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自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
一章のエピローグ的な部分になります。短いです。
来週からはまた週一予定の不定期更新に戻ります。
大助がグラビトンと戦ってから数週間が経過した。
草木は生い茂り、虫の鳴き声が響く毎日だ。空には入道雲が浮かび、風は潮の匂いを運んでくる。
機械人間が必要とされる依頼もなく、大助は一週間に一度の買い物を終え、粗大ごみの島へと帰る途中だった。
報酬で受け取った日用品も底が見え始め、今日はトイレットペーパーや台風で飛んで行ったハンガーなどを購入していた。
購入した荷物は市販のゴムバンドで大型二輪車の車体に括り付けていたが、ジュニが固定のずれを感知したため、運転を停止した。
『建設は止まったままですね』
「ああ。そうだな」
ヘルメットを外し大型二輪車から降りる。
街からはずれたこの場所には看板が一つ立っていた。看板の向こうは有刺鉄線で囲まれた土地がある。
『大怪獣博物館建設予定地……一体いつ完成すんでしょう』
「さあ」
ジュニもそれほど興味があったわけではないらしく、大助は荷物の縛り直しに集中する。
あの海での戦闘後、丘へ戻るとサルベージ組合のテントが騒がしくなっていた。
左脚が潰れていたため大助は大型二輪から降りることができず、テント付近まで徐行して近づいた。
テントの前には零時抜刀隊のアポロと香菜が立っていた。
「お疲れ様ね、大助」
「ジュニさんもお疲れ様です」
大助は右手を軽く上げて答える。
『お二人とも待っていて下さったんですか?』
「あー、それもあるけどね……」
アポロが言葉を濁すとテントから悠一の父親が現れた。
「皆さんお疲れ様です。お茶はいかがですか」
冷えた缶の緑茶が三人に配られる。
「それで? どういうことか説明してくださいますよね?」
香菜が喧嘩腰に尋ねると悠一の父親は姿勢を低くして答えた。
「保志さんたちが倒してくれた怪獣はサルベージ組合の方で利用することが決まりました。あの怪獣にはそれらしい名前が新しく付けられ、骨や皮などがそこで展示される予定です」
現在テントの中で行われているのは、組合のどの派閥が舵を取り黄金の島を目指すのかで揉めているのである。
「零時抜刀隊と保志さんには後日連絡と報酬を輸送いたします」
「そういうことを聞いてるんじゃ――うぎゃあ!」
アポロが香菜の胸を背後から揉みしだいた。
「ほらほら、カリカリしないの。それに私たちが文句を言ってもしょうがないでしょう」
「……大人って嫌いです」
「まぁ香菜にもわかるときが……いや自覚はなくてもそうなる時が来るよ」
二人はヘリコプターが停めてある場所へ歩き出した。
「こっちはあんま疲れてないし、このまま帰るよ。ジュニさんと大助もまたね。今度は道具を持ってくるから一緒に寝ようね」
「……」
「あれツッコミはなし?」
「そういう気分じゃないので。それでは皆さんお疲れさまです」
大助たちと悠一の父親がその場に残された。
「……保志さんはどう思いますか?」
深く息を吐くと悠一の父親が大助の方を向く。
「いいんじゃないか博物館も。よくわからないけど」
「……。そうですか……」
大助はアクセルを捻った。ヘルメットの内部モニターに映った悠一の父親は小さくなり見えなくなった。
大助は荷物を括り付けるとヘルメットを被り直した。
風雨で錆び始めた看板を一瞥すると大型二輪車を発進させる。
梅雨は過ぎ去り、夏は本番を迎えていた。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。