AIと格闘しながら長編小説を書き上げた22万字をバッサリ添削されてしまう
兄妹の異世界譚~妹は魔族に助けられ、兄は勇者として無双する~(Nコード:N0660LF )の制作裏話と私のAI活用術を解説します。作品にAIを取り入れる一つの事例として参考になれば幸いです。
10万字を超える作品を長編と言わせてもらえるなら、今回2作目となるこの作品は、チャットAIをアシスタントとして活用した事が大きな変更点となります。
最初の段階で、「兄弟」「異世界転移」「ハイ・ファンタジー」は決めていましたが、前作が兄と弟の物語だったので、今回は兄(勇斗)と妹(玲奈)にしてプロットを作り始めました。
■ AIとの出会いと、自作ツールの開発
チャットAIはある程度、キャラクターや設定を入れないと、思ったように働きません。まずは3つのワードから、思いついたお題を出して、どんなストーリーが想定できるのか、たたき台を作ります。
チャットAIはMicrosoft社のCopilotです。当時はサブスクリプションに加入していた事もあり、GeminiよりCopilotをメインで作業していました。
OneNoteに設定を保存し、一太郎2025で整理しながら原稿を書き、それをCopilotで添削する流れになります。1話分を仕上げたら、Google AI Studioのアプリで添削をかけます。AIの二段構えにしたのは、Copilotに限らず、チャットAIは長い話が苦手という事につきます。
そこで私は、Google AI StudioのBuildで「AI Novel Editor(非公開)」という添削アプリを作成しました。
ジャンル、投稿サイトを選び、アイデアノート(プロット)、主要キャラクター、世界観、ターゲット層と文体、質問、といったテキスト枠に入力し、原稿を本文に貼り付け添削依頼のボタンを押す。
これでGeminiが編集者として、タイトル、キャッチフレーズ、ジャンルやタグ案、全体的な感想、シーン評価、キャラクター描写、文章表現と世界観について、さらに改善点と「改善稿」を回答してくれます。
改善稿は一部ではなく、本文全部を原稿として読める形で出力するよう修正しました。また本文を長文にすると割愛されるので、約2500字単位で区切って精度が落ちないよう設計しています。余談ですが、3万字を投げたらコンテキストの無料枠を使い切り実行出来なかったため、AIモデルをProとFlashから選択できるように修正しました。
アイデアノートとはプロットの事で、全体のあらすじをシーンタイトルや場所ごとに管理できるよう設計し、主要キャラクターも1キャラごとにテキスト枠を分離して管理できるようにしました。放置しているとデータが消えてしまうGoogle AI Studioの仕様対策として、ローカルにTXTファイルで保存・読込させる仕組みも実装しています。
当時出てきたばかりで誰でも無料で使えるGoogle AI Studioを活用し、日本語で大まかに指示するだけで自分専用アプリが作れてしまう衝撃に、私は思わず胸の前で手を組み、天を仰ぎました。
■ AI特有の「忘却」と「捏造」にどう立ち向かうか
チャットAIで名前、アイテム、情景のやり取りをして履歴が残っていても、いざ1話分の原稿をまとめて添削をかけると、前後の話を忘れたり、捏造したり、なんでもありになります。
キャラクターの骨格は乱れ、謎のキャラクターがほくそ笑みながら余計なセリフを喋りだし、状況の不足分を補おうと勝手に解説を始める。これは小説を書く上での致命的欠陥となります。
かと言って、その都度設定ファイルを読み込ませるのは手間ですし、資料作りも大変です。私はあの手この手でAIを制御しようと試みました。
ここからは残された資料を見返しながら書いているので、一部妄想が入っていることをご理解ください。
最初は「お題」と称してAIに起承転結を考えてもらっていました。
お題:仲の悪い兄と妹が異世界転生してしまい、地球に帰還する方法を探して旅をしていく間に、仲直りするファンタジー小説。
しかし、出力されたものは非常に平凡なストーリーでした。
そこでストーリーは諦め、世界観やキャラクターの設計に移りました。
「兄と妹の性格は正反対にしたい。面白い設定は?」「異世界ファンタジーの世界観は剣と魔法、科学、他に何が必要?」
AIとの対話を通して、徐々に世界の輪郭がハッキリしていきます。まずキャラクターを動かし、その動きに合わせて名前、性格、容姿、経歴を後付けで広げていく手法をとりました。時には街の大工の親方を出し、時には謎の少女クラリスを登場させました。
とにかくキャラクターの名前が被らないよう大量に作ってもらいながら、試行錯誤を繰り返しました。
※参照テキスト(資料1:初期設定版)
この頃の私は、小説を書くよりも「AI小説を作るためのルール」を模索していたような気がします。
■ 「なろうフォーマット」とAIへの指示方法
同時に、チャットAIにどう指示するべきか、なろう小説ならどう書くべきかなども相談しました。
Copilotは、履歴のキャラクターや世界観を使って、マークダウン記法が有効だと回答してくれました。
▼小説家になろうフォーマットのポイント
・改行・空白:会話ごとに改行。地の文も適度に開けて読みやすく。
・読者層意識:男性向けの冒険要素に加え、兄妹の絆や葛藤を丁寧に描くことで女性読者にも響く。
▼フォーマット運用に関する回答と提案
・見出しを使って「これは何の指示か」を明確にすると理解と処理精度が上がる。
・「#」で見出し1(大分類)、「##」で見出し2(細かい項目)、太字(**)で強調。
・1話が長い場合は「1-1」「1/3」などで分割して指示する。
私は最終的に、「#キャラクター・世界観設定」「##設定変更・追加」「**部分添削**+**シーン解説**」といったルールに落ち着きました。
面倒くさいと思われるかもしれませんが、基本的にチャットAIとのやり取りは相談&回答です。「今日は暑い」とか「俺はカルピスは濃いめが好き」とか、日常会話を挟みながらでも問題なく添削してくれます。
どこまでAIにやらせるかを自分で調整しながら、シーンごとに決めればいい。完全完璧な文章を出力させる必要はなく、出てきた文章を切って貼って、自分が納得するように修正すればいいのです。創作は自由であり、自分の匙加減次第です。
■ プロット崩壊と怒涛の脱線地獄
執筆が進むにつれ、綿密なプロット作成は私には不可能だと悟りました。なぜなら、プロット通りにシナリオが進まないからです。
<第一プロット>から<第二プロット>、そして<第三プロット>へと変遷していく中、本編で言う第8話辺りからGoogle AI Studioを本格的に導入しました。Geminiの改善稿は衝撃的でしたが、同時に「怒涛の脱線地獄」の始まりでもありました。
※参照テキスト(資料2:第三プロット版)
「ヴァルドは現魔王であることを隠している」という設定を途中で削除したにもかかわらず、AIから最後まで「伏線未回収です」と指摘され続けました。資料をコピペで済ませていたツケが回り、変更の連続で本当に頭を悩ませました。
そこで私はGoogleドキュメントで設定と原稿を分け、NotebookLMに追加して管理するようにしました。タブで頭出しでき、客観的な相談も可能になり、非常に便利でした。設定は既定のフォーマットを最初に作り、きちんと管理すべきだと痛感しました。
**■ 22万字の原稿が18万字に**
私がCopilotで書いた原稿は、最終的に22万字を超えました。
しかし、それをGeminiで添削し、小説家になろうに投稿した実際の原稿は18万字弱。約4万字が削ぎ落とされてしまったのです。
これが正しかったのかは、最終話リリース後のアクセス数の結果次第です。前作を上回る結果になれば嬉しいのですが……。
本日は長い時間お付き合い頂きありがとうございました。面白いと感じたら、下に表示している星評価、感想、アクションなど頂けるとハゲみになります。




