序章 その世界では
創世歴八六九年、大陸中で魔女狩りが最も過激な年であった。
当時最も栄えていた国の王が、それはそれは占いを盲信する男だった。そして占い師の間で定説であった『魔女の血を飲むと不老不死になれる』を信じたために、大陸中で魔女が襲われ生き血を抜き取られる惨劇が繰り広げられた。
神話の時代からその姿が確認される魔女は、減少の一途を辿っていた。それは、彼ら彼女らの厳格な信仰心によるもので、庶民の間ではそれを「純血主義」と呼び蔑んだ。
それに重なるように起こった魔女狩りは、魔女の希少さが拍車をかけ、一部では「魔女狩りギルド」という組織まで設立。その王が病死するまでの二十年間で、約二十万の魔女が磔にされたままその首に鎌を当てられ、干からびるまで野晒しにされ続けた。二十万という数はそう多くはないが、魔女の総数から鑑みると、結果としてそのほとんどを占める数となっていた。
その後人里で生きる魔女たちは、その他の魔女がそうするように身分を偽り隠居するようになる。あるものは人里を離れて農夫へ、あるものはその信仰心から修道女へ。しかし、彼らの中に深く根付いた信仰心は、凄惨な出来事を経ても変わることなく純血主義を守り続けた。その点で、生き延びた魔女のほとんどは聖職者となった。人里離れた、影の大きな教会は彼らにとって良い隠れ家となった。
一方、人間と交わる魔女もいた。理由はさまざまであった。それは生き延びるためであったり、純血主義を持たないためであったり、稀に人と恋に落ちる魔女もいた。
しかし、人里で生きる魔女はそのほとんどが常に居場所を追われ続けた。それは、主に魔女は長寿であるからである。
神話の時代の壁画には、常に魔女は年老いた容姿で描かれている。それは、実際にそうであったのではなく魔女を象徴する姿であった。彼ら彼女らは、常に人間よりも年老いており、訳のわからない術を使い、気味の悪い信仰心を持つ。その印象が、魔女の姿をそうさせた。実際には、魔女は人間の寿命を引き延ばしたように、百歳でも二十歳やそこらの容姿をしているし、人によっては十代の容姿の魔女もいる。老人の姿の魔女の年齢は、本人以外に確認しようがない。
※本作は、コンテスト、新人賞に出展する為に書いております。
※全3章を予定しており、一章は毎日12時に3話ずつ、二章以降は、毎日同時刻に1話ずつ公開を予定しておりますが、変更の可能性があります。
※最終推敲前の、ある程度の客観的評価を把握するために投稿しているので、多少粗があるかもしれません。




