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第9話

一方、美幸は雅夫の会社に電話をしていた。

『はい。ヤマト商事でございます』

『電算室の大下さんをお願いします』

『失礼ですが、お名前は』

『山中と言います』

『お待ち下さい』

しばらく待たされて、

『お待たせしました。大下は休暇を取ってますが』

『そうですか…じゃあ、総務の西山さんお願いします』

『しばらくお待ちください』

さっきよりは待ち時間は少なかった。

『はい、西山です』

『お久しぶりです。山中美幸です』

『…美幸ちゃん?。久しぶり、元気?ラジオ聞いてるよ』

『聞いてくれてるんだ。ありがとう。こっちは元気過ぎて困ってるよ』

『今日はどうしたの?ウチでバイトでもする?空きあるよ』

『降板したらお願いするかも。大下君、休暇取ってるんだって?』

『ああ、今日から2週間ね。東京に行ったよ』

『観光?』

『いや、例の高校から引きずってる彼女に会いに行くって。この話知ってた…よね?』

雅夫は舞がこの世にいないことを知らない。

『そ、そうなんだ』

『携帯はあの頃と同じだから電話したら通じるよ。番号わかる?』

『わかるよ。ありがとう』

『今度飲み行こうよ』

『そうね。スケジュールが合えばみんなで行こうね』

『じゃあね』

『はーい』

タイミングの悪さに、美幸は溜め息をついた。

『どうだった?』

『麗奈ぁ、大下君は東京に行ったって。お母さんを捜しに』

『えーっ、うそ〜。お母さん死んじゃってるのにどうやって捜すのよ。私、東京に帰るっ』

『麗奈が帰ったら、またすれ違いになるよ』

『…だよね』

美幸は雅夫の携帯に電話をかけた。

…お客様のおかけになった電話は電波の届かない…

『あのバカ、つながんないし…麗奈、私が責任持って大下君に会わせるから待っててね』

『うん、ありがと』

時同じくして、東京の雅夫は律子に今までの経緯を話していた。

『舞ちゃん先輩とそっくりの女の子か…先輩はそれが気になるんだ』

『りっちゃんも見たら絶対びっくりするって。ほとんど同一人物…ていうか。きちんと謝らなければいけないことがあってさ』

『何を?』

『…叩いたこと』

『だって、あれは舞ちゃん先輩が悪いんだから叩かれて当然だよ』

『りっちゃんだけだったね。オレの肩を持ってくれたのは』


……

舞が卒業する間近の2月、雅夫は呼び出された。

『まーくん…』

『どうしたの?』

いつになく、舞の表情が曇ってる。

『私、好きな人ができたの…』

『…マジ?誰?』

『他の学校の人なんだけど、車持ってんの』

『車…?』

『…だって、まーくんは車持ってないじゃん』

『そんな事言われたって、18になってないし』

『私は車の助手席に乗りたいのっ』

『18になったらすぐ免許とるからさ、それまで待っててよ』

『そんなに待てないよ。それに私、その人とエッチもしちゃったんだよっ』

雅夫は頭が真っ白になっていた。訳の分からない間に、

パシッ

雅夫の右手は舞の頬を叩いていた。

『帰れよ。顔も見たくない』

舞は何も言わずに帰って行った。

……


『結果だけ見れば、確かに舞ちゃんが悪いんだけどね』

『どういうこと?』

『お母さんに別れるように言われたらしい』

『どうして?』

『別れた後で唯姉ちゃんから聞いたんだけど、親の職業が違いすぎて住む世界が違うから別れなさいって。舞ちゃんは相当悩んだ末の行動だったんだよ』

『そんなのあり!?』

『オレを傷つけまいとして、自分を悪者に仕立て上げた…車持ちの彼は存在しなかったってわけ』

『そうだったんだ…私、先輩達は絶対結婚するって思ってたのに』

『お互いそのつもりだったよ。お母さんがそれを察して、このままじゃマズいって思ったんじゃないかな』

『お母さんって古臭い考えをしてたんだね』

『で、舞ちゃんはどこにいるの?』

『私が上京した時に、渋谷で偶然に会ったの。その時に住所を交換したんだけど。これがその時のメモ』

舞が書いた文字で住所と電話番号が書かれてる

『電話は?』

『使われておりません…だって』

『この住所の調布って所までどれくらいかかるの?』

『特急で30分くらいかな』

『今から行こう』

雅夫と律子は調布に向かった。



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