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   異能が集う世界

時代(とき)は平安。

これは()()を式神として()()()()所有してしまった陰陽師の青年との日常である。






◆◆◆

人間とは時に()()()()()生き物だと、私の主人はそう言う…


私は、あなた様の“式”でしかない。


“それ以上でも、それ以下でもない。”と、彼は言う。


人間の世界のことも全て忘れた(何も知らない)こんな私にとって、あなた様は世界のすべてであり、お慕いする方にございます。


和仁(かずひと)様」


その男の式神であり、小さな子供の姿をしているルキは…彼の式の中で呟いていた。






◆◆◆

都にある陰陽道の者が利用する屋敷。そこには陰陽術の才のある者か、生まれが妖魔か何かか、あるいは異才の化け者などが集う場所である。

その中でも、極めて普通な男が1人いた。このような場所で“普通”と言うには、世間一般的には語弊があるかもしれないが…この屋敷の中では至って普通の男であった。


「ルキ、手紙をいくつか届けてくれ」


空中に式を描きながら、己の式である()()を呼び出す。

式の中からずっと主人の様子を見ていたルキは、主人の描いた式の出口から勢いよく飛び出した。


「はい!おつかいですね、和仁様!」


それはもう“嬉しい”という()()だけでは足りないとびっきりの笑顔で、ルキは主人に抱き着いていた。

この世界の、この陰陽道(界隈)では()()()()()()()()()()ルキでさえも、そこまで異質にはならない。


「行ってきまーす!」


小さな手で手紙を受け取ると、ルキはふわりと浮いて出かけて行った。

これで少し休める…そう思っていた和仁は、すぐにその考えを改めることになる。

すぐ近くで、とても小さく“ピキピキ”と何かの割れるような音がしていた。


「また来たのか?お前みたいな奴はこの世界にひとりで十分だ」


「あれー?またバレたー」


ひび割れた空間。そこから顔を出したのは紛れもなく()()である。

この世界の“和仁の式神のルキ”よりも、持っている能力が遥かに格上の少し大人の姿をした…()()()()()だ。


「世界を跨いで来るんだ。それ相応の力が動いているのを俺が分からないはず無いだろう?」


「この世界の陰陽師はレベルが高い奴は高いからね〜」


廻間から完全にこの世界へと移動したルキは、畳の上に座る和仁の傍にふわりと移動して仮の地に座った。


「またお前は俺達の知らない言葉を使う」


「まだこの時代に無い言葉なだけだよ?未来ではこの喋り方は普通だよ?」


空中でくつろぐ廻間のルキに対して、和仁は畳の上に寝転んで大きなあくびをした。

目の前の陰陽師の仕事も妖の問題も…誰の目も気にせずにただ、たわいない話をするそんな平穏。



それは、この世界のルキがおつかいから戻って来るまでの…つかの間の時間。

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