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テレポーター披露宴

「ご覧ください、ここが人類の創造した宙心地、記念すべき第一スペースターミナルです――」

「スペースターミナル――魔導師の技術と力も来るとこ来たなって感じだよねー」


 彼女が見てる画面には、巨大な天体とも言えるような人工物の中で中継を繋ぐリポーターが映っていた。


「この場所に最も近い宙心地から、魔導師の天才、ステラーウォーカーがワープして降り立つ予定です!」

「見てみて、魔導師の天才! これから自称していこうかな、ニジェネ?」

「十分にダサい通り名ですが、ご主人が付ける名前よりはいくらかマシな可能性があります」


 ムスッとした顔を前面モニターに表示させているのは、ニジェネと呼ばれた自律型ドローンだ。


「お前の名前に文句あるってこと? 第二世代爆発に対応したドローンでしょ? 第二世代……第二ジェネレーション、ニジェネ。ほら、完璧じゃん」

「もうすぐ出番ですよ」


 ターミナルを映す中継の脇で、ステラーウォーカーと呼ばれた女性と自律型ドローンのやり取りも映されていた。世紀のワープ装置の披露宴であるため、本当に瞬間移動が成功したのかを確認する意味もある。


「ステラーウォーカー。そちらのタイミングで始めてくれ」


 ニジェネのモニターにターミナル最高責任者という通知が表記され、初老の男性の声が再生される。


「了解した。ニジェネ、リハ通りよろしく」

「ターミナルへの導線を確認。座標適正。使用者の許可が必要です」

「あはっ、コンビニの年確画面みたいだね」


 ステラーウォーカーは、プログラムの実行許可の表示が映されたニジェネを突っつく。すると、瞬く間に一人と一機のいた場所は空白となった。




「――ターミナルへようこそ、ステラーウォーカーさん!」

「観光都市ばりの歓迎感謝するよ。あと、口うるさいかもしれないが、このドローンにも声を掛けてくれると助かる。超長距離転送を実現したのはこの子だし、無視されると機嫌が悪くなるんだ」

「ご主人様は冗談が上手いですね、HA-HA-HA」


 ステラーウォーカーが転送されたのは、巨大な宇宙ステーションの一角だった。四百人程は収容できそうな講堂は様々な界隈の関係者で賑わっており、横にいたリポーターの女性の声も、ふとすると拍手や歓声に掻き消えてしまいそうだった。


「ドローンちゃんも、この偉業の達成お疲れさまです!」

「その呼び方、悪くない……」

「え、人間さまとか赤ちゃんとか、そういう呼び方とが良かった感じ――」

「人が燃えている!」


 先程の歓声が悲鳴に変わり、焦げ臭い匂いが漂ってくる。喧騒の中心に目をやると、床が動いているように見えた。


「早く揉み消せ! 発生源はどこだ! ……熱い、この手口は……!」


 燃えた人が転がっているのだ。


「ステラーウォーカー、人為的に引かれた導線を検知しました。テロ活動の可能性があります」

「導線の始点を探せ。ブリンクして対象を破壊する」


 ニジェネは自身の下部からスコープを取り出し、ステラーウォーカーが装着する。青みがかったフィルターを通した視界には、白いモヤのような線がハイライトされており、その終点のいくつかは被害を受けた人の直ぐ側に存在している。


「灰色いスーツのお前! ドレスの女、その横の金色! そこから離れろ! 他のやつも近寄るんじゃない!」

「始点の特定と導線を設置、行けます」


 ステラーウォーカーとニジェネは講堂を出た先の廊下へ瞬間移動――ブリンクし、巨大なリュックのようなものを背負った風貌の男と相対した。


「この、クソアマ……」


 グローブを着けた手を振りかざしてくるが、すれ違うように躱したステラーウォーカーは、そのまま背部の物体に手をかざす。


「俺の導力デバイス!」


 かざした手のすぐ外側、リュックのような荷物から鈍い爆発音が聞こえる。


「そんな重い物を背負っ――」


 ステラーウォーカーがセリフを言い切る前に、ニジェネが次の標的――テロ組織の座標を特定したため、中断して即座にブリンクを行う。


「はい、二人目! どんどん行くよ!」


 到着とほぼ同時に、立ち会った男の装置を破壊するステラーウォーカー。遠隔的な能力の行使は人間だけでは不可能であるため、その一助をしているデバイスを破壊していく。


「――くっ、二人で待ち構えているだと!?」

「こっちもそう馬鹿じゃねえんだ、確実に殺りにいってやるよ!」

「降参かあ? その可愛い顔面に傷が付くことは諦めな!」


 今度のブリンク先では動きを予知したかのように二人組がステラーウォーカーに襲いかかる。ステラーウォーカーは、両腕を前に突き出すが当然相手の背負う物には届かない。あと一歩分の射程があれば。そんな想いがこの世界には積み重なっていた。


「腕の位置から相対的座標を算出。行けます」


 ニジェネの言葉に間髪入れず、ステラーウォーカーはニジェネが引いた導線でブリンクする。

 二人の男の背後を取り、伸ばした手はそのまま二つの機械に触れた。


「手間掛けさせやがって……終わりだ!」


 ボンッと鈍い音を発し、男らの装置の電源が消灯した。


「映像復旧! ご、ご覧ください! 先程の魔導師……ステラーウォーカーがテロ組織と思われる構成員たちを無力化しました!」

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