第27話
福岡に戻ってきた2人は、雅夫の実家に行った。
『ただいま』
『おかえり…って…あら、あなたは』
『先日はありがとうございました』
『紹介す…』
『桜田麗奈です』
麗奈は自己紹介した。
『覚えてるかなぁ、高校の時によく遊びに来てた…』
『はいはい、唯一あんたの彼女だった桜田さん?』
『唯一は余計だよっ』
『その娘です』
『おいくつ?』
『16です』
『お母さんは元気なの?』
『あとで話すよ』
『私が中1の時に亡くなりました。こういうことは、ちゃんと話しておかないとね』
『しっかりした娘さんだこと。ところで、あんたが来るってことは何かあるんでしょ?』
『オレ達結婚することになりました』
『えっ!?ちょっとぉ、お父さ〜ん』
『うるさいなぁ、そんな大声出さなくても聞こえるっての。おや、雅夫、おかえり』
『お邪魔してます。桜田麗奈です』
『こりゃまた綺麗なお嬢さんだこと』
『結婚するんだって』
『誰が?』
『この2人が』
『…ばぁさん、ぼ〜っとしてないで酒、酒。あと、寿司頼んで』
両親のドタバタに雅夫と麗奈は顔を見合わせて笑った。
麗奈と両親は打ち解けた様子で、ひとまず雅夫は安心した。
『麗奈さん、雅夫をよろしくお願いしますね。私達を実の親と思って何でも言ってくださいね』
『ありがとうございます』
『上の部屋、掃除しといたから』
『ありがとう』
『片付け手伝います』
『今日はゆっくり休んで、明日の朝、一緒にご飯作りましょう』
『はい、おやすみなさい』
『おやすみなさい』
『ごめんね、なんか漫才みたいな両親で』
『ううん、ほんと面白いよね』
『疲れたろ?』
『大丈夫だよ』
『あっ、そうだ。確かここに…あったあった』
戸棚の奥から小さな箱を取り出した。
『左手をだして』
『こう?』
雅夫は麗奈の薬指にダイヤの指輪をはめた。
『よかった。サイズぴったりだ』
『これは?』
『小6の時に死んだおふくろの形見』
『まーくんのお母さんも亡くなってんの?』
『うん、今いるのは高校んときに親父が再婚した人』
『そんな大切な物…』
『大切な物だからこそ、麗奈ちゃんに持ってもらいたいんだ。これがオレの精一杯の気持ちだよ』
『まーくんの気持ちに応えれるように、私、頑張るね』
雅夫は麗奈を抱き寄せた。
『私、お母さんを超えられるかなぁ』
『もう、超えてるよ』
『ほんとに?』
『うん』
麗奈と雅夫の母が朝食を作っている。
『料理が凄くうまいのね。私が教えること何もないわ』
『そんなことないですよ。母から教わってないこと、山ほどありますから』
雅夫が起きてきた
『おはよう』
『おはようさん』
雅夫の父も起きてきた。
朝食を済ませ、麗奈が片付けをした。
『家はどうすんの?』
『当分は今の所に住むよ』
『式は?』
『日取りは1月28日で決めてる。場所はこれから探すよ』
『そうかい』
『そろそろ帰るわ』
『お邪魔しました』
実家を出て、
『ちょっと寄りたい所があるんだけど』
『どこ?』
『この前行った学校』
『どうしたの?』
『この事を話さなきゃいけない人がいるんだ。麗奈ちゃんは車で待ってて。後で呼びに行くから』
『うん』
高校に着いて、校舎に入って行った。休日の静けさの中に、楽器の音が響いてる。
事務室で呼び出してもらい、唯が音楽室から下りてきた。
『あーっ、雅夫君?』
『お久しぶりです。唯先生』
『もぉ、先生はやめてよ。恥ずかしいな。まぁ、立ち話もなんだから』
会議室に通された。
『何年振りかしらね』
『かれこれ17〜8年になりますかね』
『元気でやってるみたいだね』
『お陰様で』
『で、どうしたの?』
『実は、会ってもらいたい人がいて』
『誰?』
『車で待たせてるんで、連れてきますね』
麗奈を連れて、会議室に戻ってきた。