表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

第14話

翌朝、チェックアウトの準備をしてると、律子から電話がかかってきた。

『福岡までの飛行機のチケットとっといたよ』

『ありがとう。もうすぐ下に行くよ』

フロントで精算を済ませ、律子がチケットを渡してくれた。

『助かったよ。ありがとう。元気でね』

『先輩もね。今度帰るから、みんなで飲み会をしようね』

『おぅ、連絡待ってるよ』

『先輩…』

律子が涙目になっている

『どうしたの?』

『……ううん、何でもないよ。行ってらっしゃいませ!』

『じゃあね』

雅夫はホテルを出て駅に向かった。

飛行機のチケットが入っていた封筒に、手紙が入っていた。


〔先輩が舞ちゃん先輩を大好きなように、私も先輩が大好きだよ。ず〜っとね〕

律子の気持ちは薄々感じていた雅夫だが、舞のことが頭から離れない。律子が東京に行ったせいもあり、雅夫も距離をおいていた。

『りっちゃん…ありがとう…』


飛行機の機内で、雅夫は舞との思いを巡らせていた。

『そういえば、2人で別府に旅行に行ったよなぁ』

雅夫が高校2年の夏休み、部活の合宿と嘘をついて舞と別府へ旅行に行った。

『まーくん、親にバレないかなぁ』

『バレたらバレた時。一緒に謝るよ』

『お父さんに殴られるかも』

『それで許してもらえるなら我慢するよ。大丈夫だって。最初に約束したじゃん。舞ちゃんを大事にするって』

『私、怖い』

『何で?』

『まーくんがいつか私を嫌いになっていくんじゃないかって』

『有り得ないよ』

『おばあちゃんになっても?』

『うん、白髪で腰が曲がって入れ歯になってもずっと愛し続けます』

『じゃあ』

舞が小指を出した。

『指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲〜ますっ』

『約束だよ』

『舞ちゃんもオレがボケてハゲても一緒にいてよ』

『え〜っ、どうしよっかな〜』

『何だよ、それ』

『うそうそ、まーくんが死ぬまで一緒にいるよ』


『死ぬまで一緒…か』

親の職業の違いで成就できない恋愛。何か古めかしいが、どこか‘家’を重んじる独特の悪しき伝統が根付いてるものだ。


雅夫を乗せた飛行機は福岡空港に着陸した。到着ロビーに出たところで、健四郎から電話が来た。

『よっ、着いたかい?』

『ああ、今着いたところ…って、よくわかるなぁ』

『三沢から何時に着くか聞いたからね』

『行動を読まれてるってあまり気持ちいいもんじゃないな』

『どうだい、軽く一杯?』

『いいねぇ』

『早く来いよ。いつもの所で待ってるから』

家に戻り、荷物を置いた雅夫は居酒屋に向かった。健四郎は既に一杯やってた。

『よっ、今日はエラく早いな。あっ、生ビールちょうだい』

店員が突き出しと生ビールを持って来た。

『乾杯っ』

雅夫は一気にジョッキを空けた。

『東京での収穫は?』

『うん、舞ちゃんに子供がいるらしいってとこまではわかったけど…』

『結婚してたの?』

『自ら破談にして1人で育ててる…らしい』

『シングルマザーってやつ?』

『うん、それ以上のことは分からずじまい』

『そっかぁ。そういえば、美幸ちゃんから連絡あった?』

雅夫は焼酎を頼んだ。

『あったよ。明日、鶴見岳で会うことになってる』

健四郎も焼酎のお代わりを頼む。

『何で鶴見岳?』

『知らないよ。俺が聞きたいよ』

『ヨリを戻そうって言われたりして』

『あんな別れ方したんだから、それはあり得ないよ。とにかく、明日行ってみるよ』

『休みはまだまだあるし、ついでに温泉にでも浸かってくれば?』

『そうだな』

他愛のない話をして、2人は店を後にした。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ