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対決

「言いがかりはよしてくれよ。ラジアル社から離脱したのはそちらの意向だろう? ましてや私は技術部門とも関係がない」


 ステラーウォーカーの所属するラジアルHDは、宇宙ステーションやターミナルの建造に力を入れている銀河規模の企業だ。しかし、その技術部門だけは、企業と技術部の責任者の意見が対立し、大多数の人員が刷新されていた。


「そちらがなくてもこちらがあるのだ。第二世代の力を行使するのは、目に余る!」

「雰囲気が味方してると思ってる当たり屋みたいだね」


 ラジアルHDと袂を分かった技術部の責任者は、同じ派閥の技術者達を束ねて独立した。技術研究所という建前はそのままに、オフィスのあった地――プレイン-Ⅰの名前を借りて、テロ同然の行為を行う組織となっている。


「やかましい!」


 迷わずトラクーナに発砲され、ステラーウォーカーはセシアンともどもブリンクで遮蔽の裏に移動した。状況確認の為に転移先で頭を出してトラクーナの位置を確認するや否や、すぐに頭を引っ込める。真上を銃弾が通り過ぎた。トラクーナもまた、遮蔽を盾にステラーウォーカーらと向かい合う。


「危なっ! 会話の余地をだな……」

「ブリンクするやつに先手を取らせたら終わるんだよ。もっとも、この状況じゃ状況を把握するより先に頭をぶち抜けそうだがな」

「ここは穏便に――」

「転移できません。部屋の外に導力阻害装置が設置されている可能性が高いです」


 部屋の外にブリンクしてロックを掛けようと考えていたステラーウォーカーだったが、トラクーナと呼ばれた女性は対策を講じてきたらしい。


「対策済みって訳か。だけど、部屋の中まで妨害しなくて良かったのかい?」

「壊れやすいし貴重品なんだ。それに、逃げ道を塞げば私が倒すだけでいいんだからな」

「すごい自信だねー……」


 遮蔽越しに会話を続けつつ、ステラーウォーカーが自身の拳銃のセーフティーを外す。唐突な行動に違和感を感じたトラクーナが身を引くと同時に、ステラーウォーカーが真横に二発銃弾を発射する。すると、壁に到達する前に弾丸が転移し、さっきまでトラクーナのいた場所の横から出現した。


「会話の余地? 穏便に? ラジアル社の人間は言葉の使い方がなっていないと見える」

「そっちこそ行動に対する責任を取った方が良いんじゃないかい?」


 ステラーウォーカーの撃った弾丸は綺麗に重なって一発分の銃痕を残している。つまり、照準し直している訳ではなく、あらかじめ座標を指定して撃っているに過ぎない、とトラクーナは判断した。


「動いていれば早々当たることはないだろう! 都合の良いことにそっちには人質もいるしな!」

「ちょ、馬鹿! すごいことするな、お前!」


 遮蔽を越えまいと突っ込んでくるトラクーナではなく、再び何もない空間に銃弾を撃ち込むステラーウォーカー。今度は銃弾が壁に到達することなく、空中でループさせることで進入禁止エリアのようなものを構築している。


「これ、もしかして最強じゃないです?」

「そうだよー、もうすぐ勝っちゃうよー」

「いや、ステラーウォーカー。お前、一度に多数のワープ源は設置できないだろ」


 トラクーナの推測は当たっていた。このループ弾による侵入防止は強すぎる。無制限に使用できるなら、温存する理由もない。


「私の見立てでは、自分を対象としないループ弾に必要な二つそこらだと思うんだがな!」


 銃弾のループが途切れ、壁に着弾する。次の攻撃が来ると踏んだトラクーナは、後方に下がり神経を研ぎ澄ます。


「そこか!」

「ステラーウォーカーさん!」


 再びトラクーナに目がけて転移弾を狙ったステラーウォーカーだったが、その転移先を目視したトラクーナが正確無比な射撃を空間に撃ち込む。双方向の転移を行うゲートを伝って、遮蔽の奥でセシアンの悲鳴が聞こえた。


「嬢ちゃんには当たらなくて良かったよ」


 トラクーナが目視で確認すると、セシアンが止血しようとするも、ステラーウォーカーの胸元が赤く染まっているのが見える。


「とりあえず、このドローンは貰って……いや、返してもら――ぐっ!」

「とっとと銃を真下に捨てろ。従わなければ引き金を引く」


 ニジェネがトラクーナに急接近し一瞬ひるんだ隙に、瀕死に思えたステラーウォーカーが立ち上がり、トラクーナに銃を突きつける。


「……今のお前、ちょっと血の気が多過ぎるな」


 トラクーナは予想外の出来事に一拍置いて、観念したように武器を真下に落とす。


「主よ、雲の上から主翼に供物が!」

「はいはい、ありがとうニジェネ」


 落とされた武器は、床にぶつかる前にニジェネの頭上にワープさせられると、すかさずニジェネの中に収納された。


「ステラーウォーカーさんが生きてて良かったです……!」

「魔法だけでなくセシアンの気持ちにもゼロ射程で触れられて嬉しか――」

「流石にそれは気持ち悪いです」

「セシアンもだいぶ言うようになったね……さて」


 ステラーウォーカーはさっきまで泣きそうな表情を浮かべていたセシアンにむくれた顔で見つめられるが、気を取り直してトラクーナと目を合わせる。


「尋問させてもらおうか、Ⅰ技研の幹部殿?」

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