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初投稿です。
自分の好きなジャンルがごちゃ混ぜになってます。
更新は不定期。目指せ週一。
初夏の朝日の下で五メートルはある粗大ゴミの巨人が剛腕を振り上げる。少し離れた場所からそれが動き出すのを待っていた人影があった。
人影は黒塗りのヘルメットを被り、身体にフィットした特殊なスーツの上から鍛えられた肉体がうかがえる。彼は大型の二輪車にまたがっていた。
彼に与えられた名前は保志大助。とある企業の機械人間である。
彼は前傾姿勢をとると、大型二輪車のアクセルを捻った。
巨人の背後にまわり込むようハンドルをきる。急激な加速が大助を押すが人間でない彼には慣れた感覚だった。
ヘルメット内部のモニターには車体の状況や自分のコンディションなど様々な情報が映る。
『敵の正体は電気スライムです。知っているとは思いますが、電気スライムは粘性が高く、電気を帯びており、機械の内部に浸食して操ることができます。放っておくと今回のように放棄された機械を大量に制御し、非常に面倒な処理が必要になります』
意識を伝達して直接女性の音声が大助に伝わる。サポートAIであるジュニとの意識会話音声だ。
大助はジュニの皮肉を聞き流し、視線パネルで《分子チェーンソーの槍》を選択する。アームによって車体右側面に装備された馬上槍が構えられた。
機械人間専用に造られた二メートルはある大型二輪車の巨体には様々な機能が備え付けられている。《分子チェーンソーの槍》もその一つだ。
大助が巨人の背にまわるとモニターに巨人内部に広がるスライムのコアが表示される。
意識会話によって大助の思考がジュニに伝わり、構えられた槍にスイッチが入る。槍頭の表面に配置されている分子運動によって鈍い輝きを帯びた。
大助はアクセルを絞り、粗大ゴミの巨人に突撃を開始した。巨人の背中から電磁力の反発で放たれるゴミを槍で弾き、進路上に転がっているゴミをジャンプ台にして飛ぶ。
槍の尖端がモニターの示す箇所を精確に貫く。
一瞬後、槍が半ばまで刺さるとアームを動かし、巨人の腹を切り裂いた。
地球を縛る法則に従い、運動エネルギーを逃がしたあと大型二輪車がゆっくりと止まる。
槍に引っ掛かっていた電気スライムは飴のように溶けバラバラになり、それぞれが蜘蛛の子を散らすように退散していった。
大助がヘルメットを脱ぐと二十代に見える精悍な顔つきが露わになる。
「なぁ、あいつらを捕まえる方法ってないのか? これじゃまた一戦やるはめになるぞ」
大助がジュニに口頭で呼びかけるとハンドルの間から女性のホログラフが現れた。
ホログラフの女性は緩やかにウェーブした長髪にふくよかな肉付をしており、三十代の女性に見える。
『この施設に初めて来たときに言ったはずです。冷凍ビームが有効で、放置しておいて有益なことは何もありません、と。今まで何かと理由をつけてサボっていたのは誰ですか』
「まずは早急に街の人と友好関係を築く必要があったんだそれはジュニも認めただろ?」
『あれから何か月経っていると思ってるんですか⁉』
「半年……かな?」
『一年ですっ‼』
大助が仰ぐように首を振った。
「そもそもこの島全体をオレ一人で管理するなんてのが無理なんだ」
この粗大ゴミで溢れる場所は極東にある国の太平洋に浮かぶ島を改造して作られた人工島だ。
先の師走事件で国内の政府、財閥、教育機関のほとんど壊滅的な被害を受けた。大助の製造元である玖珂財閥もその例に漏れず、むしろ機械人間という代行者を持っていた分、被害も大きかった。
師走事件当時、大助は出張中で本部を離れていた。仕事を終えて戻ってくると本部は半壊しており、襲撃組織員であろう見知らぬ人間が占拠していた。
大助は仕方なく本部から遠く離れたこの財団が保有する廃棄物処理島を拠点に活動を始めたのだった。
生き残った地方の支店に移動しても良かったのだが、この島を選んだのには理由がある。
それは機械人間それぞれが保有する大型二輪車の整備ができること、うるさい上司がいないことだ。
生存報告は提出しているので呼び出しがかかるまではいつ終わるかわからない休暇を満喫しようという腹積もりだった。その時ばで生き延びていられたら同僚にもまた会う機会もあるだろう。
この夢の島から港の街までは道路が一本通っている。食料品は週に一度、街の廃品回収で稼いだお金で買いだめしてあった。
『まったく……。それでこれからどうするんですか? 冷凍ビームの外付装備なら倉庫にもありましたが』
「今日は疲れたよ」
ジロリとジュニに睨まれる。
「ほ、ほら! 街からの仕事があるかもしれないだろ?」
『請負人の真似事なんて機械人間の仕事じゃないですよ……。サボりの言い訳じゃないですか』
呆れた表情でジュニが言った。
パートナーだけあって機能を使わずともジュネには大助の考えることがお見通しだった。
誤字・脱字が多々あるかもしれませんがご容赦お願いいたします。
発見しだい随時修正していく予定です。