第30話
新年は、雅夫の実家で迎えた。
『明けましておめでとうございます』
『今年もよろしくお願いします』
各々、挨拶を終わらせると、
『麗奈さん』
雅夫の母がお年玉を渡した。
『あっ、そんな…私は…』
『うちでは、20歳までお年玉をあげることになってるのよ』
『まーくん…』
『せっかくだし、もらっとけば?』
『これは、麗奈さんの為に使ってね。生活費は雅夫が稼いでるんだから』
『ありがとうございます』
『みんなで初詣に行こうか』
近くの神社にやって来た。
『明けましておめでとう』
健四郎一家も来ていた。
『今年もよろしく。相変わらず奥さんお綺麗で…』
『なにバカ言ってんのよ』
健四郎の妻は後輩の綾子だ。かれこれ20年来の付き合いになる。
雅夫は麗奈を呼んだ。
『紹介するね。今度結婚する麗奈』
『麗奈です。よろしくお願いします』
健四郎と綾子はびっくりした。
『ほんと、うり二つだよ』
『桜田先輩にそっくりね』
『そりゃ、親子だからね』
『お前が惚れるのも無理ないな』
『麗奈ちゃん、仲良くしてね』
綾子が言った。
『はい、こちらこそよろしくお願いします』
『じゃ、会社で』
『じゃあな』
健四郎らと別れて、お詣りをした。
『まーくん、何をお願いしたの?』
『麗奈ちゃんが浮気しませんようにって。麗奈ちゃんは?』
『まーくんの生命保険が早く受け取れますようにって』
『新年早々ボケまくりだね』
『えっ、私マジだよ』
『……』
『もう、そんな訳ないでしょ?まーくんといつまでもラブラブでいられますようにってお願いしたよ。それに、お願いしなくても浮気なんてしないよ』
『オレもほんとは、仲良く暮らせますようにってお願いしたんだ。神様がやきもち妬くから帰ろうか』
『うん』
2人は家に帰って行った。
『ばぁさん、あの2人、わしらを忘れてるよ』
『それ位仲がいいってことなのよ。お父さん』
両親も家へ帰って行った。
親戚に挨拶を済ませ、雅夫と麗奈は自宅に戻って来た。
『疲れたね』
『うん、やっとまーくんと2人になれたよ』
『これから親戚付き合いが大変だと思うけど、よろしくね』
『今までそういうの全然なかったからね…一つ一つが勉強になるよ』
『そう言ってもらえると気が楽だよ』
『あっ、そうだ。麗奈ちゃんに書いてもらいたいものがあるんだけど』
『私、字上手くないよ』
『上手下手は関係ないよ。要は気持ちかな?』
雅夫はカバンの中から婚姻届を出した。
『これは…』
『一緒に住んでるし、入籍は先に済ませたほうがいいかなって』
『私達、これで正式に夫婦になれるんだね』
『引き返すなら今のうちだよ』
『まーくんは、どうなのよ?』
『オレは、この前も言ったけど、麗奈ちゃんと初めて会った時から結婚するつもりでいたし』
『誓いますか?』
雅夫は右手を挙げて言った。
『はい、神と舞ちゃんに。麗奈ちゃんはどうなのよ?』
『私はまーくん結婚とする為に生まれて来たから』
『誓いますか?』
『はい、神様とお母さんに』
『では、誓いのキスを』
チュッ
『もしかしたら、私達ってバカップル?』
『バカップルじゃなくて、宇宙一ラブラブなカップルだよ』
『出た!まーくんお得意の宇宙一シリーズ』
『これ書いたら明日、一緒に役所に出しに行こうね』
『うん』
翌日、2人で婚姻届を提出し、桜田麗奈から大下麗奈になった。
『大下麗奈か…なんか照れくさいな』
『死ぬまでこの名前でいくんだよ』
『そう考えると緊張してきた。でも、まーくんの奥さんとして生きていけるんだもん。最高に幸せだよ』
『ありがとう』
『それだけ?』
『他に何?』
『欲しい服があるんだ。入籍記念に買って欲しいなぁ』
『お年玉もらったじゃん』
『あれは、貯金しとくの』
『よっ、しっかり者の奥さん』
『レッツゴー!』
2人は少し遅めの初売りに出かけていった。