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CWAVE みちこの寄り道くまもと話(第一・三日曜)から生まれたストーリー

おつまみモンスター

作者:けい
最新エピソード掲載日:2026/02/12
**【あらすじ】**

深夜二時、東京の片隅にある古アパートの一室。三十路を超えたフリーライターの高村は、締め切りを明日に控えながらも、言葉が湧かず苦悩していた。かつての情熱は失われ、モニターの白い画面は虚無の象徴のように彼を圧迫する。逃げるように酒に手を伸ばした彼の前に、いつものように「相棒」が現れた。それはサッカーボールほどの大きさで、白い毛玉のような奇妙な存在。高村が幼い頃から、彼が酒を飲む時にだけ現れるこの謎の怪物は、言葉を発することなく、不思議な「物語」を映像として脳内に直接見せてくるのだった。その夜見せられたのは、超新星爆発で生まれた星の欠片が、幾億年の旅を経て地球の砂粒となる壮大な叙事詩。相棒がくれる「おつまみ話」は、乾いた高村の心に一滴の水をもたらすが、それでもスランプの闇は深かった。

季節が巡り秋、高村の元に祖母の訃報が届く。物語の面白さを教えてくれた最愛の人の死。悲しみを抱え帰郷した通夜の夜、高村の前には弱々しく色褪せた相棒の姿があった。まるでエネルギーが切れかけた電球のように、今にも消え入りそうな相棒。翌朝、線香の匂いから逃れるように散歩に出た高村は、思い出深い路傍のお地蔵様の前で、石仏にへばりつく相棒を見つける。

その瞬間、高村の脳裏に強烈なビジョンが流れ込む。それは若き日の祖母の記憶だった。戦時中、出征する恋人の無事を祈り続け、このお地蔵様の前で歌い、涙を流した祖母の秘められた恋心。相棒は、物質に宿る「残留思念」や消えゆく記憶を糧とする存在だったのだ。高村の側にいることで力を使い果たしていた相棒は、祖母の死によって解放されようとしていた最期の強い想い――誰にも語られなかった切実な祈り――を摂取し、同時に高村へと託そうとしていた。

すべての謎が解けた高村は、祖母の想いを受け取り、相棒に感謝を告げる。生気を取り戻した相棒は光となって消えた。東京に戻った高村の指は、もう止まらなかった。世界には、石ころや街路樹に宿る無数の「語られざる物語」が眠っている。相棒が見つけてくる「世界の欠片」を言葉で紡ぐことこそが、自分の使命だと悟ったのだ。部屋の隅で再び光を放つ相棒に杯を掲げ、高村は第二のライター人生を歩み始める。夜明け前の祝宴は、まだ始まったばかりだった。
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