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翌日になると、約束通りに義母がやってきた。僕の部屋を見て驚いたのか、義母は呆けたように呟いた。
「あら、綺麗ですね……」
「ええ、昨日掃除したんです」
僕は苦笑しながらそう返した。
昨日まで散らかっていた空き缶や弁当の容器を綺麗に片付け、水拭きまでしてみた。この部屋に住んでいる僕をして、こんな部屋だったなと思い出すほどだった。
義母はソファに座ると、色々と聞いてきた。ご飯は食べているのか、仕事は辛くないか、体調は悪くないか。
「今日は変なこと聞くんですね」
「いつも聞いていましたよ。掃除もしてご飯も作っておいたけど、食べてくれた?」
「……いつもですか」
「そうよ、あの娘が死んでから私が……ごめんなさい」
義母は失言したとばかり、はっとして口元を抑えた。
「ありがとうございます。それより、久しぶりに聞いていきませんか?」
言って、僕はギターを引っ張りだして義母に見せてみた。
そうすると、今度は顎が落ちてしまったみたいに口を開けた。
「昨日、久しぶりに弾いてみたら、まあひどいものでした。だけど、これがまた楽しいんですよ。昔もあいつとこうやって練習してたので」
「……もう大丈夫なの?」
「何がですか?」
「だって、あの娘が……いなくなってから、ずっと触ってなかったのに」
僕はまた苦笑いすると、黙ってギターを弾き始めた。無心で、何も考えずに曲を完成させることだけを考えて。
もう、彼女の歌は聞こえてこないのに。
僕が弾き終えると、義母はまるで昨日の僕みたいに泣き始めた。僕はそれをなだめたり背中を擦ったりして、ぼんやりと考える。
大丈夫かって、きっと僕はもう大丈夫なんだと思う。非情なほどに。
いつまでも彼女を見ていたかったのに、僕はギターを弾いてもなんともなくなってしまった。それどころか、楽しさすら感じる余裕まである。
そりゃあ、義母だって泣くはずだ。我ながら、なんて薄情な人間だ。
月曜日になると、いつもの日常がやってくる。
けれど、どうしたことだろう。仕事をしていても、いつものように集中できない。仕事中は仕事のことしか考えられなかったのに、今は家のことやギターのことばかり考えている。
僕は休憩時間になっていないにも関わらず、椅子に体重を預けて天井を仰いだ。
どうにも集中できないな。
「サボりか?」
僕の様子を見かねたのか、上司が隣へやってきた。
「そういうわけじゃないんですけどね」
「そろそろ、病院を紹介しようと思っていた」
「ああ、そういうのじゃないですよ。ただちょっと、集中できないだけです」
僕は伸びをしてから、上司の方を見てニヤリと笑った。
「仕事ってめんどくさいなって思ってただけです」
「……有給、使うか?」




