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唯一無二になりたくて

「知らないですよ。というか、高血圧にならないように、気を付けてくださいね、バナナで滑った先生♪」



彼女は先生を嘲笑うようにそう言って、走って去っていった。



僕は、そんな彼女を見ていて、問題児で良くないなと思うと同時に、少し羨ましく感じていた。


重い足を持ち上げて、俺は歩き始めた。


階段を下りていくと、先ほどの女の子が電話をしながら、走って、僕とすれ違った。



「え!左を曲がったところの実験室に行け?」



大きな声で話す彼女に、僕は興味をもった。


もしかしから、僕もあの女の子のようになれるのではないかと。


僕は、期待を胸に女の子を追いかけてみることにした。


 追いかけていると、女の子は一階の階段下で止まった。


しばらくすると、その女の子と、もう一人の女の子が不良を追い詰めていた。


もう一人の女の子は、カメラを構えていて、僕が追いかけた女の子はバッドを持っていた。


僕は、怖くて壁に隠れて見ていた。


「おい、お前ら!自分たちがやっていること、どんだけ他人に迷惑かけてんのかわかってんのか?」


バッドを持ってる女の子はすごい形相で不良たちを睨んでいた。


「す、すいません!」


不良たちの顔は、恐怖で染まっている。


「マリ、そろそろやめな。見てる人だっているから。」


そう言って、カメラを構えている女の子は、マリと呼ばれている女の子を制した。


「ちぇ~。しょうがねえの。お前ら、今度こんな真似したら、どんなことに何のか分かってんだろうな!」


「は、はい!」


「だったら、今すぐ散れ!」


そう、マリが叫ぶと不良は逃げ出していった。


「んで、そこにいるのは誰なの?」


知らない女の子が僕に声をかける。


薄暗い階段下で、僕は顔を出すか悩んでいた。


もし顔を出したら、さっきの不良のように僕も〆られるんじゃないか。


そんなことを考えていると、マリが声をあげた。


「何?ビビりなの?」


そんな強気な声に気圧されてしまう僕は、臆病者だろうか。


信じたくない。


でも、事実として僕は、彼女のようにわざとみんなが歩む道から踏み外すことはしていない。


いや、できないのだ。


だから、先ほどのマリと呼ばれている女の子の行動を見て羨ましく思ったのだ。



「早く出てこいや!」


「あ、あの!」


僕は、マリが声をあげるのと同時に、絞り込むようにして声を出した。


声を出すと同時に、僕はひょこりと少し顔を出した。


「どうしたら、そんなにかっこよくなれるんですか!」


二人とも驚いた顔でこちらを見ている。


でも、僕の話を少しも遮ろうとしない。


「僕、この世界がおかしいと思うんだ!人の個性をなくそうとするなんて、そんなの。そんなの、僕は認めることできません!」


さっきまで、驚いていた二人は、真面目な顔をして僕が話し始めるのを今か今かと、待ち望んでいる。


「僕のお母さんは、僕に小さいころから言い聞かせてきたことがあったんだ。」


『ゆうと、何か一つでもいいから得意にしなさい。そうするとね、自分に自信が持てるし。何よりも、唯一無二の存在になれる。』


『ゆいつむにの?』


『そうよ。』


「僕は、その時お母さんが教えてくれた『唯一無二』という言葉に憧れた。魔法のような言葉で、あの時も今も僕の心を明るくしてくれる。」


マリがうんうんとうなずく。


「でも、そんな風に、幼い僕を諭してくれた母は、もうどこにもいない。あの時のお母さんは、この間の正月の放送でいなくなってしまった。僕のお母さんは、周りの意見に簡単に押し流されてしまった。」


自然と声が暗くなる。


「僕は、そんな風に簡単に折れて、世の中という巨大なロボットの一つの部品になりたくない。だって、あの時からずっと僕は、『唯一無二』の存在になりたくって、頑張ってきたから。そんな、勝手に決められたルールなんかに縛られたくないんだ。だから。」


興奮のあまり、早口になってしまっていた。でも、これは僕の大きな人生の転換点だ。大きく、息を吸う。






「僕の計画に、協力してくれませんか?」






いつのまにか流れていた「それ」は、僕の頬を愛おしそうに撫でて、静かに床へ落ちた。


一度溢れてしまった「それ」は、もう戻せない。


それでも、僕はこの行動を悔いることはないだろう。


 僕は、先ほど二人が僕に向き合ってくれたように目を反らさずにじっと見つめる。


話していても思ったけど、二人は周りの人間とは、違う。


周りの人間は、僕の考えを話していても、奇妙なおもちゃを見るようにして、無遠慮に土足で僕に踏み込んでくる。


そして、話して終わってからその人と接すると、僕の中に巣食う欲望とも夢や希望ともいえる怪物を覗き込むように僕を見る。











「え~、面白そうな奴だね。私は、気に入った。」


そう、マリは笑って、僕に肩を組んで言った。

しばらくはこっち更新します!完結したら、「物の声聞こえる能力を隠して生きてたのに、厄介な女子にバレて事件に巻き込まれました」も再開します!お楽しみに!!

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