大ごみの島の中へと自転車を進める。

「ボクにだって得意なことはある。トレーディングカードゲームなら同学年で負け無しさ。でもこれって自慢できることじゃあないだろ? きっとボクより強い奴なんて山ほどいるし」

 悠一は独り言に夢中なので気づいていないが、彼は廃棄処理施設の前まで来ていた。

「あーあ。明日にでも地球が亡びないかなぁ」

 だから怪しい人影の接近に気付かなかった。いや、その人影が気配を消せば気づくことができる人間は限られる。


「少年、さっきから何をぶつぶつと言っている」

 不意に声を掛けられたので悠一はバランスを崩し、自転車を転倒させた。家庭科で作ったナップサックが籠から放り出される。

『怪我はありませんか?』

 女性の声が聞えるが周りを見ても右腕を差し伸べる男しかいない。他に目立つ物といえば脇に停められたやけに巨大なバイクのような乗り物だ。

取りあえず悠一は差し出された腕に掴まって立つことにした。男を見るとクラスの騒がしい女子たちが話題にしそうな顔をしていた。どこか陰鬱な雰囲気もポイントだ。

「あ、ありがとうございます……」

「まぁいいんだけど。それより荷物が散らばってるぜ?」

「あ⁉ ボクのカード‼」

 悠一は慌ててカードを拾う。男も悠一を手伝った。カードは一枚ずつケースに入れていたので傷はついていなかった。

「この絵柄のあるカードはなんだ? トランプじゃないよな」

「おじさんマギカPSY知らないの? みんなやってるよ」

 悠一の言うみんなとは主に十代全般を指す。だが人影にそこ指摘する余裕はなかった。

「お、おじさん……」

『外見設定は二十代中盤ですからね。子供には十分おじさんでしょう』


 悠一も一つ質問をしてみることにした。母親からは「怪しい大人に声を掛けられたら股間を蹴り上げろ」と躾けられているが目の前の大人は自分のレアカードを盗まなかった。

「さっきからお姉さんの声が聞こえるんだけど、おじさんには聞こえないの?」

『あらお姉さんだなんて……‼ 大助、この子は良い子ですよ!』

「浮かれすぎだろう……」

 バイクからホログラフが浮かび上がり女性の姿が現れる。どちらかといえば“若干お年を召した方”に見えたがここでも母親からの教訓が生かされた。すなわち、

「あはは……」

 苦笑いで誤魔化したのである。


 悠一は母親と乗った電車のことを思い出していた。別都市での買い物を終えて帰る途中のことである。

 悠一の母親の腕が動くと若い男の手を掴んでいた。男はあろうことか自分の母親に痴漢をしていたのだ。悠一は止めるべく声を上げた。

「母さん!」

 だがその言葉に反応したのは腕を掴まれている男の方だった。

「いい身体してると思ったけど子持ちのおばさんかよ」

 そこから先は技の連続だった。


 悠一の母親は男の顔面にシャイニングウィザードで膝をめり込ませると、肩に担ぎアルゼンチン・バックブリーカーを決める。その状態で数回、真上に飛ぶ。

 男を床に投げ捨てトーホールドで間接技をカッチリ決めると、男を立たせ、余裕を持ってその背後にまわり込んだ。

 この時には既に止めようとする者もおらず、電車内の熱気は最高に高まっていた。


 悠一の母親は男の胴体に腕をまわし短く息を吐く。

「――っ」

 男の身体を持ち上げたまま悠一の母親は状態を背中に反らし倒れ込んだ。

ちょび髭を生やした乗客の一人がカウントをとる。

「――3、――2、――1」

「ぅらぁーーーーー‼」

 悠一の母親が拳を天井に向かって突き出した。乗客から拍手の嵐が巻き起こる――。

 あの時は鉄道警察に怒られただけで済んで良かったと悠一は思う。


「おい、ぼーっとしてどうした」

「……おじさんマギカPSYやったことないんだっけ。ならボクの三番目のデッキをお礼にあげるよ」

「いらない……」

「ボク、もう帰らなくちゃ。またね! おじさん!」

 悠一は自転車を起こし、ナップサックを籠に入れると飛び乗った。母親のことを思い出すと同時に頼まれていた庭の草抜きのことを思い出したからだ。

「あ、おい⁉」

「また今度来るからっ! その時は対戦しようねー!」


 悠一の姿が小さくなっていく。

『行っちゃいましたね……。それでどうするんですか大助?』

「また来るって言ってたし、このカードはその時にでも返せばいいだろう」

『では――』

「ああ。幸いこの島の施設は生きているしな。周りのゴミは……まぁ落ち着くまでは放っておいてもいいだろう」

『わかりました。では早速施設の細かい状況を把握しに行きましょう』

「そうだな」

 大型二輪車を手押しで動かし大助はとりあえず目の前の施設へと向かった。


 これが平凡な少年と未熟な機械人間コールドマンの出会いであった。

誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。

発見しだい随時修正していく予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ