全てのの始まりはここから
僕は、三人がワイワイと騒ぎながら、今日の活動内容を決めているところを見て、微笑ましく思っていた。思えば、僕等が知り合ったのはつい三か月程前だった。
事の始まりは、七か月前の年越しの時のことだった。
僕は、毎年恒例の「紅白歌合戦」を家族でのんびり見ていた。
みんなで、蛍の光を歌い、気づけば番組は「ゆく年くる年」に変わっていた。
眠くて、目を擦りながらテレビを見ていると、重々しい除夜の鐘が鳴っていた。
家族で年越しの挨拶をしていると、あっという間に除夜の鐘が鳴り終わっていた。
そして、そろそろ寝ようかとなっていたその時、番組が急に変わった。
誰かがチャンネルを変えたわけではなかった。
両親も想定外のことだったらしく、間抜けにえぇ?という声を出していた。
俺もテレビの画面をよく見ていると、映し出されている場所はどうやら政見放送の会場のようだった。
しばらく見ていると、画面に見慣れた顔のおじさんが出てきた。
画面の真ん中で一礼してから、話し始めた。
そこから、先はあまり覚えていない。ただ、両親は感動して
「これから、税金も減って、収入が増えるなんて、そんなの夢みたい!!ねえ、ユート!」
と叫んでいた。
僕は、そんな夢みたいなこと絶対あり得ないと思っていた。
なんとか、その政治家が言っていたことを否定するため、証拠を集めることを始めた。
まず初めにもう一度、映像を見直してみた。
すると、一つ見落としていたところを見つけた。
「我が国は、今年度から国民大量生産政策を施行する。」
日本国民大量生産政策とは、経済を良く回すために、国民を一括に管理するという政策だ。
分かりやすい例で言うと、こんな事だ。
仕事、並びに学業は八時半きっかりに始めること。
部活動は、一切禁じることとする。
テストはみんなが百点満点を取るまで、やり続けることなど。
ふざけるな。そんな非効率なことをやって誰が幸せになる。
誰が笑顔になる。そんなの“普通“という区分に入っていない人だけを世の中から取り除くだけじゃないか。
だが、それだけではなかった。
「これらの規則を違反したものは、政府主体で、徹底的に押さえつける。処罰方法としては、社会的抹殺、死刑に限る。」
こんな世界、絶対に間違っている。僕は、そう思った。
みんなと一つでも異なることがあれば、その人を責めたてる。
そんなこと、あってたまるだろうか。
僕は冬休みが明けるまで、自分の部屋に閉じこもっていた。
この国民大量生産政策とかいうものを受けいれている世界自体に嫌悪感を抱いていたからだ。
親に言っても、信じてもらえなかった。そんなわけないだろうと。
みんな過信しているんだ。社会が、社会に従う自分たちが何も過ちを犯してないと。
僕は、一つ大事なことを思い出し、パソコンを起動させた。
電源が入るなり、あるサイトを検索してみる。
すると、僕が想像していた状態になっていた。
そのサイトは、誰でもネットに投稿することができる、いわば有志活動ができるものだった。
しかし、年越しの放送によって、そのサイトは閉鎖されることになっていた。
サイトのホームでは今までありがとう!という言葉が全面的に出されていた、そして、公式がやっている生放送の画面ではたくさんの人々のコメントが流れていた。
「今までありがとう!」
「十一年間、私の居場所でした!視聴者のみなさん、今までありがとう!」
などなど、多くの感謝や、別れを惜しむコメントがあった。
僕自身も、このサイトによって救われた一人だった。
このサイトに溢れていた、多くの人の個性や、情熱、愛情が大好きだった。
なのに、こんな仕打ちはあんまりだ。悔しくて、涙が出た。
でも、この世界で声を上げてもきっと誰にも届かない。
それどころか、「僕」という存在自体がなかったことにされてしまうかもしれない。
そんな、不安が僕の頭を通り過ぎる。
じゃあ、今の現状に対しての不満をどこに吐けばいいのだろうか。
誰に言ったら、今の状況を変えることが出来る?
僕が、考えている間に、時は過ぎていき、四月になった。
僕は、四月になってもどうすればよいのか分からず、悶々と悩んでいた。
そして、ある日の放課後のことだった。
僕が変われれたのは。
あの時僕は、憂鬱な気持ちの中リュックを背負って、教室を出た。その時、
「お前!この間のやつだな!!」
先生の怒号が飛んできた。
僕は、驚いて窓から外を見ると、一人の先生と女子生徒が近くの駐車場でもめていた。
「せんせー。この間のやつって、一体誰のことですか?私、ぜーんぜんわからないです。というか、何があったんですか?」
先生に怒られている女の子はそう呑気に言って、先生から離れようとした。
しかし、
「待て!まだ、話は終わってないぞ!」
先生は、彼女の行動に対して腹を立てていた。
「待てって言われて。誰が待つんですか?」
彼女は後ろを振り向いて、にやりと笑った。
「お前だろ!この間、俺の車に傷をつけ、パンクさせたのは!」
先生の怒りはヒートアップしていき、こめかみの血管が浮き出ていた。
「知らないですよ。というか、高血圧にならないように、気を付けてくださいね、バナナで滑った先生♪」
そう、彼女こそが、僕をこの鬱屈な世界から解放させてくれたのだ。




