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母親失格  作者: アザとー
息子と母と
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 長々と息子の成長の経緯を書いてきたが、この辺りでざっくりまとめさせてもらおう。

 アザとーと息子は二人とも欠けの多い性質であるゆえ、お互い補い合って生きてきた。

 中学校で普通クラスに戻されてすぐは順風満帆とは行かなかった。からかいの種にされたことに憤り、ケンカをして帰ってきたことも一度や二度ではない。反抗期が重なったこともあって、家でも多少荒れた。

 だが幸いにも温厚な彼の反抗期は暴力や破壊の形をとることは無かったし、弟が二人もいたアザとーには物足りないほどであった。

 友人に恵まれたせいもある。彼が選ぶ友人は酒やタバコに金を使うぐらいならトレカを箱買いするような『猛者』ばかり……ぶっちゃけ女にはもてないが、アザとー的には一番気安いタイプであった。当然、遊びに行く先もカード大会や古本屋、カラオケなどももちろん行くがヤローばっかりという、アザとー的には何の心配もなく送り出せるところばかりだ。

 だからといってはっちゃけた子達を毛嫌いしているわけではない。中学校の卒業写真でははだけた制服の下に色Tシャツという子と肩を組んで写っている。

 どうやら自分を受け入れてくれる友人がいるという安心感が彼を成長させたらしい。

 そして現在、高校生になった息子とアザとーは新たな局面を迎えている。

すなわち『親離れ』である。

 高校にあがってから彼の行動範囲はぐんと広がった。今までは親と一緒でなくては行けなかったゲーセンにも、電車に乗ってオフ会のための都会行きもこなす。

 もはや親が管理できる距離を越えて自分自身の道を模索し始めたのだ。

 正直に言うと、アザとーのほうが寂しがっている。親子というよりは友人のような関係であるがゆえ、息子は俺の良き相棒だった。

 アザとーがボケれば息子がツッコむ……そんな相方がピンで活躍する様は、その成功を祈ると共に大きな喪失感との戦いでもある。


 それでも出来が悪い母親であるがゆえ、人一倍願っている。

 行動範囲の広がった彼にはこれから様々な困難が降りかかるのだろう。俺の及び知らないところでトラブルに巻き込まれることもあるに違いない。そんなときに頼りになるのは『遠くの親より近くの他人』。

 アザとーだって人生のトラブルの全てを親だけに助けてもらったわけではない。友人や知人、時には通りすがりの見知らぬ人に助けられた事だってある。これ全て出会いのなせる業ナリ。

 出会いこそが人生における何よりの宝だ。

 誤解されやすい彼の性質を理解してくれる友人が常に在るように、困難にぶつかったときに手を伸べてくれる人との出会いがあるように、そして、そんな出会いに感謝して自分も誰かに助けの手を伸べることの出来る『男』であるように……

 そう祈ることだけが、母親失格である俺が与えてやれる唯一の愛情なのだ。


息子編はここまで!

この後、娘編を不定期で少し書こうと思っています。

御用とお急ぎで無い方は引き続きよろしくお願いいたします。

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